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第五章
新章9:船旅編
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あまりに大きな揺れに身を固くする中、シナンは私の体を引き寄せると庇うように強く抱きしめる。
ガチャンッ、ガラランッ、ギャチャンッ、
机やテーブルが横倒しになり、ガラスだろうか……何かが割れる音が響く中、私はシナンの肩越しに窓の外へ目を向けてみるが……特に変わった様子はない。
一体何なの?
高波が来たのかと思ったけれど……。
天気は良好……こんな大きな波、たつはずないわ。
なら地震……?
いえ……陸地ではない水上ではたとえ大きな地震があってもこれほど揺れる事はないはず。
もし地震による津波が発生したのなら、揺れはこんなものじゃないはずよ。
それに津波なら今も波が大なり小なり発生していなければおかしい。
でもさっき海を見た限りでは……波は全く起きていなかったわ。
次第に揺れが治まる中、私はシナンからそっと体を離すと、辺りを探るように注意を向ける。
「お姉さん大丈夫ですか?」
「……えぇ、でも今の揺れは……」
狼狽する中ガヤガヤと声が扉の向こう側から聞こえ始めると、私はシナンの手を引いたままに、慌てて外へと飛び出した。
扉を開け外へ出ると、そこには乗務員だろう男が、必死に呼びかけを行っている。
「ご乗船のお客様、申し訳ございません。突然高波が発生致しました。ですが船に異常はございませんので、ご安心下さい。ですがまた波が発生する危険がございます。お客様はお部屋からお出にならないようお願い致します。船内へ残っているお客様も用心のためお部屋にお戻りください。繰り返します……」
「全く、なんなのよ~!」
「まぁいいじゃないか、安全ならそれで。俺たちも部屋へ戻ろう」
「ちょっとあなた、部屋がめちゃくちゃよ。どうしてくれるの」
「申し訳ございません、すぐに片づけさせますので……っっ」
船内が騒々しくなる中、呼び掛ける乗務員の男の顔には焦りの色がうかがえる。
その様子に私はじっと男を見つめ続けていると、ふと違和感を感じた。
何かしら……この……微量な……?
その違和感にそっと目を閉じて集中してみると、微かな魔力が肌に刺さる。
これは……一体どこから……?
探るように辺りへ意識を向けていくと、船底の方から微量な魔力が伝わってくる。
その事実に、ハッと顔を上げ、人ごみをかき分けながらにデッキへと出てみると、外は無風……波など全く起こってはいない。
不自然すぎる、やっぱりおかしいわ。
波もなく、突然にこんな立派なこの船が揺れるはずがない……。
もしかしなくても……魔法……それなら理解出来る。
「おねえさん……っっ、お姉さん待って下さい、どうしたんですか?」
シナンは人ごみをかき分けながらにデッキへとやってくると、私の腕を強く掴みギュッと握りしめる。
慌ただしくなる船内をグルリと見渡す中、下へ続く階段が目に留まると、私はシナンの手を振り払い走り出した。
「シナン、ごめんなさい。部屋で待っていて」
「えぇ!?ちょっと待って下さい、お姉さん!!!」
シナンの必死な声が騒がしい船内へ響く中、私は振り返らずに、通路と戻り階段へと走りぬく。
身を屈めながらに、人ごみの流れに反するように進んでいくと、カミールの姿が横目に映った。
しかし私は止まることもないままに、隙間をすり抜けながらに階段を下りて行くと、私を追ってきているだろう足音が耳に残った。
「おぃ、シナンどうしたんだ?」
「わかりません、ですがお姉さんの様子が……」
階段を勢いよく駆け下りていく中、次第に感じる魔力が強くなっていく。
間違いない。
今の揺れは魔法だわ。
一体だれが……何のために……?
それよりもどうして魔法が使えるのかしら……。
ここは結界が張られているはず……呪文は使えるようだけれど……。
でも呪文は一般的な人たちに作られた魔法。
こんな大がかりな魔法は使えないはずよ。
いくつもの階段を駆け下りながらに頭を悩ませていると、ようやく一階へたどり着く。
注意を払いながらに感じる魔力を追っていくと、従業員だろうスタッフが突然に私の前に佇んだ。
「お客様、お部屋にお戻りください。これより先にはお部屋はございません」
騎士だろうか……男二人が扉の前に立ちふさがると、その後ろには【関係者以外立ち位置禁止】との注意書きが書かれている。
魔力はこの奥から感じるわ。
「お願いします、緊急事態なんです、その扉を通らせて頂けませんか?」
「なりません、ここより先は船艇となります。お客様は立ち入ることは出来ません。どうかお戻りください」
何度もお願いしてみるが……、男は取り付く島もない。
説得できそうにないわね……。
チラッと男の姿を見上げてみると、ガタイもよく突き飛ばして通れるとは到底思えない。
魔法を使うことが出来れば可能なのだろうけれど……。
そう思い魔力を感じてみるも、やはりうまく一点へ集中させることが出来ないままだ。
魔力を感じると正直に話して通してもらう……?
うぅ……無理よね……。
魔法自体あまり知られていないのだから、きっと説明しても難しだろう。
だけど正面突破は無理……でもひるますことが出来れば……突破できるかしら……?
動こうとしない私の様子に、騎士は私の腕を捕らえようとすると、私はそれを慌てて避ける。
迫る騎士たちの様子に後退するようにジリジリと押し戻されていく中、ふとガタガタガタと階段の方から足音が響くと、私は音のする方へと振り返った。
ガチャンッ、ガラランッ、ギャチャンッ、
机やテーブルが横倒しになり、ガラスだろうか……何かが割れる音が響く中、私はシナンの肩越しに窓の外へ目を向けてみるが……特に変わった様子はない。
一体何なの?
高波が来たのかと思ったけれど……。
天気は良好……こんな大きな波、たつはずないわ。
なら地震……?
いえ……陸地ではない水上ではたとえ大きな地震があってもこれほど揺れる事はないはず。
もし地震による津波が発生したのなら、揺れはこんなものじゃないはずよ。
それに津波なら今も波が大なり小なり発生していなければおかしい。
でもさっき海を見た限りでは……波は全く起きていなかったわ。
次第に揺れが治まる中、私はシナンからそっと体を離すと、辺りを探るように注意を向ける。
「お姉さん大丈夫ですか?」
「……えぇ、でも今の揺れは……」
狼狽する中ガヤガヤと声が扉の向こう側から聞こえ始めると、私はシナンの手を引いたままに、慌てて外へと飛び出した。
扉を開け外へ出ると、そこには乗務員だろう男が、必死に呼びかけを行っている。
「ご乗船のお客様、申し訳ございません。突然高波が発生致しました。ですが船に異常はございませんので、ご安心下さい。ですがまた波が発生する危険がございます。お客様はお部屋からお出にならないようお願い致します。船内へ残っているお客様も用心のためお部屋にお戻りください。繰り返します……」
「全く、なんなのよ~!」
「まぁいいじゃないか、安全ならそれで。俺たちも部屋へ戻ろう」
「ちょっとあなた、部屋がめちゃくちゃよ。どうしてくれるの」
「申し訳ございません、すぐに片づけさせますので……っっ」
船内が騒々しくなる中、呼び掛ける乗務員の男の顔には焦りの色がうかがえる。
その様子に私はじっと男を見つめ続けていると、ふと違和感を感じた。
何かしら……この……微量な……?
その違和感にそっと目を閉じて集中してみると、微かな魔力が肌に刺さる。
これは……一体どこから……?
探るように辺りへ意識を向けていくと、船底の方から微量な魔力が伝わってくる。
その事実に、ハッと顔を上げ、人ごみをかき分けながらにデッキへと出てみると、外は無風……波など全く起こってはいない。
不自然すぎる、やっぱりおかしいわ。
波もなく、突然にこんな立派なこの船が揺れるはずがない……。
もしかしなくても……魔法……それなら理解出来る。
「おねえさん……っっ、お姉さん待って下さい、どうしたんですか?」
シナンは人ごみをかき分けながらにデッキへとやってくると、私の腕を強く掴みギュッと握りしめる。
慌ただしくなる船内をグルリと見渡す中、下へ続く階段が目に留まると、私はシナンの手を振り払い走り出した。
「シナン、ごめんなさい。部屋で待っていて」
「えぇ!?ちょっと待って下さい、お姉さん!!!」
シナンの必死な声が騒がしい船内へ響く中、私は振り返らずに、通路と戻り階段へと走りぬく。
身を屈めながらに、人ごみの流れに反するように進んでいくと、カミールの姿が横目に映った。
しかし私は止まることもないままに、隙間をすり抜けながらに階段を下りて行くと、私を追ってきているだろう足音が耳に残った。
「おぃ、シナンどうしたんだ?」
「わかりません、ですがお姉さんの様子が……」
階段を勢いよく駆け下りていく中、次第に感じる魔力が強くなっていく。
間違いない。
今の揺れは魔法だわ。
一体だれが……何のために……?
それよりもどうして魔法が使えるのかしら……。
ここは結界が張られているはず……呪文は使えるようだけれど……。
でも呪文は一般的な人たちに作られた魔法。
こんな大がかりな魔法は使えないはずよ。
いくつもの階段を駆け下りながらに頭を悩ませていると、ようやく一階へたどり着く。
注意を払いながらに感じる魔力を追っていくと、従業員だろうスタッフが突然に私の前に佇んだ。
「お客様、お部屋にお戻りください。これより先にはお部屋はございません」
騎士だろうか……男二人が扉の前に立ちふさがると、その後ろには【関係者以外立ち位置禁止】との注意書きが書かれている。
魔力はこの奥から感じるわ。
「お願いします、緊急事態なんです、その扉を通らせて頂けませんか?」
「なりません、ここより先は船艇となります。お客様は立ち入ることは出来ません。どうかお戻りください」
何度もお願いしてみるが……、男は取り付く島もない。
説得できそうにないわね……。
チラッと男の姿を見上げてみると、ガタイもよく突き飛ばして通れるとは到底思えない。
魔法を使うことが出来れば可能なのだろうけれど……。
そう思い魔力を感じてみるも、やはりうまく一点へ集中させることが出来ないままだ。
魔力を感じると正直に話して通してもらう……?
うぅ……無理よね……。
魔法自体あまり知られていないのだから、きっと説明しても難しだろう。
だけど正面突破は無理……でもひるますことが出来れば……突破できるかしら……?
動こうとしない私の様子に、騎士は私の腕を捕らえようとすると、私はそれを慌てて避ける。
迫る騎士たちの様子に後退するようにジリジリと押し戻されていく中、ふとガタガタガタと階段の方から足音が響くと、私は音のする方へと振り返った。
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