[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章9:捕らえられた先に

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光が全く届かない真の闇。
自分の存在さえも確認できないほどの深い闇。
ここは……時空の狭間、私は時空移転魔法に巻き込まれたみたいね。
そういえば先ほど見た映像、あれは何だったのかしら……。
黒の世界に残像のように浮かぶエレナの姿が浮かび上がると、私はじっと空を見つめていた。
そうだわ、教えてあげないと……彼が生きている事を……彼女がここにいるはずだから。
そう強く思うと、強い風がどこからか吹き、グラッと体が傾く。
そのまま風に流されていくと、意識がスッと消えていった。

闇の世界に囚われる中、ふと何だか頬がチクチクと痛む。
意識が朦朧とする中、ペシペシと音が耳にとどくと、頬が叩かれているのだと気が付いた。
私は振り払うように手を上げると、手首がガシッと捕まれる。
触れたその熱に、ゆっくりと瞼を持ち上げると、目の前にエレナの姿があった。

「おっ、気が付いたんか。お~い、大丈夫か?怪我とかはないみたいやな……。あんたこんなところで何してるんや?」

聞きなれた独特のイントネーションにガバッと体を起こすと、私は彼女の瞳を覗き込む。

「エレナ……エレナさん!ノエルが生きているのよ!」

頭に浮かんだ単語をそのまま口にすると、彼女は大きく目を見開き、徐に口を開いた。

「なんで……なんであんたがその名前を知ってるんや……。それにノエルが……なんやどうなってるんや」

独り言のようにぼそぼそ呟くと、開いた口がふさがっていない。
彼女の瞳に私の姿が映し出される中、動揺しているのだろう……目が微かに泳いでいた。

「ノエルがここにきているわ。早く会いに行ってあげて。彼はあなたに会うために……ッッ」

「何ゆうてるんや!ノエルは、ノエルは死んだんや!うちは世界の中を見れる。そこにもはっきりとあいつは死んだ、そう書かれてたんや。それに何百年前の事やとおもてんねん。わけわからんことゆうなや!」

彼女は私の言葉を遮るように叫ぶと、その瞳には怒りが浮かんでいた。
そのまま私の手を振り払うと、睨みながらに後退る。

「違うの、生きていたのよ!彼はあなたに会うために時空移転魔法を使ったの!あなたが生きていた時間に戻るために!あなたに会いに行くために!」

「はぁあ!?あいつにそんな魔法使えるはずないやろ。魔法の使いかたを教えてやったけど、あいつにはそんな高度な魔法は使われへん。ええ加減にせぇや!」

怒りに震える彼女の腕をグイッと引き寄せると、言い聞かせるように真っすぐに瞳を見つめる。

「私は嘘なんてついていないわ。彼もここにいるはずよ、あなたにならわかるんじゃないの?」

彼女は唇を小さく噛むと、意識を集中させるように瞳を閉じた。
闇の世界に星が瞬き始め、辺りを照らしていく中、魔力が彼女の元へと流れ込んでいく。
その様をじっと眺める中、ふと魔力の流れが止まると、彼女はゆっくりと目を開けた。

「居てへん……ここにおるんは、あんたとうちだけや」

「そんなはずないわ!だってこの魔法は彼が……」

そう彼が使った魔法、ならなぜ私はここにいるの?
彼の魔法に巻き込まれたそう思っていたけれど、よく考えてみれば、数百年も前の世界への時空移転魔法、二人を運べるほどの魔力はなかったはず。
ならもしかして……彼は時空移転に失敗して、私だけがここへ飛ばされたの?
彼がいない事実に狼狽する中、エレナの瞳が悲し気に揺れた。

「さっきから魔法、魔法ってゆうてるけどな、あんたが現れた時魔法の気配なんてせんかった。どこからか流れ着いたそんな感じや。でも……仮にあんたのゆうことがほんまやとしても、あいつがここへ来ることなんてできへんのや」

「どういうことなの?どうして……彼はあなたに会いたがっているのよ。それにあなただって!」

「それを説明するんには、うちがなんでここにいてるかを話さなあかんな……」

エレナは寂し気な笑みを浮かべると、私の隣へと腰かけた。
瞬く星へ手を伸ばすと、一つの星がぴかっと輝き彼女の掌へと落ちていく。
小さな光はまるで水滴のような破門を描き広がっていくと、そこに夢の中で見たエレナの姿が浮かび上がった。

闇に囚われていく彼女の姿。
金色の瞳が赤く染まり、血の涙が流れていく。
彼女の周りには膨大な魔力が集まる中、それはまるで台風の目のように大きな渦を描いていた。

「どうやってもあいつを殺すこの世界が悪いんや。ならそれを壊せば……」

大きな木が激しく揺れバキバキと音を立てて倒れていく。
それは触れたもの全てを破壊するような威力、渦がどんどん広がっていく中、黒い靄が彼女の足元を覆いつくしていた。
そして肥大した魔力が限界まで膨らんだその刹那、彼女の姿が突如その場から消えた。
風が止みシーンとした静けさが訪れる。
雨が上がり雲間から光が差し込むと、何事もなかったかのように静かに照らしていった。
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