[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章1:10日間

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※お読みになる前に。
前の話で、体を離れられるのは一週間としておりましたが、実際は10日間の誤りです。
申し訳ございませんm(__)m
それでは大変お待たせしました、新章をお楽しみ下さい。
************************

カギが導くままに暗闇の世界を真っすぐに進んで行く。
道しるべなんて何もない暗闇を、カギはグイグイと私を引っ張っていった。
意識だけの状態は何とも不思議な感覚で、触覚はないようだが、視覚はクリアに映し出される。
聴覚も機能し、風が過ぎ去っていく音が頭に響いた。

どれぐらい進んだのだろうか……代わり映えのない暗闇を茫然と眺める中、パチンッと何かを弾いた時のような音が響いた。
ハッと辺りを見渡してみると、カギから光粒が漏れ始める。
粒は線をなしあらゆる角度で飛び出したかと思うと、その光が一点へ集中していく。
その光の先へカギが進んだ刹那、視界が一気に開けた。
眩しさに思わず目が眩む中、先ほどまで感じていなかった触覚を感じ、冷たい風が吹き抜ける。
肌にチリチリとした痛みを感じるほどの冷風が全身を包みこむと、進む速度が加速した。

スピードに体がこわばる中、恐る恐るに目を開けると、ネオンのような光が点々と浮かび上がる。
後ろを振り返ってみると、どこまでも続くドーム状の黒い壁。
黒い壁が遠のく様に、急降下しているのだと気が付いた。
まるでスカイダイビングのように落下していく中、チカチカと光がはっきりと見えてくると、パラシュートを開いたようにフワッと速度が落ちる。
カギは胸にストンッと力なく落ちると、光が消えただの鍵になっていた。

ゆっくりと降下し、まじまじと辺りを見渡してみると、そこは大きな大都市。
高層ビルがいくつも建ち並び、地面を確認することはできない。
しかし建物と建物の間をバイクのような乗り物がスイスイと進み、人が住んでいるのだろうとはわかった。
交通整備はどうなっているのかわからないが、上下左右と蠅のように動き回っている。
彼女の言った通り、空などというものはない暗い天井、森林や山などもない。
けれども電気なのだろうか……人工的な光が街全体を照らしていた。
文明はあの世界はもちろん、私の生まれた世界よりも進んでいる。
ここが……エレナの生まれた世界。

ゆっくりと街へ近づいていく中、突然正面から羽の生えた鳥のような生き物がむかってきた。
慌てて逃げようとするが、向かってくるスピードの方が速い。
鳥の姿が大きくなり、ぶつかる、そう思い目を閉じるが……衝撃は伝わってこなかった。
不思議に思いながら目を開けてみると、鳥はすでの後方にいる。
あれ、今当たったと思ったんだけど……もしかして。

私は空中で向きを変えると、鳥の後ろを追いかける。
徐々に鳥との距離を縮め、そっと腕を伸ばしてみると、その手は空をきった。
やっぱり、触れられない、まぁでも当然ね、私は今精神だけの状態。
とういうことは……私の姿も見えないのかしら?
試しに鳥の正面へ回り込んでみると、鳥は速度を落とすことなく私の体を突き抜けた。

遠ざかっていく鳥の鳴き声が耳にとどく中、改めて自分の姿へ目を向けると、その場に立ち尽くす。
何かに触れることも出来ない、私の存在も認識できない、こんな状態で探せるのかしら。
そう一抹の不安がよぎる中、私は小さく息をつきながら、街の方へと意識を向けた。

街へ近づいて行くと、宙を飛ぶバイクの音、どこからか流れる宣伝のような音楽、そんな様々な生活音が耳にとどく。
そっとビルの一室へ近づき中を覗き込んでみると、着物のような服を着た赤髪の女性が、子供たちとテーブルを囲い楽しそうに話をしていた。
ここはマンションの一室なのかしら?
そんな事を考えながら隣の部屋も覗いてみると、白髪の男性がキッチンに立ち、料理をしている。
微かに美味しそうな匂いが鼻孔を擽り、空腹感を感じた。

私はそそくさとその場を離れると、またゆっくり下降していく。
住居スペースに用はないわ。
私がここへ来たのは、壁を壊す方法を探る為、そしてエレナの為にこの世界の知る事。
時間はあまりないわ、とりあえず図書館のような場所……あぁでも本を触れないわよね。
とりあえず行ってから考えましょう、今は一刻も早く、目的に近しいところへ行かなくちゃ。

キョロキョロと周辺を見渡しながら移動していると、ふと強い魔力を感じた。
その魔力に意識を向けた刹那、ガクンッと体が傾くと、吸い寄せられるようにどこかへと引っ張られる。
なっ、何!?
慌てて引き寄せられる方とは逆の方向へ力を入れてみるが、体は後ろへ後ろへと引き寄せられる。
突然のことに唖然とする中、私の意思に反するように、ビルをすり抜け、先ほど見た赤髪の女性の家の中を通り過ぎた。
ちょっ、何なの、どうなってるの!?
どうすることも出来ないその力に狼狽する中、どんどんスピードが速くなっていく。

辺りの景色が目で追えない程に加速すると、ふと視線の先に透明のビンが目に映った。
ビンの蓋はあけられ、こちらへ向けられている。
えぇっ、嘘でしょ、なっ、待って!?
反射的に手を伸ばすと、柔らかい何かが指先へ触れた。
私は慌ててそれにしがみつくと、なぜか引っ張る力がなくなり、私は慌ててその柔らかい何かに飛びついた。
何とか危機を脱出したことに安堵する中、おもむろに顔を上げると、そこには黒髪で黒い瞳をした可愛らしい青年が私をじっと見下ろしていた。
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