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第五章
新章2:10日間
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**********************年末の挨拶*****************************
今年も皆様に支えられてここまで書くことが出来ました。
300話を超える長編にお付き合い頂き、本当にありがとうございましたm(__)m
完結までまだかかるかと思いますが、来年度もお付き合い頂けるよう頑張ります。
それでは皆様、良いお年を!
*************************************************************
それでは本編をお楽しみ下さい。
・
・
・
青年はつまらなそうに息を吐き出すと、空のビンを持ち上げた。
「あれ~捕まえたと思ったんだけどなぁ」
やっぱりこの人、私を捕まえようとしていたの!?
ってそれよりもどうやって私の存在を認識したのかしら……?
先ほど街の中をウロウロしていたけれど、誰も気が付かなったわ。
それに鳥だって……
考え込むように口を閉ざし首を傾げていると、突然フワッと体が宙に浮いた。
「ひゃっ」
思わず小さな悲鳴が飛び出し、地面が離れていく様に、どうやら持ち上げられたようだ。
バタバタと足をばたつかせてみると、茶色足が視界に映る。
フワフワとした布素材で……そうまるでぬいぐるみのような……?
「まぁいいや。えーと、あんた誰?なんでここにいるの?どっからきたの?」
彼の問いかけに体を硬直させると、おもむろに視線を上げる。
目の前に映る大きな黒い瞳を覗き込むと、そこに映っていたのは紛れもなく、くまのぬいぐるみ。
えぇっ!?私……ぬいぐるみの中へ入ってしまったの!?
映る姿に唖然とする中、彼の瞳を凝視していると、ブンブンと体が大きく振り回される。
「きゃっ、ぃやっ、ちょっ、ちょっと……ッッ、やめなさい!」
グルングルンと視界が回り慌てて声を出すと、振り回す手がピタリと止まった。
「なんだぁ~やっぱり喋れるんじゃん。で、あんた何者なの?なんで魂だけでこんなところをウロウロしてたの?」
「へぇっ!?あーと、その……」
彼の問いかけに口ごもると、考え込んだ。
目的……何と答えようかしら?
正直に話しても大丈夫なのかしら?
いやでも、このまま喋らなければ、また振り回されてしまうだろう。
どうせ体は別の場所にある、何かあってもカギさえあれば何とかなるかしら。
「私は……その……ある魔法を探しに来たんです」
「ふ~ん、魔法か、どんな魔法なの?」
青年はキョトンと首を傾げると、私の顔を覗き込んだ。
「えーと、ある防御魔法を破壊する……いえいえ、解除する方法を知りたくて、そのためにここへきたの」
「へぇ~そんなことで体と魂を分けてわざわざきたの?ふふっ、なんだか面白そう、詳しく聞かせてよ。僕こう見えても魔法に詳しいんだ」
ニコニコと好意的な様子をみせる青年に、私は壁について詳しく話をしてみる。
壁の外観、物理攻撃も魔法攻撃が効かない事実。
そしてどこまでも続く高い壁、だから超えることが出来ない。
けれどこの魔法は防御魔法の一種なのだと説明した。
すると青年はニヤリと口角を上げると、おもむろに口を開いた。
「その魔法なら知ってるよ。もちろん壊す方法もね」
予想外の言葉に私は慌てて顔を上げると、食い気味で顔を寄せる。
「本当に!?教えてほしいわ!」
「その魔法はね、たぶん黒魔法の一種だよ。外からの攻撃はどんな物でも跳ね返す。けど内部からの攻撃はとっても弱くなっているんだ。だからその壁の内側から衝撃を与えれば簡単に崩れると思うよ。今はあまり使われていないから知らない人も多いかもね」
そう得意げに話す青年の顔を凝視する。
こんなに簡単にわかるなんて……それよりも……。
「内部から?どういう意味なの?外からの攻撃が跳ね返されるだから、内側へ入り込むなんて無理でしょう?」
そう問いかけてみると、青年はチチチッと口を鳴らしながら指を軽く振った。
「その疑問は最もだよね。だからこの黒魔法はずっと破られていなかった。だけどある魔法使いが見つけたんだ。あの黒魔法は一枚の薄っぺらい膜が2枚重なって出来ている。その膜の間に地下から侵入すれば簡単に壊せられる。だから今ではその魔法を使う人が少ないんだ」
地下から……とういう事は地面から魔法を……。
そんな発想はなかったわ!
こんなに早く目的が果たされるんて予想外。
あとはエレナの両親について調べてから、急ぎ帰って試してみましょう。
そう決意し、そっと胸にかかっているはずのカギを手に取ろうとするが、カギがどこにも見当たらない。
宙に浮いたままキョロキョロと辺りを見渡していると、突然視界にカギがぶら下がった。
「探しているのはこれかな?これってたぶんあんたの本体と魂を繋いでいるカギだよね?」
いつ私から奪ったのか、青年の手にはあのカギが握りしめられている。
「あっ、それッッ、ええそうよ、返して!」
フワフワとした手をカギへ伸ばしてみるが、青年はスッとカギを引くと、自分の懐へと片付けた。
「ダメだよ。これを渡しちゃうとあんた戻るつもりだろう。このカギは僕が預かっておく。あんたに一つお願いがあるんだ。そのお願いを叶えてくれたら返してあげるよ」
「お願い?ちょっと、何なの!?」
「ただで人から教えてもらおうなんて思っちゃだめよ。僕はちゃんとあんたの求める答えを与えてあげただろう。ならその分の対価を払ってもらわないと。見た感じ金はもってなさそうだし、だからちゃん体で返してね」
青年の言葉に声を失くし、大きく目を見開いでいると、彼はベッドの上へ私を下す。
ぬいぐるみの重心が良くわからず、バランスを崩すと、私はボテッと頭から倒れ込んだ。
今年も皆様に支えられてここまで書くことが出来ました。
300話を超える長編にお付き合い頂き、本当にありがとうございましたm(__)m
完結までまだかかるかと思いますが、来年度もお付き合い頂けるよう頑張ります。
それでは皆様、良いお年を!
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それでは本編をお楽しみ下さい。
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青年はつまらなそうに息を吐き出すと、空のビンを持ち上げた。
「あれ~捕まえたと思ったんだけどなぁ」
やっぱりこの人、私を捕まえようとしていたの!?
ってそれよりもどうやって私の存在を認識したのかしら……?
先ほど街の中をウロウロしていたけれど、誰も気が付かなったわ。
それに鳥だって……
考え込むように口を閉ざし首を傾げていると、突然フワッと体が宙に浮いた。
「ひゃっ」
思わず小さな悲鳴が飛び出し、地面が離れていく様に、どうやら持ち上げられたようだ。
バタバタと足をばたつかせてみると、茶色足が視界に映る。
フワフワとした布素材で……そうまるでぬいぐるみのような……?
「まぁいいや。えーと、あんた誰?なんでここにいるの?どっからきたの?」
彼の問いかけに体を硬直させると、おもむろに視線を上げる。
目の前に映る大きな黒い瞳を覗き込むと、そこに映っていたのは紛れもなく、くまのぬいぐるみ。
えぇっ!?私……ぬいぐるみの中へ入ってしまったの!?
映る姿に唖然とする中、彼の瞳を凝視していると、ブンブンと体が大きく振り回される。
「きゃっ、ぃやっ、ちょっ、ちょっと……ッッ、やめなさい!」
グルングルンと視界が回り慌てて声を出すと、振り回す手がピタリと止まった。
「なんだぁ~やっぱり喋れるんじゃん。で、あんた何者なの?なんで魂だけでこんなところをウロウロしてたの?」
「へぇっ!?あーと、その……」
彼の問いかけに口ごもると、考え込んだ。
目的……何と答えようかしら?
正直に話しても大丈夫なのかしら?
いやでも、このまま喋らなければ、また振り回されてしまうだろう。
どうせ体は別の場所にある、何かあってもカギさえあれば何とかなるかしら。
「私は……その……ある魔法を探しに来たんです」
「ふ~ん、魔法か、どんな魔法なの?」
青年はキョトンと首を傾げると、私の顔を覗き込んだ。
「えーと、ある防御魔法を破壊する……いえいえ、解除する方法を知りたくて、そのためにここへきたの」
「へぇ~そんなことで体と魂を分けてわざわざきたの?ふふっ、なんだか面白そう、詳しく聞かせてよ。僕こう見えても魔法に詳しいんだ」
ニコニコと好意的な様子をみせる青年に、私は壁について詳しく話をしてみる。
壁の外観、物理攻撃も魔法攻撃が効かない事実。
そしてどこまでも続く高い壁、だから超えることが出来ない。
けれどこの魔法は防御魔法の一種なのだと説明した。
すると青年はニヤリと口角を上げると、おもむろに口を開いた。
「その魔法なら知ってるよ。もちろん壊す方法もね」
予想外の言葉に私は慌てて顔を上げると、食い気味で顔を寄せる。
「本当に!?教えてほしいわ!」
「その魔法はね、たぶん黒魔法の一種だよ。外からの攻撃はどんな物でも跳ね返す。けど内部からの攻撃はとっても弱くなっているんだ。だからその壁の内側から衝撃を与えれば簡単に崩れると思うよ。今はあまり使われていないから知らない人も多いかもね」
そう得意げに話す青年の顔を凝視する。
こんなに簡単にわかるなんて……それよりも……。
「内部から?どういう意味なの?外からの攻撃が跳ね返されるだから、内側へ入り込むなんて無理でしょう?」
そう問いかけてみると、青年はチチチッと口を鳴らしながら指を軽く振った。
「その疑問は最もだよね。だからこの黒魔法はずっと破られていなかった。だけどある魔法使いが見つけたんだ。あの黒魔法は一枚の薄っぺらい膜が2枚重なって出来ている。その膜の間に地下から侵入すれば簡単に壊せられる。だから今ではその魔法を使う人が少ないんだ」
地下から……とういう事は地面から魔法を……。
そんな発想はなかったわ!
こんなに早く目的が果たされるんて予想外。
あとはエレナの両親について調べてから、急ぎ帰って試してみましょう。
そう決意し、そっと胸にかかっているはずのカギを手に取ろうとするが、カギがどこにも見当たらない。
宙に浮いたままキョロキョロと辺りを見渡していると、突然視界にカギがぶら下がった。
「探しているのはこれかな?これってたぶんあんたの本体と魂を繋いでいるカギだよね?」
いつ私から奪ったのか、青年の手にはあのカギが握りしめられている。
「あっ、それッッ、ええそうよ、返して!」
フワフワとした手をカギへ伸ばしてみるが、青年はスッとカギを引くと、自分の懐へと片付けた。
「ダメだよ。これを渡しちゃうとあんた戻るつもりだろう。このカギは僕が預かっておく。あんたに一つお願いがあるんだ。そのお願いを叶えてくれたら返してあげるよ」
「お願い?ちょっと、何なの!?」
「ただで人から教えてもらおうなんて思っちゃだめよ。僕はちゃんとあんたの求める答えを与えてあげただろう。ならその分の対価を払ってもらわないと。見た感じ金はもってなさそうだし、だからちゃん体で返してね」
青年の言葉に声を失くし、大きく目を見開いでいると、彼はベッドの上へ私を下す。
ぬいぐるみの重心が良くわからず、バランスを崩すと、私はボテッと頭から倒れ込んだ。
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