[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

文字の大きさ
330 / 358
第五章

新章2:10日間

しおりを挟む
**********************年末の挨拶*****************************
今年も皆様に支えられてここまで書くことが出来ました。
300話を超える長編にお付き合い頂き、本当にありがとうございましたm(__)m
完結までまだかかるかと思いますが、来年度もお付き合い頂けるよう頑張ります。

それでは皆様、良いお年を!
*************************************************************
それでは本編をお楽しみ下さい。




青年はつまらなそうに息を吐き出すと、空のビンを持ち上げた。

「あれ~捕まえたと思ったんだけどなぁ」

やっぱりこの人、私を捕まえようとしていたの!?
ってそれよりもどうやって私の存在を認識したのかしら……?
先ほど街の中をウロウロしていたけれど、誰も気が付かなったわ。
それに鳥だって……

考え込むように口を閉ざし首を傾げていると、突然フワッと体が宙に浮いた。

「ひゃっ」

思わず小さな悲鳴が飛び出し、地面が離れていく様に、どうやら持ち上げられたようだ。
バタバタと足をばたつかせてみると、茶色足が視界に映る。
フワフワとした布素材で……そうまるでぬいぐるみのような……?

「まぁいいや。えーと、あんた誰?なんでここにいるの?どっからきたの?」

彼の問いかけに体を硬直させると、おもむろに視線を上げる。
目の前に映る大きな黒い瞳を覗き込むと、そこに映っていたのは紛れもなく、くまのぬいぐるみ。
えぇっ!?私……ぬいぐるみの中へ入ってしまったの!?
映る姿に唖然とする中、彼の瞳を凝視していると、ブンブンと体が大きく振り回される。

「きゃっ、ぃやっ、ちょっ、ちょっと……ッッ、やめなさい!」

グルングルンと視界が回り慌てて声を出すと、振り回す手がピタリと止まった。

「なんだぁ~やっぱり喋れるんじゃん。で、あんた何者なの?なんで魂だけでこんなところをウロウロしてたの?」

「へぇっ!?あーと、その……」

彼の問いかけに口ごもると、考え込んだ。
目的……何と答えようかしら?
正直に話しても大丈夫なのかしら?
いやでも、このまま喋らなければ、また振り回されてしまうだろう。
どうせ体は別の場所にある、何かあってもカギさえあれば何とかなるかしら。

「私は……その……ある魔法を探しに来たんです」

「ふ~ん、魔法か、どんな魔法なの?」

青年はキョトンと首を傾げると、私の顔を覗き込んだ。

「えーと、ある防御魔法を破壊する……いえいえ、解除する方法を知りたくて、そのためにここへきたの」

「へぇ~そんなことで体と魂を分けてわざわざきたの?ふふっ、なんだか面白そう、詳しく聞かせてよ。僕こう見えても魔法に詳しいんだ」

ニコニコと好意的な様子をみせる青年に、私は壁について詳しく話をしてみる。
壁の外観、物理攻撃も魔法攻撃が効かない事実。
そしてどこまでも続く高い壁、だから超えることが出来ない。
けれどこの魔法は防御魔法の一種なのだと説明した。
すると青年はニヤリと口角を上げると、おもむろに口を開いた。

「その魔法なら知ってるよ。もちろん壊す方法もね」

予想外の言葉に私は慌てて顔を上げると、食い気味で顔を寄せる。

「本当に!?教えてほしいわ!」

「その魔法はね、たぶん黒魔法の一種だよ。外からの攻撃はどんな物でも跳ね返す。けど内部からの攻撃はとっても弱くなっているんだ。だからその壁の内側から衝撃を与えれば簡単に崩れると思うよ。今はあまり使われていないから知らない人も多いかもね」

そう得意げに話す青年の顔を凝視する。
こんなに簡単にわかるなんて……それよりも……。

「内部から?どういう意味なの?外からの攻撃が跳ね返されるだから、内側へ入り込むなんて無理でしょう?」

そう問いかけてみると、青年はチチチッと口を鳴らしながら指を軽く振った。

「その疑問は最もだよね。だからこの黒魔法はずっと破られていなかった。だけどある魔法使いが見つけたんだ。あの黒魔法は一枚の薄っぺらい膜が2枚重なって出来ている。その膜の間に地下から侵入すれば簡単に壊せられる。だから今ではその魔法を使う人が少ないんだ」

地下から……とういう事は地面から魔法を……。
そんな発想はなかったわ!
こんなに早く目的が果たされるんて予想外。
あとはエレナの両親について調べてから、急ぎ帰って試してみましょう。

そう決意し、そっと胸にかかっているはずのカギを手に取ろうとするが、カギがどこにも見当たらない。
宙に浮いたままキョロキョロと辺りを見渡していると、突然視界にカギがぶら下がった。

「探しているのはこれかな?これってたぶんあんたの本体と魂を繋いでいるカギだよね?」

いつ私から奪ったのか、青年の手にはあのカギが握りしめられている。

「あっ、それッッ、ええそうよ、返して!」

フワフワとした手をカギへ伸ばしてみるが、青年はスッとカギを引くと、自分の懐へと片付けた。

「ダメだよ。これを渡しちゃうとあんた戻るつもりだろう。このカギは僕が預かっておく。あんたに一つお願いがあるんだ。そのお願いを叶えてくれたら返してあげるよ」

「お願い?ちょっと、何なの!?」

「ただで人から教えてもらおうなんて思っちゃだめよ。僕はちゃんとあんたの求める答えを与えてあげただろう。ならその分の対価を払ってもらわないと。見た感じ金はもってなさそうだし、だからちゃん体で返してね」

青年の言葉に声を失くし、大きく目を見開いでいると、彼はベッドの上へ私を下す。
ぬいぐるみの重心が良くわからず、バランスを崩すと、私はボテッと頭から倒れ込んだ。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...