[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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最終章

1:北の国

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久しぶりに戻ってきた北の国は、私が知る景色とは違っていた。
街には老若男女問わず人が溢れ活気に満ちている。
最初この街へ来た時、空は暗雲で街全体が暗い雰囲気だった、
こうして自分の眼で見ると、無事に過去を変えられたのだと改めて実感したのだった。

シナンは私と一緒に北の国へ。
カミールもついて来ようとしていたけれど、女王様の命令で西の国へ残ることになった。
自由奔放な彼でも女王には逆らえないようだ。

エヴァンが言った通り、過去を変えたことで、それぞれの歩んできた人生も変わっていた。
セーフィロがこの国を治め、アーサーは兄を助けるために外交官になっていた。
歪だった二人の関係は良好なものになっていて、私の知る二人とは大違い。
時空の狭間からスマホで見た景色と全く同じだった。

ブレイクは腹違い弟たちを騎士学園へ招き、稽古に明け暮れている。
以前見た暗い瞳ではなく、生き生きとした姿に嬉しくなった。
レックスは夢で出会った通り婚約者と別れ、医師として頑張っているようだ。
あの時の事を彼は覚えていない事実に、内心ほっとしていた。

ネイトは変わらず聖獣として森を守り続けている。
私がお城へ戻ったのを知ると、駆けてつけてくれた。
二人が再会して、また険悪な雰囲気になるかと思いきや、シナンはネイトに弟子にしてくれと突拍子もない申し出をした。
ビックリして口を半開きのままに固まっていると、シナンはニッコリ笑って私を守るために強くなりたいとそう言った。
もう危険はきっとない、そんな必要はない、自分のために生きてほしいと言ってみたが、シナンはこれが僕のやりたいことだとネイトと森へ残る子になった。

そして……唯一私と同じ記憶のあるエヴァンは、父のと二人で暮らし男娼には売られなかった。
それでも記憶があるからなのか、女性嫌いはそのままのようだった。

北の国へ戻った私は、今まで通りお城で暮らすことになった。
魔法を使えない私が城に居て迷惑ではないのかと問いかけると、気にしなくていいとアーサーが言ってくれた。
その言葉に甘えて私は以前暮らしてた部屋に居た。
魔法を使えない私に魔石を使うことは出来ない。
以前のようにエヴァンが私の傍についてくれるのかと思っていたけれど、今は私がこの世界へ来た頃にいなかった侍女が全て身の回りの世話をしてくれる。

エレナは無事に戻ってきたのか。
魔法がない私には確かめるすべはない。
そうだわ、落ち着いたら魔女へ会いに行こう。

壁を壊し再会したあの日から、エヴァンの様子がずっとおかしい。
私をあからさまに避けている。
今まで何度も彼を怒らせたり呆れさせたりしてきたけれど、こんなに避けられるのは初めてだった。
何とか話しかけようとするのだが、私と目が合うと逃げるように立ち去ってしまうのだった。

今日こそはとエヴァンを探していると、微かに彼の声が耳に届いた。
立ち止まり声のする方へ近づいていくと、回廊に佇む彼の姿。
隣には可憐なご令嬢の姿。
エヴァンの腕を取りまるで恋人のようだ。

「おっ、何見てんだ?」

肩を叩かれ驚き振り返ると、そこにはレックスの姿。
私は咄嗟に彼の手を引っ張ると隠れるように促す。
彼は首を傾げながらしゃがみ込むと、私の視線のを追いかけた。

「あれはエヴァンとステラ嬢じゃねぇか」

「ステラ嬢?」

「あぁ、エヴァンの婚約者候補だ。女嫌いのエヴァンがステラ嬢を夜中に部屋へ招いたともっぱらの噂だぜ」

なっ、部屋に招いた……夜に?
エヴァンに寄り添うステラの姿を見ると、花のように笑う可愛らしい令嬢で並ぶととても絵になる。
その姿に何とも言えぬ感情が込み上げ、思わず目を逸らせ立ち上がった。

「おいっ、どうしたんだ?」

レックスの言葉に答えず私はエヴァンたちとは逆の方向へ進んでいくが、もやもやは一向に消えない。

何よ、自分だって私が居ない間、女に現を抜かしていたんじゃない。
それに部屋へ招くなんて……結婚前にそんなことしていいの?
私の時はすごく怒っていたのに……。

「やぁ、どうしたの?眉間に皺を寄せて、ご機嫌斜めなのかな?」

声にハッと我に返ると、タクミが目の前に居た。
私は慌てて眉間に手をやると、縦に三つの線が入っている。

「いえ、これは、怒ってなんて……ッッ」

「そっか、それならいんだ。ところで少し時間をもらえないかな。魔法の研究を手伝ってほしんだ」

「魔法ですか?私はもう魔法は使えませんよ?」

「もちろん知っているさ。魔力を持たない者はこの世界で君だけ、だからいろいろと調べておきたいんだ。この先怪我をしたり病気になったりして魔法で治せないと大変だろう」

私はコクリと頷くと、タクミの隣へ並んだ。
何だか不思議な感じ。
突然居なくなった彼がここにいる。
ここへ戻ってきて数日立つけれど、まだ慣れない。
私の世界ではなく彼の世界で、こうして並んで歩ける日が来るなんて。
でも彼は私を知らないんだけどね。

それでも彼を思う気持ちは変わらない。
だけどなんだろう、胸に靄がかかったようなそんな感じ。
誰よりも大切な存在だったはずなのに……。
そっと胸に手を当てると、先ほどのエヴァンとステラの姿が現れる。
なんでこんなに気になるのかしら……。
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感想 33

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みんなの感想(33件)

バンナ
2025.03.02 バンナ

はじめまして。
大好きな作品で、何度か読み返してます。
もう更新はされないのでしょうか?
是非とも続きが読みたいです!
よろしくお願いします!

解除
びたみん
2023.07.05 びたみん

読み始めて一気に最終話まで読んでしまいました。続きが気になるので更新楽しみにしています!!

2023.10.23 あみにあ

ぴたみん 様

コメントありがとうございます。
お返事が遅くなってしまい、申し訳ございません(-_-;)

300話越えの長編をご愛読いただきとてもうれしいです(*^_^*)
なかなか忙しく続きを投稿できておりませんが、
ラストまでの構想はしっかり出来上がっておりますので、
なるはやで執筆できるよう頑張ります。

こうしてコメントを頂けてとても嬉しく思います。
最後までどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

解除
くまうさ
2022.10.27 くまうさ

はじめまして(*´∀`)
続きが気になってしょうがないのですが、もう更新はされないのでしょうか?
是非とも続きが読みたいです(。>д<)

2023.06.15 あみにあ

くまうさ 様

初めまして!
この度はご愛読いただきありがとうございます。
返事がとても遅くなってしまいすみません(-_-;)
続きが気になると言って頂けてとても嬉しいです(*'ω'*)

色々な事が重なり、なかなか更新出来ませんでした(__)
構成は出来上がっているので、なるべく早く更新できるよう頑張ります(´;ω;`)
期間があいてしまいましたが、最後までお付き合い頂けるよう全力で頑張ります_(._.)_

解除

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