[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第一章

絶望の淵に

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ふと目覚めると、そこは私の暮らしていた部屋ではなかった。
いつもこうやって気を失った後は……必ず戻れていたのに……。
目の前に映る光景に私は静かに涙があふれ出す中、徐に体を起こす。
ふと自分自身に目を向けると、真っ白なドレスを着せられていた。

涙で視界が滲む中、徐に辺りを見渡すと、ヨーロッパ風のアンティークが並ぶ、豪華な部屋に一度流れ出した涙は止まらない。
もう本当に帰れないの……?
私はもうタクミに会う事が出来ないの……?

受け入れらない現実に絶望している中、薄暗い部屋の中に小さな光が差し込んだ。
光の先へ徐に顔を向けると、そこにはあの魔導師の男が、私に手を差し出し佇んでいた。

「異世界の姫、一緒に来ていただけませんか?」

私は何も答えず、魔導師の男を睨みつけると、流れる涙を何度も拭った。
彼はそんな私に小さく微笑みを浮かべると、私の元へと近づいてきた。
距離を詰めてくる彼から、必死に後ずさっていると、次第にベッドの隅に追いやられていく。
逃げ道がなくなると……私は脚を抱え、身を守るように小さく体を丸めた。

ふと彼の髪が私の脚にかかると、私の体は自然と強張った。
嫌……また襲われるの……?
そう思うと恐怖で体が震えだすのを感じ、私は必死に抑え込んだ。
すると彼はジャラッと金属音を鳴らしたかと思うと、私に触れる事なく、目の前に何かを掲げて見せる。

私は恐る恐る目線を上げると、そこには見覚えのあるシルバーリングに目が釘付けになった。
ハッと自分の薬指へ目を向けると、同じシルバーリングがキラリと輝いている。
信じられない思いで、私は徐にシルバーリングに手を伸ばすと、見覚えのあるシンプルなリングに、私は大きく目を見開き固まった。
うそ……これ……、どうして彼が持っているの……?

私は震える手でリングに触れると、リングの裏に書かれている、この世界で一度も口にしたことのない、自分の名前を確かめた。

「これは……どうして……あなたがこれを……?」

「答えを知りたければ、私についてきなさい」

彼はスッと目を細めると、私に背を向け歩き始める。
私は急いで彼の背中を追いかけると、彼は王宮の廊下を進み、広いエントランスを抜けていった。
そのまま道沿いに歩いていくと、ただっぴろい草原へとたどり着く。
彼はそのまま迷うことなく進む中、広場にポツンと置かれていた、一つの大きな石の前まで歩いていくと、静かに頭を下げた。

「ここは私の師が眠る場所です……そしてその指輪を、私に預けた人物でもあります」

あまりの衝撃に私は石へ駆け寄ると、そこには【偉大なる魔導師 ターキィーミ ここに眠る】と刻まれていた。
私は勢いよく振り返ると、彼のエメラルドの瞳がスッと細められた。

「こちらの文字も読めるようにしておきました。さぁ……何から話しましょうか……」

そう呟いた彼は私の隣へしゃがみ込むと、寂しげな瞳で墓石を眺めながら、徐に口を開いた。


私は平民に生まれ、私の母親には、5人の夫がいました。
その中で3番目に生まれたのが、私だったんです。
皆仲良く暮らしていたある日、母は病気で亡くなりました。
そうして母が居なくなるや否や、私の父は私を男娼館へと売ったんです。
私は自分で言うのも何ですが……今見て頂いてもわかるように、見目だけは優れていましたからね……。
この世界……子供と一緒じゃ……次の結婚相手なんて見つからないですから。

あの頃の私は魔法なんて物を全然知らなくて、毎日貴族の女相手に体を売ってました。
時には男に指名され、アナルを犯されることもありましたよ。
男娼館で見目が良かった私はすぐに店の看板になると、毎日……毎日女の喘ぎ声に魘された。

見世物にされ……縛られることもありました。
そうして女を喜ばせる事を学び、女に媚びることを覚えた。
時には男を相手にさせられ、詰られ、侮辱され、心が壊れるほど犯される。
そんな地獄の生活が5年ほど続きました。

そんなある日、お店に師匠が来たんです。
師匠は私を指名し、すぐに私を買い取ろうとしました。
私は店で人気がありましたからね、かなり高額な料金を吹っ掛けられたようですが……師匠は平然とその金額を支払い、私を買い取りました。

そうして私は男娼から、師匠の所有物になりました。
最初は師匠も私の体目当てで買ったんだと思っていたんです。
慣れてきたとは言え、アナルを犯されるのは好きではなかった。
それでも私をあの地獄の場所から救ってくれたことに……私は媚びるように師匠に笑みを浮かべました。

そんな師匠は私を自分の家に連れて帰ると、シャワーを浴びさせ、新しい服を用意してくれました。
美味しいご飯も食べさせてくれて……優しい言葉もかけてくれた。
だからその夜、私は自分から師匠の部屋へと行きました。
ここまでよくしてくれているんだ、体で返さないと……と思いましてね。

あの時の記憶は、今でも鮮明に思い出せる。

あの日……満月が真上に浮かぶ深夜に、私は師匠の部屋のドアを叩きました。

ドンドンドン

静かに扉が開くと、師匠は澄んだターコイズの瞳を見開き驚いていました。

「……うん、どうしたんだ?一人じゃ眠れないのか?」

「いえ……色々良くしてもらって、私を使って頂こうと思いまして……」

ボソボソと私がそう話すと、師匠は肩を揺らして笑い始めました。

「ははっ、まだ言ってなかったな。俺は君をそういった意味で買ったんじゃない。落ち着いてから話そうと思っていたが……」

師匠は私を部屋に招き入れると、椅子へと座らせてくれました。
窓から眩い月明かりが差し込む中、師匠はどこからかグラスを持ってくると、私の前に差し出した。
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