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第二章
閑話:彼女と過ごす日々3:前編(レックス視点)
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彼女を部屋へ呼んで、治癒魔法について話す中、突然の来客に俺は彼女を置いて部屋を出ると、扉の前には部下が佇んでいた。
部下は俺に研究室に来て欲しいと話す中、俺はそっと振り返った
彼女を置いていくのは不安だが……。
医務室には厳重な魔法をかけてある……すぐ戻れば大丈夫だろう。
俺はわかったと部下へ伝えると、彼女を部屋へ残し、研究所へと向かった。
研究室へ入ると、そこには新しい薬品が出来上がっていた。
容器に魔力を流し性能を確認すると、この間捕らえた、妖魔の霧を見本とした人を麻痺させる薬が出来上がっている事がわかる。
この薬を飲ませれば、飲ませた相手の体の自由、痛みを奪う事が出来る。
即ち魔力の流れも感じることが出来なくなり、相手の魔法を封じ込むことが出来る優れ物だ。
騎士たちに様々な場面で役に立つだろうこの薬だが、俺とエヴァンは別の観点からこの薬を使うつもりだった。
これを使えば……もしかしたら彼女の呪いの正体を掴めるかもしれない。
彼女の感覚を麻痺させ、喉にある呪符を取り出す。
その呪符を元に、呪った相手を特定し……殺す。
呪いを取り出すにはひどい痛みが伴うだろう……、それを抑える為にこの麻痺薬は欠かせない。
彼女の呪いは、今まで前例のないほどの強力な呪符だった。
通常ならば、エヴァンような魔力が強い魔導士が、呪符へ魔力を流すと、術を掛けた相手が浮かび上がるものだが……彼女に刻まれた呪符は、エヴァンでも読み取ることが出来ず、解く手がかりさえ見つかっていない。
でもこれで……彼女の名前を取り戻せるかもしれない。
新たに完成した薬をすぐにアーサー王子へと報告すると、俺は急いで彼女の部屋へと戻った。
しかし部屋の扉を開けようとするも、なぜか扉が開かない。
カギはかかっていないようだが……良く調べてみると強力な魔法で扉が包み込まれていた。
まさか……!
思い当たるのは棚に置きっぱなしにしていたあの妖魔の瓶……。
何かの拍子で出てしまったのか……。
慌てて外へ出て、庭に回り込み部屋の窓へ向かうと、そこにも同じように魔力で包まれていた。
次第に魔力は強まり、開けることが困難になっていく……。
壁となっている魔力を薙ぎ払おうと、自分の魔力をぶつけてみるが……弾き飛ばされどうすることも出来ない。
俺は慌てて伝書蝶を呼び出すと、エヴァンへと飛ばした。
エヴァンはすぐに駆けつけてくると、扉の魔力は先ほどより数段強固なものになっていた。
中からは物音一つ聞こえないが……きっと彼女から魔力を吸い取っているのだろう……。
だが……あいつは弱い。
俺からすれば強いが……エヴァンや彼女の魔力量を見る限り、妖魔ごときにやられるはずがない。
それに彼女は魔法を使えるはずだが……どうして抵抗しなかったんだ?
そんな疑問が浮かぶ中、エヴァンに視線を向けると、彼は眉間に皺をよせ、目をスッと細めていた。
「これはかなり厄介ですね……」
「中で彼女が妖魔に魔力を吸い取られているはずだ……。あいつの魔力量は彼女に比べると少ない。魔力が吸い取られても、枯渇することはないと思うが……」
その言葉にエヴァンは大きく目を見開くと、エメラルドの瞳が怒りに燃える。
「一体全体……どうしてこんなことになっているのですか?」
俺は怒りを含むエヴァンから思わず視線を逸らせると、ボソボソと話した。
「いや……あいつを封印していた瓶を置きっぱなしで、彼女を部屋に残した。たぶん何かの拍子でその瓶が空いたのかもしれない……。だがあいつはそんなに強くないだろう。エヴァンがしっかりと彼女に魔法を教えているのであれば、こうはならないはずなんだがな」
そうエヴァンを睨みつけると、彼は小さく顔を歪め、口を閉ざし俺から目を反らせた。
「お前どうして……彼女の魔法を教えるのをやめたんだ?」
「はぁ!やめてなどいません!!!只……彼女が……」
エヴァンは不自然に言葉を濁すと、流れる魔力が乱れていく。
「彼女が何だ?彼女は気にしていたぜ。……お前が来なくなって、もう自分には魔法を教えてもらえないんじゃないかってな」
「あぁ~~~もう煩いですよ!!今は魔力を込めているんです、邪魔をしないでください!」
エヴァンは扉にそっと手を伸ばすと、彼の壮大な魔力が手に集まっていく。
そんな姿を横目に、俺は大きく息を吐くと、じっとエヴァンを見据えていた。
するとエヴァンは不貞腐れた様子で小さく唇を噛むと、口を開いた。
「レックスも……彼女から黒蝶を受け取ったんですか……?」
エヴァンの手に魔力が集まる中、俺は彼の言葉に目を見張ると、長年連れ添った中……ある思いが浮かんだ。
「エヴァン、まさか……彼女が自分より先に俺や、ブレイクに蝶を送って嫉妬しているのか?……会いに行かなければ、自分に蝶を送ってくれるんじゃないか。そんな浅はかな考えで、会いに行かなかったって事はないよな?」
「そっ、そんな事あるはずがないでしょう!!!私は彼女の事を好きでも何でもない!彼女が誰に蝶を送ろうが……私には関係ない事です!」
エヴァンは顔を真っ赤にそう叫ぶと、扉から大きな爆発音が響く。
感情を露わにしたエヴァンに驚く中、扉の先に現れたのは……あられもない彼女が、触手に宙づりにされている姿だった。
予想だにしていなった状況に狼狽する中、エヴァンは勢いよく中へ入ると、妖魔の苦手な鳥を召喚する。
鳥は妖魔に一直線へ向かうと、堅い嘴でツンツンと妖魔をつつき始めた。
エヴァンは怯んだ妖魔を、魔法で作った糸でグルグル巻きにする中、俺は落ちていく彼女を慌てて魔力で包み込むと、横たわる彼女へ視線を向ける。
まさか……いや、妖魔はこんなことせずとも、女から魔力を奪えたはずだ。
お得意の触手で吸い取ればいい……なのにどうして……?
それに魔物が人間の女を襲うなんて聞いたことがない……。
彼女の滑らかな肌に視線を向けると……手首足首に触手に縛られ赤く痣が浮かび、股の間に蜜が流れ落ちていた。
何度もいかされたのだろうと分かる、彼女の甘い蜜の匂いが部屋を充満している。
そんな彼女の香りに下半身が疼くと、俺は静かに首を横に振った。
はぁ……俺は何を考えてるんだ……。
そんな俺に気が付くことなく、彼女は小さく体を痙攣させながら、荒い息を繰り返しグッタリとしていた。
部下は俺に研究室に来て欲しいと話す中、俺はそっと振り返った
彼女を置いていくのは不安だが……。
医務室には厳重な魔法をかけてある……すぐ戻れば大丈夫だろう。
俺はわかったと部下へ伝えると、彼女を部屋へ残し、研究所へと向かった。
研究室へ入ると、そこには新しい薬品が出来上がっていた。
容器に魔力を流し性能を確認すると、この間捕らえた、妖魔の霧を見本とした人を麻痺させる薬が出来上がっている事がわかる。
この薬を飲ませれば、飲ませた相手の体の自由、痛みを奪う事が出来る。
即ち魔力の流れも感じることが出来なくなり、相手の魔法を封じ込むことが出来る優れ物だ。
騎士たちに様々な場面で役に立つだろうこの薬だが、俺とエヴァンは別の観点からこの薬を使うつもりだった。
これを使えば……もしかしたら彼女の呪いの正体を掴めるかもしれない。
彼女の感覚を麻痺させ、喉にある呪符を取り出す。
その呪符を元に、呪った相手を特定し……殺す。
呪いを取り出すにはひどい痛みが伴うだろう……、それを抑える為にこの麻痺薬は欠かせない。
彼女の呪いは、今まで前例のないほどの強力な呪符だった。
通常ならば、エヴァンような魔力が強い魔導士が、呪符へ魔力を流すと、術を掛けた相手が浮かび上がるものだが……彼女に刻まれた呪符は、エヴァンでも読み取ることが出来ず、解く手がかりさえ見つかっていない。
でもこれで……彼女の名前を取り戻せるかもしれない。
新たに完成した薬をすぐにアーサー王子へと報告すると、俺は急いで彼女の部屋へと戻った。
しかし部屋の扉を開けようとするも、なぜか扉が開かない。
カギはかかっていないようだが……良く調べてみると強力な魔法で扉が包み込まれていた。
まさか……!
思い当たるのは棚に置きっぱなしにしていたあの妖魔の瓶……。
何かの拍子で出てしまったのか……。
慌てて外へ出て、庭に回り込み部屋の窓へ向かうと、そこにも同じように魔力で包まれていた。
次第に魔力は強まり、開けることが困難になっていく……。
壁となっている魔力を薙ぎ払おうと、自分の魔力をぶつけてみるが……弾き飛ばされどうすることも出来ない。
俺は慌てて伝書蝶を呼び出すと、エヴァンへと飛ばした。
エヴァンはすぐに駆けつけてくると、扉の魔力は先ほどより数段強固なものになっていた。
中からは物音一つ聞こえないが……きっと彼女から魔力を吸い取っているのだろう……。
だが……あいつは弱い。
俺からすれば強いが……エヴァンや彼女の魔力量を見る限り、妖魔ごときにやられるはずがない。
それに彼女は魔法を使えるはずだが……どうして抵抗しなかったんだ?
そんな疑問が浮かぶ中、エヴァンに視線を向けると、彼は眉間に皺をよせ、目をスッと細めていた。
「これはかなり厄介ですね……」
「中で彼女が妖魔に魔力を吸い取られているはずだ……。あいつの魔力量は彼女に比べると少ない。魔力が吸い取られても、枯渇することはないと思うが……」
その言葉にエヴァンは大きく目を見開くと、エメラルドの瞳が怒りに燃える。
「一体全体……どうしてこんなことになっているのですか?」
俺は怒りを含むエヴァンから思わず視線を逸らせると、ボソボソと話した。
「いや……あいつを封印していた瓶を置きっぱなしで、彼女を部屋に残した。たぶん何かの拍子でその瓶が空いたのかもしれない……。だがあいつはそんなに強くないだろう。エヴァンがしっかりと彼女に魔法を教えているのであれば、こうはならないはずなんだがな」
そうエヴァンを睨みつけると、彼は小さく顔を歪め、口を閉ざし俺から目を反らせた。
「お前どうして……彼女の魔法を教えるのをやめたんだ?」
「はぁ!やめてなどいません!!!只……彼女が……」
エヴァンは不自然に言葉を濁すと、流れる魔力が乱れていく。
「彼女が何だ?彼女は気にしていたぜ。……お前が来なくなって、もう自分には魔法を教えてもらえないんじゃないかってな」
「あぁ~~~もう煩いですよ!!今は魔力を込めているんです、邪魔をしないでください!」
エヴァンは扉にそっと手を伸ばすと、彼の壮大な魔力が手に集まっていく。
そんな姿を横目に、俺は大きく息を吐くと、じっとエヴァンを見据えていた。
するとエヴァンは不貞腐れた様子で小さく唇を噛むと、口を開いた。
「レックスも……彼女から黒蝶を受け取ったんですか……?」
エヴァンの手に魔力が集まる中、俺は彼の言葉に目を見張ると、長年連れ添った中……ある思いが浮かんだ。
「エヴァン、まさか……彼女が自分より先に俺や、ブレイクに蝶を送って嫉妬しているのか?……会いに行かなければ、自分に蝶を送ってくれるんじゃないか。そんな浅はかな考えで、会いに行かなかったって事はないよな?」
「そっ、そんな事あるはずがないでしょう!!!私は彼女の事を好きでも何でもない!彼女が誰に蝶を送ろうが……私には関係ない事です!」
エヴァンは顔を真っ赤にそう叫ぶと、扉から大きな爆発音が響く。
感情を露わにしたエヴァンに驚く中、扉の先に現れたのは……あられもない彼女が、触手に宙づりにされている姿だった。
予想だにしていなった状況に狼狽する中、エヴァンは勢いよく中へ入ると、妖魔の苦手な鳥を召喚する。
鳥は妖魔に一直線へ向かうと、堅い嘴でツンツンと妖魔をつつき始めた。
エヴァンは怯んだ妖魔を、魔法で作った糸でグルグル巻きにする中、俺は落ちていく彼女を慌てて魔力で包み込むと、横たわる彼女へ視線を向ける。
まさか……いや、妖魔はこんなことせずとも、女から魔力を奪えたはずだ。
お得意の触手で吸い取ればいい……なのにどうして……?
それに魔物が人間の女を襲うなんて聞いたことがない……。
彼女の滑らかな肌に視線を向けると……手首足首に触手に縛られ赤く痣が浮かび、股の間に蜜が流れ落ちていた。
何度もいかされたのだろうと分かる、彼女の甘い蜜の匂いが部屋を充満している。
そんな彼女の香りに下半身が疼くと、俺は静かに首を横に振った。
はぁ……俺は何を考えてるんだ……。
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