[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第二章

とある決意

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セーフィロの話を聞いた翌日、私はベッドの上でスマホの画面をじっと見つめていた。
《時空移転魔法》と書かれた大魔法。
ようやくタクミがこの魔法を使った事で、女性の出生率が低下していたのだとの裏付けがとれた。
魔女が話していた……何か強い力で無理矢理事実を変えてしまうと、それを修正する為に歪みが起こる。
一体タクミはどんな事実を変えてしまったのかしら……。

私は大きく息を吐きだすと、スマホの映る写真をペラペラとめくっていく。
ここまで知ってしまった私がすべきことは……、タクミが愛していたこの世界を元に戻す事。
セーフィロに、タクミが魔法を使った日付けを、聞くことも出来たわ。
後はこの時空移転魔法に、その日より数日前に移動して、原因を探るほかない。

それに森で作った魔力の水風船は十二分にある。
タクミの時空移転魔法を阻止させたいところだが……それはきっと事実を歪めてしまう事になるでしょうね。
なら……どうすればいいのかしら……?

また自然とため息が漏れると、私はスマホから手を離し天井を見上げた。
とりあえず現地へ向かって、考えましょう……。
それよりもあの金髪の女性に会う事は出来ないかしら……。
彼女も同じ異世界の人間で、時空の歪みについて探っていた。
もし会う事が出来れば……何かわかるかもしれないわね。

私は新たな決意を胸に、ベッドから体を起こす。
そのまま窓際まで足を運ぶと、夜空に浮かぶ欠けた月を見上げた。
月が魔力にどうかかわっているのかはわからないが、タクミの手紙や、図書館で調べたところによると、満月には魔力を高める効果があるようだ。

私も……魔法を実行するのなら満月の日の方が良いわよね。
次の満月は確か……一週間後。
それまでに旅立つ準備を整えましょう。
あまり急ぎすぎる事も良くないと分かってはいるけれど……誰かに感づかれる前に魔法を使いたい。
この魔法は誰にも悟られてはいけない……自分一人で何とかしなければ……。

私はそっとテーブルへと移動すると、ペンを持ち、ノート広げた。
う~ん、旅の準備に必要な物は……。
魔力の補充する準備も出来たわ。
女の一人旅、きっと危険な事もあるでしょうけれど……それは攻撃魔法や防御魔法、捕縛魔法をエヴァンとの訓練で習得済み。
昨日セーフィロが使った、魔力を止める魔法についても教えてもらっていた。
彼が使ったのは魔法ではなく、手首にあるツボを押すことで、一時的に魔力の流れを遮断するものだったようだ。
だからあの時、魔法を防ぐ防御魔法は、効果がなかったって事。
次は物理的な攻撃にも耐えうる防御魔法をイメージしなくちゃね……。
後は当日防御魔法で魔力を外に流れないようにしないと……エヴァンは魔力の流れに敏感だから……。

一番厄介なのは、この世界で生活する為の資金よね……。
この国の現状、女性は働くことが出来ない為、お金を稼ぐ手段が全くない。
仕方がないわよね……出来ればやりたくはないけれど、手段を選んでいる場合じゃないわ。

私は化粧棚へ移動すると、中からいくつかの宝石を取り出した。
これを現地で売れば、少なからずお金になるわよね。
黙って持っていくのは憚れるが……この際致し方ない。
タクミもあの紙切れを持ったまま私の世界へとやってきたのだから、きっと身に着けて居れば宝石も持ち運べると思うわ。

最後に……移動手段ね……。
転移魔法を使うには、道を知らなければいけないわ。
この街の地図を、図書館で見ておきましょう。
15年前ならそれほど変わっていないでしょうし。
それ以外に楽して移動する方法は……パッと思いつくの事は一つしかないわ。

私は静かに魔力を体に纏うと、静かに風を発生させる。
浮くには浮力が必要だったわね……。
重力よりも強い浮力……体が耐えられるかわからない。
まずは防御魔法で自分自身を円状で包み、その円に向かって下から風をおこそうと試みる。
あっ、その前に部屋を防御魔法でカバーしないとね……。

部屋を防御魔法で覆った後、自分自身を防御魔法で覆うと静かに風を発生させる。
魔力を調整しながらゆっくり、ゆっくりと浮くまで試してみると……思っていたよりも簡単に、床から足が離れ浮かび上がった。
そのまま風の向きをコントロールしてみると、私の体はプカプカと進んでいく。
わぁお、これは結構魔力量が少なくて済むわ。
歩けないところや急ぐ場合は、これを利用してみましょう。
ふふ、自然に起きる風も利用すれば、魔力の節約にもなりそうね。

旅の準備に必要な物や事を書き連ねていく中、ふとペンをとめた。
っとその前に……実際に使ったことのないこの魔法をどうやって練習するかよね……。
色々と準備をしても当日(時空移転魔法)を使って、発動しなければ目も当てられない。
だがこんな事実を歪めてしまうかもしれない危険な魔法を、練習のために使うわけにもいかないわ……。
やっぱりぶっつけ本番で頑張るしかないのかしら?
あっ、そうだ……セーフィロに聞いてみましょう。

「キィペペオ」

セーフィロを頭の中で描きながらそう言葉にすると、私の手の平に黒い蝶が現れる。
ヒラヒラと舞う蝶が私の周りをクルクルと回る姿に、バルァと囁くと蝶は私の口元へとよってきた。

「突然すみません、お伺いしたい事があるのですが……お暇な時でも、部屋に来ていただけませんでしょうか?」

そう蝶へ話しかけると、蝶は黒い光放ちながら、ヒラヒラと窓の向こうへと消えて行った。
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