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第二章
そして旅立ちへ
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あの日、セーフィロを呼び出し、大きな魔法を練習する方法を聞いみたが……イメージを鮮明にすれば、成功するのだそうで……練習方法はないとバッサリ切り捨てられてしまった……。
ぶっつけ本番か……私こういうの苦手なのよね……。
出来れば何度も練習して100%の成功率を確保できるようになってから使いたいわ……。
(時空移転魔法)は、時間を超える道筋を辿る魔法。
どうやってこの道筋を見つけたのかはわからないが……過去、現在、未来、との全ては表裏一体で存在する。
その目に見えない道筋をイメージすることで、様々な時代へと行き来する事ができるのだ。
イメージを鮮明にし、その入り口をこじ開ける。
これが時空移転魔法の方法だった。
刻一刻と満月の日が近づく中、図書館でこの国の地図に目を通し、魔力や魔法、旅などの役立ちそうな本をエヴァンに見つからない様、コソコソと読み漁る毎日。
そうして日課であるエヴァンとの練習が終わり、一人部屋の中でスマホの画面と睨めっこしながら、何度も何度も時空移転魔法をイメトレしていた。
時を飛ぶ理屈はスマホに書かれている……後はどれだけ鮮明出来るかなのよね……。
今もこの空間に存在する入口か……。
私は見えない何かを掴もうと、空へと手を伸ばしていた。
時が慌ただしく過ぎ去っていくと、待ちに待った満月の日がやってきた。
魔力が一番高まる日。
タクミも満月の日に、時空移転魔法を使った。
この魔法使う事で、本当に過去に戻れるのか、それとも私もタクミと同じように異世界へ飛ばされてしまうのは、それはやってみないとわからない。
私は窓の外に輝く満月を見上げると、そっとスマホ取り出した。
魔力を流し画像を開くと、何度も見返した時空移転魔法を開いた。
この魔法は禁忌の術。
使えば……それだけで牢獄行きとなる。
だからこの事は、セーフィロ以外には話していない。
そんな彼にも魔法を使う日にちは、伝えていなかった。
きっと突然私が消えたら、みんな驚くわよね……。
私は徐に伝書蝶を呼び出すと、声を登録する。
そのまま誰の宛名も言わず、机の上にそっと置くと、蝶は花へ止まるように静かに羽を閉じた。
さてまずは……魔法陣を書かないと……。
行きたい場所は、はっきりしているわ。
私は今一度スマホへ目を向けると、画面をタップし拡大していく。
画面を見つめながら作業を始めてすぐ、スマホに魔力を流しながら、魔法陣を書く事は困難だと気が付いた。
う~ん、これは書きにくいわね……スマホに流す魔力に気を取られてしまうわ。
そうだ……これを紙に移すことは出来るかしら?
コピーの要領を、イメージしてやってみましょう。
私はスマホの画面を戻し、じっと見つめながら、机の上に置いた紙へと手を伸ばす。
そのまま手に魔力を集めていくと、画面に表示された魔法陣を、一つ一つ確認していった。
画面を拡大したイメージをそのままに、瞳から手へと魔力を流していくと、紙にひとりでにインクが浮かび上がる。
私は魔力の流れを微調整していくと、そのまま紙に魔法陣が現れるまでじっと待っていた。
ゆっくりと魔力が紙へ流れていく中、そっと視線を落とすと、そこにはスマホの画面と同じものが描かれていた。
わぁお、本当に出来るものなのね。
魔法ってとっても便利だわ。
私は紙を持ち上げると、スマホをローブの中へ片づけ、指先に魔力を集めると、床へ魔力の線を引いていた。
ようやく床に魔法陣が完成すると、私は弱い魔力で自分の部屋を包み込んだ。
そのまま何重にも防御魔法を展開させ、重ねることで発動する魔力が外に漏れださないように工夫していく。
この重ねるという事は、図書館で調べ済みだ。
防御魔法は何重にも重ねることで、より強固な物となると書いていた。
念入りに重ねておきましょう……ここで見つかってしまえば、もとも子もないわ。
私は瞼を閉じると、細心の注意を払いながら、ゆっくりゆっくりと防御魔法で覆っていった。
そうして厳重に防御魔法を張り終えると、私はローブから魔力玉を取り出し、口へと放り込む。
森で作った水風船は温存しておかないとね。
魔力玉を食べ、十分に魔力を補充すると、私は静かに魔法陣の中央へ入って行った。
時は……今から15年前……2月19日。
三日ほど余裕を見ておけば、きっと大丈夫でしょ。
私は大きく息を吸い込むと、魔法陣の模様にそって魔力を流し込んでいく。
すると魔法陣がフワッと宙へ浮かび上がった。
浮かび上がった魔法陣へ自分の中にある最大級の魔力を流し込むと、脳裏に出会った頃のタクミの姿が蘇る。
きっと出会った時の彼の姿は、魔法を使った日と同じ……。
出会った頃の彼は……まだあどけなさが残る可愛らしい青年だったわね……。
懐かしい思いを胸に、体をめぐる魔力が凄まじい勢いで放出されていくと、魔法陣から強い光が現れる。
次第に自分の体がどこかへ引き寄せられるのを感じると、私は体の力を抜いていった。
その瞬間……部屋の扉が勢いよく開いた。
私はすぐに顔を向けると、そこには怒りの瞳を浮かべたエヴァンの姿が映った。
「やめなさい、一体あなたは何をしているのですか!」
怒鳴り声が部屋に轟く中、私は呆然と光の中からエヴァンの姿を見つめていた。
「どうして……わかったの?」
そう呟くと、彼は何も答える事無く魔法陣の中へ進んでくる。
そんな彼の様子に私は慌てて魔力の流れを外へ向けると、エヴァンを弾くように防御魔法を張りなおした。
するとエヴァンは魔法陣の前で小さく顔を歪めたかと思うと……徐に杖を掲げた。
「あなたが一体、何をしようとしているのかは知りませんが……私の前から消えることは、絶対に許さない」
彼の言葉と共に杖が強く光を発する中、私は必死な思いでエヴァンへ向かって叫んだ。
「やめて来ないで!!誰も巻き込みたくないの!!だからお願い、そこに居て。必ず……」
必ず戻るから、そう口にする前に……視界が歪み始める。
エヴァンの姿が霞む中、ひどい頭痛が襲ってくると、私はその場に膝をついた。
次第に初めて異世界へ飛ばされた時のような不快感がこみ上げてくると、私は嘔吐を抑えるように口に手をあてる。
グラグラと脳が揺れ、徐々に意識が朦朧としてくると、私は抗うことなくそのまま意識を手放した。
ぶっつけ本番か……私こういうの苦手なのよね……。
出来れば何度も練習して100%の成功率を確保できるようになってから使いたいわ……。
(時空移転魔法)は、時間を超える道筋を辿る魔法。
どうやってこの道筋を見つけたのかはわからないが……過去、現在、未来、との全ては表裏一体で存在する。
その目に見えない道筋をイメージすることで、様々な時代へと行き来する事ができるのだ。
イメージを鮮明にし、その入り口をこじ開ける。
これが時空移転魔法の方法だった。
刻一刻と満月の日が近づく中、図書館でこの国の地図に目を通し、魔力や魔法、旅などの役立ちそうな本をエヴァンに見つからない様、コソコソと読み漁る毎日。
そうして日課であるエヴァンとの練習が終わり、一人部屋の中でスマホの画面と睨めっこしながら、何度も何度も時空移転魔法をイメトレしていた。
時を飛ぶ理屈はスマホに書かれている……後はどれだけ鮮明出来るかなのよね……。
今もこの空間に存在する入口か……。
私は見えない何かを掴もうと、空へと手を伸ばしていた。
時が慌ただしく過ぎ去っていくと、待ちに待った満月の日がやってきた。
魔力が一番高まる日。
タクミも満月の日に、時空移転魔法を使った。
この魔法使う事で、本当に過去に戻れるのか、それとも私もタクミと同じように異世界へ飛ばされてしまうのは、それはやってみないとわからない。
私は窓の外に輝く満月を見上げると、そっとスマホ取り出した。
魔力を流し画像を開くと、何度も見返した時空移転魔法を開いた。
この魔法は禁忌の術。
使えば……それだけで牢獄行きとなる。
だからこの事は、セーフィロ以外には話していない。
そんな彼にも魔法を使う日にちは、伝えていなかった。
きっと突然私が消えたら、みんな驚くわよね……。
私は徐に伝書蝶を呼び出すと、声を登録する。
そのまま誰の宛名も言わず、机の上にそっと置くと、蝶は花へ止まるように静かに羽を閉じた。
さてまずは……魔法陣を書かないと……。
行きたい場所は、はっきりしているわ。
私は今一度スマホへ目を向けると、画面をタップし拡大していく。
画面を見つめながら作業を始めてすぐ、スマホに魔力を流しながら、魔法陣を書く事は困難だと気が付いた。
う~ん、これは書きにくいわね……スマホに流す魔力に気を取られてしまうわ。
そうだ……これを紙に移すことは出来るかしら?
コピーの要領を、イメージしてやってみましょう。
私はスマホの画面を戻し、じっと見つめながら、机の上に置いた紙へと手を伸ばす。
そのまま手に魔力を集めていくと、画面に表示された魔法陣を、一つ一つ確認していった。
画面を拡大したイメージをそのままに、瞳から手へと魔力を流していくと、紙にひとりでにインクが浮かび上がる。
私は魔力の流れを微調整していくと、そのまま紙に魔法陣が現れるまでじっと待っていた。
ゆっくりと魔力が紙へ流れていく中、そっと視線を落とすと、そこにはスマホの画面と同じものが描かれていた。
わぁお、本当に出来るものなのね。
魔法ってとっても便利だわ。
私は紙を持ち上げると、スマホをローブの中へ片づけ、指先に魔力を集めると、床へ魔力の線を引いていた。
ようやく床に魔法陣が完成すると、私は弱い魔力で自分の部屋を包み込んだ。
そのまま何重にも防御魔法を展開させ、重ねることで発動する魔力が外に漏れださないように工夫していく。
この重ねるという事は、図書館で調べ済みだ。
防御魔法は何重にも重ねることで、より強固な物となると書いていた。
念入りに重ねておきましょう……ここで見つかってしまえば、もとも子もないわ。
私は瞼を閉じると、細心の注意を払いながら、ゆっくりゆっくりと防御魔法で覆っていった。
そうして厳重に防御魔法を張り終えると、私はローブから魔力玉を取り出し、口へと放り込む。
森で作った水風船は温存しておかないとね。
魔力玉を食べ、十分に魔力を補充すると、私は静かに魔法陣の中央へ入って行った。
時は……今から15年前……2月19日。
三日ほど余裕を見ておけば、きっと大丈夫でしょ。
私は大きく息を吸い込むと、魔法陣の模様にそって魔力を流し込んでいく。
すると魔法陣がフワッと宙へ浮かび上がった。
浮かび上がった魔法陣へ自分の中にある最大級の魔力を流し込むと、脳裏に出会った頃のタクミの姿が蘇る。
きっと出会った時の彼の姿は、魔法を使った日と同じ……。
出会った頃の彼は……まだあどけなさが残る可愛らしい青年だったわね……。
懐かしい思いを胸に、体をめぐる魔力が凄まじい勢いで放出されていくと、魔法陣から強い光が現れる。
次第に自分の体がどこかへ引き寄せられるのを感じると、私は体の力を抜いていった。
その瞬間……部屋の扉が勢いよく開いた。
私はすぐに顔を向けると、そこには怒りの瞳を浮かべたエヴァンの姿が映った。
「やめなさい、一体あなたは何をしているのですか!」
怒鳴り声が部屋に轟く中、私は呆然と光の中からエヴァンの姿を見つめていた。
「どうして……わかったの?」
そう呟くと、彼は何も答える事無く魔法陣の中へ進んでくる。
そんな彼の様子に私は慌てて魔力の流れを外へ向けると、エヴァンを弾くように防御魔法を張りなおした。
するとエヴァンは魔法陣の前で小さく顔を歪めたかと思うと……徐に杖を掲げた。
「あなたが一体、何をしようとしているのかは知りませんが……私の前から消えることは、絶対に許さない」
彼の言葉と共に杖が強く光を発する中、私は必死な思いでエヴァンへ向かって叫んだ。
「やめて来ないで!!誰も巻き込みたくないの!!だからお願い、そこに居て。必ず……」
必ず戻るから、そう口にする前に……視界が歪み始める。
エヴァンの姿が霞む中、ひどい頭痛が襲ってくると、私はその場に膝をついた。
次第に初めて異世界へ飛ばされた時のような不快感がこみ上げてくると、私は嘔吐を抑えるように口に手をあてる。
グラグラと脳が揺れ、徐々に意識が朦朧としてくると、私は抗うことなくそのまま意識を手放した。
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