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第三章
旅の真実⑧
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タクミが消えた後……、誰もいなくなった道の中を私はゆっくりと進んでいくと、何か魔力を帯びた物が、通り道を塞ぐように設置されている事に気が付いた。
そっとその壁の傍へ近づいてみると、今まで感じたことがないようなほどの強い魔法のようだ。
もう少し近くへ……と恐る恐る魔力の壁へ進んでいくと、パチンッと大きな音と共に強く弾かれてしまう。
これ以上近づくのは無理ね……。
私はその場で動きを止め、蜃気楼のようにユラユラと揺らめく壁へと視線を向けると、それは風の流れが遮断するほどの堅固な物のようだ。
この壁こそが……全て元凶……。
彼は時空移転魔法を使った際、この壁に弾かれて私の世界へやってきた。
他の者をタクミの代わりに過去へ向かわせる様世界が修正しようとしても、この壁がある限りこれより先へは進めない。
即ち……過去に戻った事実が歪められ世界が二つに割れたんだわ。
この壁は時空の中……世界から逸脱しているから……手を出す事が出来ないのかしら……。
私は必死に頭をフル回転させると、今ある事実を前に時空の歪みについて紐解いていく。
これが原因だから……タクミが時空移転魔法を使った際には時空が歪まなかった。
だって使ったこと自体は、どちらの世界にも存在していたわ。
でも彼が世界に戻ってきた時……過去に行った事実がある世界と、過去に行った事実がない世界が生まれてしまった。
でもそれならタクミが居なくなれば……解決するような……。
いやでも……彼が行ったはずの15年前……そこにタクミが現れなかった事で、別の誰かが両親へ会いに行くようきっと修正されているわ。
そうやって15年間世界がだましだまし修正し続けたとすれば……タクミが戻ってきた時点では、大分世界は修正された後……。
タクミがいなかったから何とかなっていた世界に、タクミという異分子が入り込んできた。
だから今までの修正した世界とは、大きく食い違い……いえ様々な矛盾が生まれてしまったのかしれない。
それは……タクミが消えても修正出来ないほどの大きな歪みとなって……人間全てが世界の敵になった……?
そう結論に達すると、私は魔力の壁をじっと見上げてみる。
それにしても……この魔力の壁は一体誰が作ったのかしら……。
タクミではない事は間違いないわ。
セーフィロでもないでしょう……だって彼はこの道を知らないはずだから。
なら一体誰が何時何のために……?
壁を観察するようによく見てみると、私の魔力玉と同じように、外には薄い膜に覆われ、中は水のような液体が、ゆらゆらと揺れている。
その壁が道へピッシリ張り付けられ、丸い通り道を塞いでいた。
隙間なく埋め尽くされたそれは、誰一人通ることは不可能だろう。
これほどの魔力の壁を作れるほどの人は、そうそういないと思うけれど……。
だって……これだけの魔力を持っていないと作れない。
魔力が少ない者でも、魔力玉のように空気中の魔力を集めることが出来れば可能かもしれないが……風が吹き荒れるこの道中で、それをすることは不可能でしょう。
私は壁の向こう側を覗き込んでみると、少し先に大きな光が浮かび上がっている。
あそこが出口ね……すなわちタクミが行くはずだった世界……。
という事はこの壁は15年前よりも後に、作られたのかしら?
偶然の産物……、いやいやまさか……。
さすがにこの道を知っている人以外が、ここを塞ぐことなんて出来ないと思うわ。
なら……タクミが過去へ行ったと知っている人物。
この世界のセーフィロが知るはずもない。
この事を知っている人物は……ただ一人……彼の両親だけ……。
そういえば……正しい世界のタクミは両親の遺産から、時空移転魔法を見つけたと言っていたわ。
なら二人がこの道を見つけていても不思議じゃない。
ふと先ほどタクミを大事そうに抱きしめる夫婦の姿が頭を掠めると、また新たな疑問が生まれてくる。
もし彼らがこの魔法を使ったのだとしたら……一体どうして?
彼らもタクミと出会えて、とても嬉しそうだったわ。
わざわざこんな大掛かりな魔法を使ってでも、彼を過去へ行かせないようにした理由は一体なに?
あぁ……さっきの正しい世界に居た時に、もう少し彼らの様子を見てみるべきだったわね……。
私は深いため息を吐くと、壁から離れ、辺りをキョロキョロと見渡してみる。
道は一本しかない。
どうにかここから出て、実際に壁を作る現場を見ることは出来ないかしら?
そう考えた瞬間……私の周りに灰色の霧が漂い始める。
そのまま霧の様子を覗っていると、魔力の壁が灰色の霧に覆われ、道が次第に霞んでいく。
辺りが灰色の雲に覆われると、私は必死に光を探した。
グルリと見渡してみても今回はどこにも光は現れていない。
私は雲を掻き分けるように進んでいくと、雨雲のような雲たちが私の進路を奪うかのように数を増やしていく。
光はどこなの……、お願い……この壁が出来る瞬間を見せて欲しい……。
がむしゃらにまとわりつく雲を振り払いながらも、なんとか前へと進んだ先で……ようやく小さな光を見つけた。
私は急いでその光へ入って行くと、その先には……ただっぴろい荒野に佇む二人の人影が映し出されていった。
そっとその壁の傍へ近づいてみると、今まで感じたことがないようなほどの強い魔法のようだ。
もう少し近くへ……と恐る恐る魔力の壁へ進んでいくと、パチンッと大きな音と共に強く弾かれてしまう。
これ以上近づくのは無理ね……。
私はその場で動きを止め、蜃気楼のようにユラユラと揺らめく壁へと視線を向けると、それは風の流れが遮断するほどの堅固な物のようだ。
この壁こそが……全て元凶……。
彼は時空移転魔法を使った際、この壁に弾かれて私の世界へやってきた。
他の者をタクミの代わりに過去へ向かわせる様世界が修正しようとしても、この壁がある限りこれより先へは進めない。
即ち……過去に戻った事実が歪められ世界が二つに割れたんだわ。
この壁は時空の中……世界から逸脱しているから……手を出す事が出来ないのかしら……。
私は必死に頭をフル回転させると、今ある事実を前に時空の歪みについて紐解いていく。
これが原因だから……タクミが時空移転魔法を使った際には時空が歪まなかった。
だって使ったこと自体は、どちらの世界にも存在していたわ。
でも彼が世界に戻ってきた時……過去に行った事実がある世界と、過去に行った事実がない世界が生まれてしまった。
でもそれならタクミが居なくなれば……解決するような……。
いやでも……彼が行ったはずの15年前……そこにタクミが現れなかった事で、別の誰かが両親へ会いに行くようきっと修正されているわ。
そうやって15年間世界がだましだまし修正し続けたとすれば……タクミが戻ってきた時点では、大分世界は修正された後……。
タクミがいなかったから何とかなっていた世界に、タクミという異分子が入り込んできた。
だから今までの修正した世界とは、大きく食い違い……いえ様々な矛盾が生まれてしまったのかしれない。
それは……タクミが消えても修正出来ないほどの大きな歪みとなって……人間全てが世界の敵になった……?
そう結論に達すると、私は魔力の壁をじっと見上げてみる。
それにしても……この魔力の壁は一体誰が作ったのかしら……。
タクミではない事は間違いないわ。
セーフィロでもないでしょう……だって彼はこの道を知らないはずだから。
なら一体誰が何時何のために……?
壁を観察するようによく見てみると、私の魔力玉と同じように、外には薄い膜に覆われ、中は水のような液体が、ゆらゆらと揺れている。
その壁が道へピッシリ張り付けられ、丸い通り道を塞いでいた。
隙間なく埋め尽くされたそれは、誰一人通ることは不可能だろう。
これほどの魔力の壁を作れるほどの人は、そうそういないと思うけれど……。
だって……これだけの魔力を持っていないと作れない。
魔力が少ない者でも、魔力玉のように空気中の魔力を集めることが出来れば可能かもしれないが……風が吹き荒れるこの道中で、それをすることは不可能でしょう。
私は壁の向こう側を覗き込んでみると、少し先に大きな光が浮かび上がっている。
あそこが出口ね……すなわちタクミが行くはずだった世界……。
という事はこの壁は15年前よりも後に、作られたのかしら?
偶然の産物……、いやいやまさか……。
さすがにこの道を知っている人以外が、ここを塞ぐことなんて出来ないと思うわ。
なら……タクミが過去へ行ったと知っている人物。
この世界のセーフィロが知るはずもない。
この事を知っている人物は……ただ一人……彼の両親だけ……。
そういえば……正しい世界のタクミは両親の遺産から、時空移転魔法を見つけたと言っていたわ。
なら二人がこの道を見つけていても不思議じゃない。
ふと先ほどタクミを大事そうに抱きしめる夫婦の姿が頭を掠めると、また新たな疑問が生まれてくる。
もし彼らがこの魔法を使ったのだとしたら……一体どうして?
彼らもタクミと出会えて、とても嬉しそうだったわ。
わざわざこんな大掛かりな魔法を使ってでも、彼を過去へ行かせないようにした理由は一体なに?
あぁ……さっきの正しい世界に居た時に、もう少し彼らの様子を見てみるべきだったわね……。
私は深いため息を吐くと、壁から離れ、辺りをキョロキョロと見渡してみる。
道は一本しかない。
どうにかここから出て、実際に壁を作る現場を見ることは出来ないかしら?
そう考えた瞬間……私の周りに灰色の霧が漂い始める。
そのまま霧の様子を覗っていると、魔力の壁が灰色の霧に覆われ、道が次第に霞んでいく。
辺りが灰色の雲に覆われると、私は必死に光を探した。
グルリと見渡してみても今回はどこにも光は現れていない。
私は雲を掻き分けるように進んでいくと、雨雲のような雲たちが私の進路を奪うかのように数を増やしていく。
光はどこなの……、お願い……この壁が出来る瞬間を見せて欲しい……。
がむしゃらにまとわりつく雲を振り払いながらも、なんとか前へと進んだ先で……ようやく小さな光を見つけた。
私は急いでその光へ入って行くと、その先には……ただっぴろい荒野に佇む二人の人影が映し出されていった。
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