偽りの家族を辞めます!私は本当に愛する人と生きて行く!

ユウ

文字の大きさ
112 / 137
第四章未来への扉

16.カマっ娘バレエ団

しおりを挟む
王宮内にある庭園。
一年中咲き乱れる美しい薔薇や百合の花は王侯貴族達が愛でる場にもなっている。


その奥に宮廷菜園と呼ばれる畑があった。
ここの管轄も漢女部隊が取り仕切り、宮廷庭師と共に精魂込めて育てられている。


すべて手作業でされているため、雑草引き等は重労働だと噂で耳にしたことがある。

だが土遊びに過ぎない。
ろくに教養もなく戦場に出ることを怖がった出来損ないの連中がするような仕事としてしか思っていなかった。


そう、こんな光景を誰を信じられるか!

何故王宮内の敷地に食中植物が存在するのだ!





「ぎゃああああ!!」

今まさに私はその食中植物に襲われ命の危機を迎えながら必死に走りながら逃げていた。

しかし敵は前方にもいた。


「ちょっと、逃げちゃだめよ!ちゃんと刈らないと」

「そうよ、ちゃんと防護服来ているから死にはしないわ?さぁ皆一緒にアン・ドゥ・トロワ!」

「「「アン・ドゥ・トロワ!!」」」

全身白の衣裳に身を包み華麗に踊るおかしな連中は襲って来る雑草ノッキーニと戦っていた。


何が防護服だ。
白タイツを履き、国立劇場で踊り子たちが着るレオタードにやたらとひらひらしたレースを身にまとう姿は見るに堪えなかった。

あげく頭におかしな白鳥のカチューシャをつけている。

どっちが魔物か解ったものではない!

なのに私に迫って来る化け物達は同じような事をするように強要して来た。


「ほら、貴方も」

「できるか!」

「もう、これが一番効率的なのよ?ここの雑草君は可愛い女の子が大好きで踊りも大好きなの!だからこうして可愛い格好で踊って大人しくさせて駆除するのよ?」

「ノッキーニは地面から出た瞬間から足元が弱いの…だから、リズムに乗って足元を踏みつけて倒して、その後に目つぶしすればはい簡単!」

「ノッキー!!」


ノッキーニは悲鳴を上げてそのまま倒れ汁を出す。


「ノッキー二の汁は栄養分になるのよ」

「この汁を土に巻けば畑の野菜はより早く育つの。さぁ、貴方も一緒に…」

「やめろぉぉ!私はそんな真似できるか!」



地下牢から出されてしばたくして、私は妻や娘達とは別の場所で更生させるとのことだったらしいが、正直言って地獄以外の何物でもない。


これならば、地下牢で過ごしている方がマシだ。

「もう、ちゃんとしないとダメよ?更生の意味がないわ…乱れた心を鍛えるには心身ともに鍛える必要があるわ。心と体を鍛える…すなわち踊りよ!バレエよ!」

「魔物を駆除するのに何故踊るのだ!」

「何言っているの?古来より魔を浄化するのには、踊りが効果的なのよ?この浄化方法は効果的よ?王女殿下も後任だし…さぁ、貴方も私達と同じ衣装に着替えましょう」


着替えるだと?
こんなふざけた格好をさせられるのか?

今、私が着ている格好は普通の防護服だった。
どうしても着たくなくて、なんとか普通の防護服を死守したのだ。


「そうよ?身も心も着替えなくては…はい、貴方の下着」

「やめろぉぉ!それは女物ではないか!しかも何故、そんなにヒラヒラしているんだ」

「この方が可愛いでしょ?この下着は魔道具の一種でもあるから、身を守ってくれるわ」

これがか!
例え、身を守ってくれたとしても男としての尊厳を守れないではないか。


「さぁ、着替えましょう?」

「大丈夫よ?最初は抵抗があるけど…すぐに慣れるわ」

「やめろぉぉ!!」


私はこの世の地獄を見た。

死ねば良かったと思う程の地獄を体験することになるのだった。



しおりを挟む
感想 295

あなたにおすすめの小説

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

処理中です...