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第一章
5承諾
しおりを挟む「まぁ!なんて素晴らしいのでしょう!」
王妃同様に、母アリエルも大喜びだった。
「エンゼル王国は内乱もなく、王家の皆さまは穏やかなお人柄ですわ」
「しかしだな…」
「祖国では生きづらいでしょうし、女官の仕事を辞めると言ってきかないカナリアを止めるのは難しかったですから」
アリエル曰く。
何とか侍女として他所の邸に雇ってもらえないか働きかけようとしていた最中だった。
しかし立派過ぎる経歴では半端な家柄では雇ってもらえない。
最悪他国の貴族の家庭教師の仕事を探そうとも考えていたのだから。
「流離の家庭教師よりもずっと安定しているではありませんか」
「そうだが…」
「ウィスター夫人。ご息女は家庭教師の経験が?」
「ええ」
エンディミオンは驚きを隠せなかった。
この若さで王室家庭教師に抜擢されるなんて普通はありえないのだ。
「私と夫の仕事柄、物心つく前から専門学科を学ばせて来まして」
「数字に強くなり、その次は政治に興味を示しまして…その所為で社交界では悪い噂が流れてしまって」
この時代、女性が政治に興味を出す事ははしたないと言われている。
自立して仕事を持つ事を良く思っていない。
「前時代的な。我が国では女性であろうと実力主義です…まぁ、私の国にも厄介な者はいますが」
未だに男尊女卑が当たり前だと思う者は多い。
そして女性が地位を得る事を止めようとするのは天下りをしていた貴族や官僚が多かった。
「女性だから出世できない、家庭にいるべきだなんて考えは時代遅れです」
「殿下…」
「男では見えない視点で物事を考え良い政治をしなくては国は生き残れません。その為にも理を持たなくてはなりません」
感情論ではなく利益を優先するも。
理を持って国を守らなくてはならないとエンディミオンは考えている。
「最近では理を重んじることない事が多い。だからこそ私のパートナーには理を重んじる方が必要です」
「まぁ…」
「仕事人間の私ですが、側妃を持つ甲斐性のない男です…なれど、どうかお願いします。私は貴女の知性に惹かれました」
まるでロマンのへったくれもない。
今までにない口説き方と切り込み方だったが。
「光栄でございます」
カナリアにとっては愛を囁き都合の良い事を言われるよりも国と結婚し、民の為に尽くして欲しいと言われる方がずっと好感が持てる。
エンディミオンは根っからの仕事人間で最優先は国の安泰と民の生活を守る事を最優先にしている。
同じ志を持つ者同士、通じ合うものがあった。
「私と貴方は良い戦友なれると思います」
「はい、私もです」
共に握手をする二人はどう見ても婚約した男女には見えない。
甘さがまるでなかったのだが。
「アンデス」
「娘の願いです」
男親としては複雑な心境だった。
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