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第一章
7奥様の微笑み
しおりを挟む二人の婚約は国王陛下が許可をしたので早々に国を出る準備が進められた。
後は若い二人で交流をと気を使ったのだが。
「素晴らしい。この予算で」
「私はエンゼル王国の生産率の高さの方が素晴しいと」
「しかしこの予算では…」
二人の会話は、国の予算。
そして税の使い道に関する事や政治に関する事ばかりだった。
「二人の会話は国の予算や、資金の事ばかりだな」
「ええ、まったく色気がありませんわ。私達の時よりも酷いですわね」
カナリアの両親も似たような経歴で見合いをしてスピード結婚をしたようなものだった。
二人の間にあるのは愛よりも国の追求だったが、似た者同士だったので今日まで二人三脚で協力して来た。
だが、もう少しマシな会話はないのかと心配してしまう。
「蛙の子は蛙か…お前もプロポーズが私と一緒に良い国作りをしようだったか?」
「ぐっ…宰相閣下」
直属の上司でありながら親友に言われると頭が痛かった。
実際プロポーズとしては色気なんてまったくなかったし、新婚生活も外交目的だった。
常に生活は仕事中心だった。
「どうしたものか…私が仕事人間故に」
「そうだな。その所為で婚約者に不貞行為をされたが…そのおかげでこれ以上無い程の縁談に恵まれたじゃないか」
「そうですが」
結果は良い方向に進んだが、本当の良いのかと未だに思っている。
「まぁ、折角の良いお話なのだからお祝いしないと」
「ウルリーケ様」
「それに、まだ問題は片付いていませんでしょう?特に馬鹿な真似をしたあの男の不始末」
「ええ、そうですわね」
にっこりと微笑むアリエルも目が氷のように冷たかった。
「婚約破棄をしておきながら私達に一切の詫びもなく、花嫁道具を泥棒するなんてね?」
「ええ、ウルリーケ様にもご迷惑をおかけして」
「あら?悪いのは不貞行為をして自分は正しい、愛を貫いたと狂言を放つ馬鹿だわ。しかも浮気相手は、私が懇意にしている商会の者ですわ」
「は?」
「しかも嘆かわしい事に、その女性の事を詳しく調べたのですけど」
眉間に皺を寄せながら資料を見せる。
「おい、この娘は」
「何所の世界に自分の担当する花嫁の婚約者を奪うなんて考えに至ったのかしら?本当に」
ウルリーケはこれ以上の屈辱はないと怒っていた。
多くの商会の中でも一番信頼している商会に裏切られたのだから当然だが。
「だけど、これはいいわ」
「何をする気だ」
「愛があれば何でもできるなら障害を与えてあげなくては」
怪しく微笑むウルリーケに男二人はビクつくしかなかった。
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