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第一章
13脅迫
しおりを挟む「申し訳ありません!」
蛇に睨まれた蛙状態のキャスティ商会の会長。
キール・キャスティはウルリーケに呼ばれていた。
「まぁまぁ、そんなに頑なならないでくださいな」
「そうですわ。貴方の商会の方が私の娘の元婚約者を寝取ったぐらいで怒ったり増しませんわ」
「ええ、キャスティ商会は信頼していましたが…致し方ありませんわ」
口では責めてないと言いながらも目は全く笑っていないし、遠回しに責めている。
(殺される!)
キールは一番怒らせてはいけない人物に覚悟を決めた。
宰相の妻であり、社交界に影響力が強いウルリーケに、女性でありながらも王宮で秘書として優秀なアリエル。
この二人にかかれば、商会一潰すなんて簡単な事だった。
「なんとお詫びをしたら良いか…どうか私の首だけで!使用人や従業員達には!」
キールは罪のない使用人や会員達だけは守りたかった。
訴えられたとしても抵抗する気もなく、慰謝料も払うつもりでいたのだが。
「私は貴方を訴える気はありませんわ」
「ええ、少しお願いを聞いてくださればね?」
二人の笑みは悪魔のように恐ろしかった。
「貴方は聡明な方です。私達に協力してくだされば全て水に流しますわ」
「男女の関係ですもの。雇い主でしかない貴方に責任を取ってもらうなんておかしいでしょう?ですから少しだけ協力をお願いしたいんです」
「それは…私にできる事なら」
キールに断る選択はない。
許されるならどんな事もするつもりでいたのだから。
「貴方の商会の顧問弁護士に今回の事を訴えるとオイシス家に伝えてください」
「え?」
「正直、私はランドルフよりも彼女に対して怒りを覚えています」
愛に目覚めたというランドルフに憤りを感じたが、ウェディングアドバイザーでありながら新婦となるカナリアを侮辱して、何もかも奪う神経が許せない。
「エミリー・エスタークの事は既に調べています。彼女は既に一線を越えて何度も密会をして。挙句の果てに新居に寝泊まりしている事が解りました」
「なんですって」
「しかも、カナリアの為に用意した洋服も勝手に着ているそうですわ」
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キールはエミリーがそこまで愚かな事をしている事を知らなかった。
「カナリアは貴方も被害者だと言ってましたの」
「そんな!」
キールはカナリアに慰謝料を支払うつもりでいたのだ。
「協力してくだされば、私の力で貴方は被害者として処理いたします」
「ウルリーケ様!」
キールは感動して涙を流した。
本来ならば商会を潰されても当然だというのに慈悲をかけられたキールは協力を惜しまないことを約束したのだった。
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