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第一章
14噂の恐ろしさ
しおりを挟むそれから一週間後。
社交界で噂が流れる事となった。
仕事が生き甲斐だったカナリア・ウィスターは女官の仕事を辞職し、国を出ることになった。
婚約破棄を突きつけられ、王宮も追われる形となろすべてを奪われ悲しみに暮れるも女官として最後の仕事と、社交界を騒がせてしまった始末をつけたとか。
元婚約者には一方的な婚約破棄をされ、花嫁道具も全て追剥のように奪われたと。
婚約者も、仕事も奪われたカナリアに対して同情する者が多い中。
一部ではこんな噂が流れた。
「お気の毒だな。カナリア嬢」
「ああ、追剥のような真似をされて」
「ランドルフもいくら劣等感を抱いていても、あまりにも惨いな」
以前からランドルフとカナリアの仲をお世辞にも良いとは思えなかったが、表立って声に出す者は少なかった。
だが、今回のやりようでランドルフはカナリアの優秀ぶりに劣等感を抱き、逆恨みにこのような惨い仕打ちをしたのではないかと噂が流れた。
「まぁ、カナリア嬢は最年少で女官となり、王太子殿下からも信頼されていたからな」
「外で女遊びをしても。結婚式前にないだろ」
「狙ったんじゃないか?気真面目な婚約者に一発かましてやろうと思ったんだろうよ」
「まぁ、カナリア嬢は望まない婚約だった話だしな」
前オイシス男爵とアンデスは友人関係にあった事から婚約を望まれたのは有名な話だった。
社交界では亡き友人の願いを叶えるべく婚約したと噂をされていたのだが。
「虫も殺さない目をしてながら、アイツもやるな」
「ああ、高位貴族でもここまで酷い事はしないな」
「慰謝料も払わず謝罪もなかったらしいな…俺だったら前婚約者の切るはずの花嫁衣装を恋人なんて無理だけどな」
「それがその花嫁衣装なんだが、恋人に合わせて作ったらしいぜ?」
「うわぁー…カナリア嬢が哀れに思えるな」
噂は酷くなり、カナリアはあくまで婚約者として完璧な振る舞いをしていた。
完璧するがゆえに劣等感に苛まれたランドルフはカナリアに仕返しと言わんばかりに土壇場で婚約破棄を突きつけ社交界からも、王宮からも追放されるように仕組んだという噂は信憑性が高かった。
ランドルフに対する非難は日に日に酷くなり、社交界から冷たい目で見らえるようになった。
これまで懇意にしていた友人は避けるようになり。
キャスティ商会を追い出されたエミリーは父親から縁を切られる事になった。
「二度と顔を見せるな。汚らわしい」
「お父様!」
元より妾の子として邸内に居場所はなかったが、今回の事で立場は更に悪くなったのだった。
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