婚約者は愛を選び、私は理を選んだので破滅しても知りません!

ユウ

文字の大きさ
24 / 115
第一章

23被害者

しおりを挟む




本来なら慰謝料の支払い義務はランドルフかその親であって、兄であるエスターが取るのはおかしな話だったが、手紙には謝罪とこれまでの無礼が丁寧に書かれていた。


「既にエスター殿はオイシス家との縁を切っている」


「私はこんな事望んでいません」


カナリアは、仕返しを望んでいなかった。
ランドルフには複雑な思いを抱ていても、エスターが何故社交界から追い出されなくてはならないのか。


「これは推測なのですが」

「エンディミオン様…」


「責任感の強い方ならば解ります。もしや奥方…エスター殿の奥方と何かあったのでは」

「考えられます」


ミリアが聡明で貞節な性格なのは解っている。
今回の事を聞いて慰謝料を払わず謝罪もしない事に異論を唱えたのは安易に想像できる。



「ミリア様…」


「カナリア嬢、お二人は良き方なのですね。立派です」

「はい」


二人共責任を取る為に自身の財産を投げうつ覚悟にエンディミオンは感銘を受けた。


「商人は利益を優先します。ですがそれは三流のやり方です。一流は違います。信頼はお金で買えません」

どんな状況でも相手の信頼を守る。
一流の商人の振る舞いだったのだから。


「ただ、欲が少なすぎる」

「はい」

「人間は窮地に追い込まれると本性を出します。この状況下でもこのような振る舞いができる人間は少ない。なのに惜しいです」

「…と申しますと」


「奥方のご実家はどのような事をなさっておいでですか?」

「商売をされております。主に器…食器などを。中には芸術品やサロンもされていると」

「すると他国とも繋がりが?」

エンディミオンは笑みを浮かべる。
先程のまでの事を聞き、商人としての心得と人としての責任の取り方を理解している。


「アンデス殿にお願いしてお二人をスカウトできませんか」


「え…」

「我が国には商人は多くいますが、美術品を扱える商人は少ない。特に目利きできる者は貴重なのです」


もし二人を国に連れて帰り、王族の元に置ければ。


「それは良いですわ」


「おいお前…」

「既にオイシス家とは縁を切っているのです。でしたらミリア様のご実家に連絡をして、話をすればいいのです」


アリエルの言葉にアンデスは頭を抱える。
エスターの人柄は熟知しているがそう簡単に事が運ぶとは思えない。


障害も多いのだが。


「お二人は未だに罪の意識があるはずですわ?そこを利用するのです…ある程度脅しをかければよいのです」

「おい…」

「表向きは国外追放。社交界では弟の代わりに罪を被り責任を取った…社交界では彼等に同情が集まるでしょう」


アリエルはオイシス家が既に社交界で四面楚歌状態である故に親族や関係者も火の粉を被る事を解っていた。

国を出た方がずっといいとも考えていたが、責任を取って国外追放という形を取れば周りからの非難はいくぶんか和らぐ事を考え、逆にランドルフの立場を更に悪くしようと考えたのだった。


しおりを挟む
感想 136

あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····

藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」 ……これは一体、どういう事でしょう? いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。 ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全6話で完結になります。

【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜

早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。

あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?

しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。 そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。 第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。 周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。

〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。

藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。 バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。 五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。 バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。 だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 感想の返信が出来ず、申し訳ありません。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。  それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。  婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。  その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。  これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。

私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。

百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」 妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。 でも、父はそれでいいと思っていた。 母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。 同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。 この日までは。 「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」 婚約者ジェフリーに棄てられた。 父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。 「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」 「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」 「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」 2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。 王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。 「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」 運命の恋だった。 ================================= (他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)

処理中です...