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第一章
25国母
しおりを挟む話しは少し遡る。
カナリアが王宮に辞職を願い出た後の事。
「え?彼女をお妃に?」
「はい。お許しいただけませんか」
エンディミオンはカナリアに妃になって欲しい事を告げた後、直ぐに行動を移した。
「私はこの国に来た本当の理由は女官を探す名目で妻を探してました。是非カナリア嬢を妃に欲しいのです」
「まぁ、なんて事でしょう」
「うむ、エンゼル王国とは今後とも親しく付き合いたいと思っていた」
国王も乗り気だった。
そもそも、オイシス家との婚約は渋々許したようなもので、本来ならば伯爵以上の家に嫁がせたかったのは本音だ。
「しかし他国となるとエドバードが寂しがるだろうな」
「そうですわね。ですが王族の仲間入りを果たせばお付き合いは続きますわ」
王太子エドバードは物心つく前からカナリアが傍で侍女っとして世話をしていた。
女官となった後もエドバードはカナリアを頼りにしていたのだ。
「今回の事に関してはエドバードは相当怒ってましたの。男女関係の事ですから口を挟むのはどうかと思いましたが」
「王宮勤めを辞職させるほど追い詰めるとは許しがたい…いや、ランドルフの奴は何様だ。男爵の令息でしかない癖に。女官を何だと」
唇を噛みしめる二人はカナリアの辞職を何とかして止めたかった。
侍女は多くいても女官の数は限られている。
自分の勝手で簡単に婚約を破棄するだけでも不敬罪になる。
その後国王に何の詫びもなかった時点で無礼なのに、カナリアの為に用意した花嫁道具も奪うとは許されない行為だった。
「私はこのままでは済ませる気はありませんのよ」
「当然だ。オイシス家は王家に逆らったのだからな」
「それはようございました。私が求婚した事でお二人にもご迷惑となるかもしれないと思いまして。何よりカナリア嬢は王家に泥を塗るぐらいならば出家も辞さないと」
「まぁなんて事!まだ若いのにダメよ」
「そんなことは許さんぞ」
ウィスター家はこれまで王家の為にどれだけ尽くしてくれたか解らない。
だからこそ二人は出来る限りのことはしたかった。
「婚約の為に早い内に我が国に来ていただかなくてはなりません。その間に誰かに知られ噂を流されては…」
「大丈夫ですわ。私にお任せを」
「ああ、案ずることはない」
国のトップである二人が協力してくれたおかげで手続きはスムーズに済んだのだった。
「まぁ、こんな感じですね」
「なんとお仕事の早い事」
一部始終を聞かされ驚くカナリア。
段取りが良すぎて言葉を失うのだが、そのおかげですんなり許可が降りたのだった。
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