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第一章
27船旅
しおりを挟む夜に王都を出て隣国エンゼル王国に向かう手筈になっていた。
それまで二人は悠々自適な旅を楽しんでいた。
「私は殿下の付き添いで国を出たのは数回でしたので」
「そうでしたか。私は公務以外に慰安旅行で他国に来ていたんです」
「慰安旅行…」
宰相という職種故に苦労が多いのは解っているつもりだった。
「いや、公務は問題ないんだ」
「公務ではないのですか」
「私の母は、少々元気が良すぎて…未だに政権を持っている。国王である兄よりも影響力は強く」
「存じております」
他国にも強い影響力のある女帝と呼ばれ恐れられている。
引退した後も恐れられているのだが、問題は未だに元気すぎる所為だ。
「引退しても様々な改革をされる母は衰えを知らず…いや、日に日に元気になっていて」
「そうだったんですか」
「まぁ他国は母を恐れて手は出せないのだが」
その分苦労が多いのだった。
「レオンハルト様の奥方様は」
「ああ、兄上の奥方は大人しい性格の方です。元は侍女で王女の教育係だった方です」
「まぁ」
もしかして自分と同じような立場だったのかと思うと。
「補足するが義姉は君とは違い両親の愛情には恵まれなかった。継母と義姉が性悪だったからな」
「え…」
「まぁシンデレラストーリー的なものだ」
ざっくりと説明するとかなりのロマンス満載で兄夫婦の事を話された。
「同じなのは婚約者が義姉に惚れたたが、後で捨てられる的なものか…兄の立場を知って言い寄って来たな」
「最低ですね」
「ああ、だからこそ私は法律で守られるべき人は徹底して守りたい。貴族同士の婚約も平民同士の婚約も不義を働いた者は被害者に出来るだけの償をさせたい」
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「万国共通で女性の人権が無さすぎる」
「はい」
「我が国は母がいる故にまだマシだがべきだが、今のままではダメだ」
「私もそう思います」
男尊女卑のままでは生き抜けない。
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「そして貴族が税を払わない時代も終わるだろう。身分絶対主義も」
「はい、甘い汁だけを啜る天下りの元大臣等を野放しにする事で国の税金を無駄に使うなど論外です」
税金とは国民が国に治める血と汗の結晶だった。
貴族達が無駄に贅沢した品々は国民がどれだけ苦労してか知りもしない。
「出せないなら」
「出させるように持って行きます」
食事をしながらも二人は仕事の話になっていた。
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