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第一章
29空っぽの邸
しおりを挟む社交界で噂が流れ嫡男を無理矢理追い出して当主の座についた噂が流れ、これまで順調だった事業は既に傾きつつあった。
「申し訳ないが、オイシス家との関係は終わらせてほしい」
「今後は取引は…」
「そんな!何故ですか」
ランドルフはエスターがいなくなっても事業を続け家を守るつもりでいた。
これからエミリーと一緒に頑張ろうと再出発を決めたが、これまで懇意にしていた商人や貴族から縁を切られてしまった。
「何故?どうしてかなんてわからないのか」
「オイシス家はもう終わりだ」
「エスター殿がいない以上は…」
先代が病になり若くして当主を務めたエスターは誠実だった。
商人にしては真っすぐすぎて足りない部分も多いかが打算が少ないエスターを慕う者も少なく無い。
実際、古くから仕えていた侍女もエスターに着いて行きった。
他にも辞表を出した使用人も少なく無かった。
「待って、これからランドルフに」
「彼に何ができますか」
「え?」
「私達は商人は信用第一、信頼できない人間と仕事はできない」
婚約破棄をした当初はまだここまで厳しい態度を取らなかった。
なのに何故今さらと思ったが、ライアンは仕組まれたのだと思った。
「ウィスター夫人に脅されたのね。それで…」
「なっ…まさかカナリアが腹いせに泣きついたのか」
ライアンの言葉に続きランドルフも失言をした。
「なんと愚かな…」
一人の商人が放った言葉にライアンは笑みを浮かべる。
(そうよ…)
愚かだと言った言葉を勘違いしたのだ。
「捨てられた腹いせにこんな愚かな嫌がらせをするなんて、婚約破棄になってよかったわ。性悪だわ」
「母上…」
「婚約破棄になって当然よ。でもこんな陰湿真似をするなんて…」
ライアンは全て悪いのはカナリアで復讐にこんな非道な真似をする女だと好き勝手言い放つが。
「愚かと言ったのは貴方達ですよ」
「は?」
「まさか、貴女の本性がそれですか」
商人の一人が睨む。
「カナリア嬢は関わっていません。むしろ貴方達を責めるような事一言も」
「そんな…」
「貴方達と手を切る事を決めたのは私自身、エスター殿は律儀だが、ランドルフ殿は信用できない。長年婚約した女性を傷物にして一切の謝罪もない最低な男なんて」
「なっ…」
「あんまりですわ!」
ランドルフを責める商人をライアンは睨むも。
常識的に考えれば正しいのはどちらか明らかだった。
「ランドルフ殿は、婚約破棄をした後になカナリア嬢から女性の矜持を傷つけ生きる希望を奪っておきながら彼女の財産を奪ったではないか」
「そんなつもりは」
「ではなぜ、新居や花嫁衣装まで奪ったのだ…ウルリーケ様は申しておられましたぞ?カナリア嬢の為に用意した調度品や寝具までもむしり取られたと」
「え…」
新居に用意されている調度品は贈り物だと聞いていたが、ウルリーケからの贈り物だっとは知らなかった。
「挙句慰謝料を兄君に支払わせて兄君を追い出す。そんなに外道とは一緒に仕事は出来ない」
「社交界のみならず商業ギルドでも貴方の評価は最低ですよ」
「二度と会う事はないでしょうが」
冷たい視線と言葉を投げかけ彼等はそのまま背を向けて去って行った。
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