33 / 115
第二章
2女王陛下
しおりを挟むセラフィーヌ・エンゼル。
長い間女王陛下としてこの国を守り続け、未だに男尊女卑が強い中敵国に一切の弱みを見せなかった事から敵国には女帝と恐れられていた。
未だにその影響力は強く、エンゼル王国に攻める事ができないのは、女帝を敵に回すのがどれだけ恐ろしいのか理解しているからだった。
「遠路はるばるようこそ」
「はっ…はい」
あの後、セラフィーヌに招かれてお茶会に誘われた。
「本当なら女子会といきたかったけど」
「女子会?」
「何か文句でもありまして?」
「ありません」
笑顔ながら冷たい瞳に射抜かれエンディミオンは言葉を飲み込んだ。
「まったく、息子達はどうしてこうもダメダメなのかしら?レオンハルトも呆れていたけど、エンディミオン。貴方はもう少しマシだと思ったのに」
「そこまでいいますか」
「お黙りなさい。貴方が私が視察に出ている間に帰国する魂胆は丸見えですわ。だから通常の視察を早くしたのです」
「母上、大事な外交ですよ」
「この私が脅せば逆らう国があるとでも?少し脅せば簡単ね」
堂々と他国との大事な外交の場で脅したという母に眩暈がする。
「何時まで経ってもフラフラしている貴方がようやく婚約者を連れて帰国となれば、どんな手を使っても帰国するに決まっているでしょう?」
「母上…」
泣きそうな顔をするエンディミオンは今すぐこの場から逃げたかった。
「こんな馬鹿息子ですが頼みますわ。まさか、カーラのお孫さんが来てくださるなんて」
「え…」
「これ以上の縁談はありませんわ」
「王太后陛下、祖母をご存じなのですか」
カーラ・ウィスター。
アンデスの母であり、カナリアの祖母に当たる。
ウィスター家が子爵を賜る事になったのはカーラの功績が多かった。
「カーラは私の親友ですの。彼女が留学に来た時に知り合ったのです」
「知りませんでした」
「そうでしょうね。秘密にしていたのでしょう」
懐かしむような表情をしながら楽しそうに思い出話に花を咲かせる。
「昔から優秀だった彼女は男だったら宰相にもなれたでしょうね」
今よりもずっと女性の地位が低く、女性が王宮仕えはできても文官になれるのは難しかった。
しかも平民では尚更だった。
今以上に差別と偏見が酷かった時代だった。
「カーラは本当に優秀で私は良く勉強を見ていただきましたの。そうそう乗馬も剣術も…昔は大人しくて内気でしててね」
「なんの冗談です」
「エンディミオン、今すぐ稽古をしますか?」
「ご遠慮します」
暴れん坊女王とも呼ばれるセラフィーヌの過去をどうしても信じられないエンディミオンだった。
78
あなたにおすすめの小説
あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」
「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」
「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」
「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」
あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。
「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」
うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、
「――俺のことが怖くないのか?」
と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?
よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?
しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。
そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。
第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。
周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。
〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。
藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。
バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。
五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。
バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。
だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。
二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる