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第二章
5兄と弟
しおりを挟む女子会をするからと追い出された二人は、寂しく執務室でお茶を飲んでいた。
「何故こうなる」
「私の気持ちが解ったか」
新婚してすぐに立て続けに邪魔をされて妨害を受けた経験者の言葉だった。
「だが、母上には感謝だ。最近アレーシャは体調が悪くてな」
「あの噂ですか」
「ああ」
二人の夫婦関係は至って良好で、嫁姑関係にも問題はない。
ただ、周りが良くないのだった。
「まだ結婚して一年少しでしょうに」
「年が明ければ二年だ。そろそろ世継ぎはと周りが騒いでいる」
「猫の子じゃないんだ」
心無い言葉。
特に世継ぎができる兆しが無いなら早々に側妃をという声が出ているが。
「馬鹿か、結婚して一年半で焦り過ぎだ」
「欲しいからポンポンできるはずがないだろう。まぁそれを理由に貴族派の連中がくだらない暗躍をしているのだろう」
「もしくはアレーシャの傍付き侍女を増やして、兄上の側妃にと考えているのだろう」
レオンハルトは堅物だった。
例えアレーシャの傍仕えの侍女が誘惑しても振り向かない。
だが、噂だけを流してしまえばどうなるか。
「噂とは本当に恐ろしいからな」
「ああ」
社交界では噂とは命取りになる。
身の潔白が明らかでも噂で罪を作ることができるし、弱みを見せる事となる。
「アレーシャは気丈に振舞っているが噂がな」
「くだらない。まだアレーシャは17歳だ。子供が出来にくいなんて噂を流すとは」
「先日貴族派の伯爵夫人は子供を二人目出産したらしい」
「体の弱い子供だがな」
最近貴族の間では良い血筋を保つために近親婚や若すぎる妻を持ち子を産ませることが増えている。
「あの変態男爵は13歳の令嬢に手を出したが…」
「令嬢は出産と同時に寝たきりだ。無茶な出産に男を欲しいからと変な薬を飲まされたそうだ」
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そんな浅はかな考えをする貴族が多すぎて頭を抱えたくなるエンディミオン。
レオンハルトも子供を見栄の為に使うなんて言語道断だった。
「私は元気な子が生まれるならそれでいいんだがな」
「ああ…カナリア嬢は聡明だ。それに多くの侍女の面倒も見ていた事から良い知恵をくれるかもしれない」
「カナリア嬢か…名前で呼ばないのか」
「余計なお世話だ」
婚約して日も浅く、未だに遠慮のあるエンディミオンにレオンハルトは少し呆れながらも。
苦労が多い弟が幸福になれる事を祈ったのだった。
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