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第二章
6嫌味
しおりを挟む三人でお茶会をする中。
最初こそは顔色が良かったアレーシャの笑顔に影があるのを感じた。
視線の先には若い貴族がヒソヒソ話している。
「アレーシャ、気にするのではありません」
「はい」
顔には出さないようにしているが、カナリアも直ぐに解った。
(なんて無神経な)
聞こえないように話しているが聞こえていた。
「先日は男爵夫人がもう一人」
「侯爵夫人もねぇ…なのに」
遠目からアレーシャをちらちら見ながら、名前は出さなくとも解る。
精神的に追い詰めようという魂胆が見え見えだったからこそカナリアは黙っていられなかった。
「大変ですわね。お若くして出産なんて…若すぎる出産をした方は体を壊して亡くなられたケースが多いですから」
「えっ?」
「我が国では結婚の年齢は16歳以上を定められているのは過去に幼過ぎる出産で早く亡くなられた方、生まれたお子が病を持っていた事が多くて…大丈夫かしら」
「「なっ…」」
噂を流していた夫人は絶句した。
「若い方が梅毒のリスクは少ないですが、体が成熟していない状態では生まれたお子様も心配ですわ…我が国では理想的な出産は二十代前半から後半ですわ…そうでなければ親子ではなく兄弟姉妹にも見られて揶揄われますし…あら失礼しました」
「なんて事を!」
「私達を馬鹿にしているの?」
「はい?私は世間話をしただけですが」
カナリアの言葉をしっかり聞いていた夫人達が睨むも笑顔で返した。
「実際他国でも若すぎる出産で命を落とされた方がいましたし…やはり出産は慎重に行うべきですわ。お知り合いにもご注意を」
「ご忠告どうも!」
「なんて無礼な」
怒って二人は去って行ってしまう。
「口ほどにもございませんわね」
「カナリア様…」
「見事ですわ。流石カーラの血筋」
感謝するアレーシャとは反対に良くやったと拍手を送りセラフィーヌだった。
「先ほどの話は真実ですわ」
「え!」
「17歳未満の出産で命を落とされたケースは少なくありません。それも男の身勝手で行われた行為でです。他にも問題は生じています」
他国でも愛人を多く持ち、若い娘を好む貴族によって早すぎる出産をして亡くなった少女。
命は繋ぎ止めたが病にかかってしまった女性も存在する。
「カーラがアンデス様を出産したのは二十代後半でしたわね」
「そう…だったのですか」
「私も詳しくは存じませんが、母が私を出産したのは平均より遅かったのは確かです。結婚して十年後でした」
「まぁ…十年」
カナリアの話を聞くと焦っていたアレーシャは恥ずかしくなった。
「プレッシャーを与えてしまっているのは私の力不足ね」
「そんな!」
「いいえ、王太后陛下の所為ではありません。そもそも出産で競争する事が間違いです。中には子ができない方も多くいらっしゃいます」
女の価値は子供を出産するだけだと考えている男側の常識にも問題があると思っていた。
「そうね。社交界の常識はおかし過ぎるわ」
「はい」
セラフィーヌも未だに男尊女卑が強い社交界を正す事が出来なかった事を悔いていた。
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