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第二章
7アドバイス
しおりを挟む女が攻撃する時は決まって自分よりも弱い人間が多いがその逆もある。
「彼女達はアレーシャ様が怖いのでしょうね」
「私が…ですか」
「旦那様は王太后陛下のお産みになった方です」
もし、アレーシャが妾腹が生んだ元王子だったならまだ風当たりはマシだったかもしれないが、レオンハルトは前国王とも正妃との間に生まれた第一子だ。
王位継承権を返上しているが、これまでの功績を認められ国の英雄とたたえられ大公の地位も与えられているならば、アレーシャを妬むむのは多い。
「表立ってアレーシャ様を糾弾できない。だけど嫉妬心が抑えられない。だから攻撃をなさるのでしょう。貴女様が恐ろしいのです」
女の敵は女という言葉を嫌という程知っているカナリアは、虚栄心のある人間ほどこう言った行動に出る。
「弱いから貴女を傷つけ貶めようとされる」
「私は…」
「ですが、そんなくだらない連中に耳を貸す必要はありません。貴女の心を傷つけ喜んでいるような歪んだ考えを持つ人間には笑顔で返すべきです」
戸惑うアレーシャにはっきりと告げる。
「無礼な物言いをお許しください」
「いえ、そのような」
「ですが、私は社交界で優しい人は消されるのを見て来ました。消した人間は罪悪感もありませんでした」
侍女時代から女官時代。
ずっと見て来たから知っていた。
野心を抱かない令嬢が嫉妬心によって消されたことを。
子供ができない事を悩んでいる夫人にとどめを刺そうとする人間を。
「人の弱みに付け込み、傷ついた心を踏みつける人間に負けないでください」
「私は…弱すぎたのですね」
「いいえ、それは貴女が優しいからですわ。他者を踏みつけられないからです」
カナリアは思った。
純粋で優しく清からな心を持っているアレーシャを好ましく思う。
いい意味でも悪い意味でも人の闇を知り過ぎている自分とは正反対だった。
「きっと、そんなお優しいアレーシャ様だからこそレオンハルト様は惹かれたのでしょう。私は既に捨てています」
純真無垢なままでは女官は務まらない。
必要とあれば、卑怯な真似をするし、容赦もしない。
王家を守るための盾として、時には剣となる為に捨てた物だった。
「社交界に出る女性の多くはそう言った物を捨てなくては生きて行けないでしょう。ですが捨てなくて済むなら」
「ありがとうございます」
アレーシャのように純粋な心を捨てないで欲しいとも思う。
「そうですわよ。無理に冷酷になる必要はないわ。貴女には貴女しかできない事があります」
「そもそも汚い仕事も適材適所ですので」
(ああいう輩には後でお仕置きが必要ね)
誰に何をしたか解っていない彼女達に後で仕返しをしてやろうと思ったが、カナリアが手を下す前に相応の罰を受けることになるのだった。
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