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第二章
26天と地の差
しおりを挟む完璧な結婚式を行ったカナリアとエンディミオンが他国でも噂になった。
優秀であるがゆえに、縁談に恵まれなかった王妃の女官。
かたや、王族の中でも優秀で血筋も立派な故に釣り合う婚約者がいなかったエンディミオン。
二人の結婚は女神が決めたかのように運命的で、ロマンス小説にもなり。
演劇でも取り上げられるようにエステリア王国では人気だった。
婚約者に捨てられながらも誰も恨むことなく誇り高く振舞った聡明で美しい女官はその才能を望んだ隣国の王子に見初められ、後に国の政治にも携わり国民にも慕われ幸福になったと。
対する悪役の元婚約者とその恋人は不幸になって最後は没落した後に日陰で過ごす内容だった。
「何よこれ…ありえない!」
オイシス家にて一冊の本を床に叩きつける。
「エミリーどうしたんだ」
「どうにもこうにもないわ…この本が匿名で送られてきて」
「これは…」
社交界に出ることが無くなったランドルフであるが働かなくては食べて行けないので商人として働いているので流行にはそこそこ詳しかった。
最近下町ではある小説が人気になっている。
その小説が黄金の女官というタイトルだった。
内容を読めば誰がモデルになっているかなんて一目瞭然だった。
主人公がカナリアで相手役がエンディミオンだと解るが、内容が色々ぼかしているのでクレームをつける事は出来なかった。
相手は駆け出しの作家であるが、既に名前ばかりの貴族のオイシス家が苦情を入れれば小知井らの身が危なかった。
出版会社も大手であるので手が出せなかった。
「どう見てもこの小説は私達へお嫌がらせよ!町でも私を見てはヒソヒソ何か言っているわ」
「気のせいだ」
「そんなことないわ!こんなの耐えられない」
夢にまで見た結婚式は最低な結果になり、新聞でも報道された挙句、噂は酷い物だった。
人の道を外れた事をした結果だと言われている。
例え真実の愛の為と言えど、周りを不幸にしてまで自分の愛を優先して良いという理由にならない。
「自意識過剰ね」
「母上…」
「お母様」
ヒステリックに叫ぶエミリーを宥めようとする中ライアンが冷めた表情で言い放つ。
「誰も貴女など気にしないわ。強いて言うなら道を踏み外した愚か者としか見ないわね」
「そんな言い方あんまりですわ」
「何時までも悲劇のヒロインぶって仕事もせずにぶら下がっている気なの。金食い虫だわ」
「お止めください母上!どうしてそんな酷い事ばかりおっしゃるのです」
ランドルフはエミリーを庇うが、ライアンは責める言葉を止めようとしなかった。
過度に庇い続ける息子に対しても不愉快な気持ちになり、怒りの矛先はランドルフにも向けられてしまうのだった。
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