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第三章
1嵐の前触れ
しおりを挟む冬が過ぎて春が来た。
安産だったミリアは元気な子供を出産した。
元気な女の子だった。
男の子ではないのは残念だったが、エスターは元気な我が子を見て喜びお祝いをした。
その数か月後にアレーシャは元気な男の子を出産し、母体共に安全だった。
「本当に良うございました」
「ああ」
ミリアの出産もそうだがアレーシャの事も心配だったので安堵しているカナリアは全てミリアのおかげだと思っていた。
「今でも出産は命がけで、子を産むと同時に亡くなるケースは多い」
「出産の環境も問題だからな」
不妊治療の為に投了する薬に耐えるのは体に負担が大きく辛かった。
アレーシャも治療中は大変だった。
それでも子供が欲しいと思う女性は多い。
「不妊治療のための環境を充実させなくては」
「ああ、出産する女性の為にも」
今でも子供はできて当たり前という考えをする者が多い。
女性がどれだけの負担があるか、子ができない女性は不良品だという考えを変えなくてはならない。
「ミリア殿はその後どうなんだ」
「はい、今はお休みをいただいているのですが…」
先日里帰りを終えて王都内に構えている邸にいるのだが。
「どうしたんだ?」
「それが疲れが出たのか、体調を崩されたようで」
「そうか…心配だな」
普段は気丈に振舞っているが、不妊治療を新たな医療として導入したが、負担が大きかったのではないかと思う。
そんな折、ミリアが鬱で寝込んでしまったと報告を受けたのだ。
「エスター様!」
「申し訳ありません。お二人共…」
アルソート家に訪問するとミリアの両親が傍で看病していた。
「一体どうされたのです」
出産後は元気だったし、休みは取りながらも無理ない程度に出来る仕事をしていた。
「アレーシャお義姉様も心配されてましたわ」
「本当に申し訳ありません」
ミリアの母親は頭を下げるばかりだった。
「責めているわけではないのです。ミリア様がここまで病むような事があるなら…」
カナリアはミリアが育児の疲れでここまで追い込まれることは考えにくいと思った。
出産時も母親が傍で立ち合い、その後は侍女の助けもあった。
「私は出産した経験はありませんが、ここ二週間ほどミリア様のお元気がないのは聞いております」
「それは…」
「エスター殿。貴方達は私達にとって大切な友人で戦友です。立場が違えど…」
「どうかお教えくださいませんか」
気丈なミリアを苦しめているのは何か。
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