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第三章
16新たな就職先
しおりを挟むエンゼル王国にて手厚く迎えられたセリア達。
特にミリアの妹もあってか、アレーシャはセリアを温かく迎えた後にレオンハルトの傍付きの侍女に迎えた。
本人曰く。
若い独身女性を侍女に迎え入れるのは危険が伴うとの事だった。
子持ちで離縁した女性である方が都合が良い。
不安要素はあるが、セリアが間違ってもレオンハルトに懸想したり、勘違いをする事はないから安心だと判断した。
何より、予測がつかないレオンハルトの侍女は長い付き合いのユリアでも困難だった。
対するセリアは苦労している事から。
ある程度の無理難題を突き付けられても同と言う事はない。
それどころか。
「旦那様、これより一週間はお休み返上でお願い申し上げます」
「は?何でだ」
「公務が滞っております。予定通りこなしていただけないならしばらくお食事はピーマン料理です」
「ぐっ…」
一国の英雄を手のひらで転がし、これまで扱いが難しかったレオンハルトを仕事に戻す手腕は見事だった。
「父君がデスクワークも出来ぬとは、若様はなんとお思いになるでしょうか」
「解った。だから余計な事は言うなよ」
「ええ、旦那様がちゃんとしてくだされば申し上げません。予定通り公務が終わりましたらいくらでも家族サービスをなさってくださいませ」
「ああ」
セリアはこれでも厄介な夫に長年耐え忍んだ忍耐の強さを持つ。
レオンハルトがデスクワークが苦手なのは解っていたが、アレーシャは生まれたての息子を餌にして仕事をさせていた。
実にスパルタであるが…
「旦那様」
「何だ」
「若君のおくるみはこの色でいかがでしょう」
「むっ…白か」
「白が一番よろしいかと。手触りも最高級の物を使っております。肌にも優しゅうございます」
おくるみを見せると傍には型紙が置かれているのを見るレオンハルト。
「これは?」
「赤ちゃん用の帽子です。外に出る時は温かくしないと風邪を引きます」
セリアはミリアと異なり繕い物が得意だった。
芸才はあるのだが、繕い物や編み物が得意ではないミリアとは正反対にこうしたモノ作りはプロ級だった。
「その帽子、俺にも作れないか?」
「え?旦那様がですが」
「ああ!」
見るからに手先が器用とは思えないが、我が子の為に何かしたいという気持ちはいた程伝わって来た。
「解りました。お任せください」
「頼むぞ!」
二人は手を取り合い編み物の特訓が行われたのだった。
その結果、レオンハルトがカミングアウトした噂が流れ、エンディミオンを悩ませるきっかけになるのだったが、その一方でセリアの作るベビー服は質も良く貴族の間でブームとなり、店を持つようになるのだった。
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