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第三章
26借金取り
しおりを挟む毎日のように聞こえる借金取りの声。
割れる窓ガラスの音に、近所からのクレーム。
「金を返せ!」
「借金を踏み倒すな!」
居留守を使っても借金取りは変えることなくオイシス家に石を投げて、誹謗中傷の張り紙が貼られていた。
既に援助してくれる人間はおらず、敵ばかりの中ライアンは部屋に籠っていた。
「どうして…クリスティン様からはまだ手紙が来ないの?」
日に日に借金取りの嫌がらせは酷くなる。
昼夜問わず嫌がらせは続き、ライアンは部屋に閉じこもっていた。
「もういや!こんな生活耐え切れない!」
狭い家なので何所にいても聞こえるエミリーの甲高い声にイラっとする。
「煩いわよ!」
「なんとかしてよ!ランドルフ…ランドルフ!お母様が私を殴ろうとするわ!助けて」
「止めなさい!」
泣きながら叫びライアンを悪者にしようとするのを止めるも。
「ランドルフ?」
「えっ…どうして来てくれないの?」
これだけ騒いでいるのにランドルフは部屋から出て来る気配もなかった。
「ランドルフ?何処にいるの!」
部屋を探してもいなかったが、おかしい事に気づく。
「まさか!」
ダイニングに向かい、僅かなお金が入った袋を見ると空っぽだった。
「そんな!」
「ランドルフを何処に隠したの!」
「隠すわけないでしょう!」
床に落ちている紙をエミリーの顔に叩きつけるライアンは睨んだ。
「痛い…何?」
「逃げたのよ」
「え?」
紙を手に取ると。
「もう耐えきれません。出て行きます…はぁ?」
簡単に書かれた書置きに驚く。
「私を捨てたの?何で」
「それはそうでそうね、働きにも出ない金食い虫だもの」
「寄生虫の母親の所為でしょ!何時までも貴族の生活にしがみ付いて」
「何ですって?」
「何よ!」
エミリーは既に姑として敬う気なんて毛頭なかった。
嫌味ばかり言って偉そうにしている他人としてしか思っていなかったのだから。
「ランドルフが家を出たのはアンタの所為よ!」
「姑に向かってなんて口の利き方よ」
「寄生しているだけでの女じゃない!」
「それはアンタでしょ!」
二人の罵り合いは隣近所までしかっかり聞こえ、狭い村では一瞬にして噂が回った。
働かない母と妻に疲れ果てたランドルフは耐え切れず失踪した後に彼の姿を見た者はいなかった。
残された二人が誰かに責任を押し付ける以外の事はできなかった。
そして二人の言い合いはエスカレートした後にもみ合いの喧嘩になり、隣人に止められるまで続いたのだった。
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