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第三章
43思惑
しおりを挟むレストラン内に案内されそれぞれ違うメニューを頼む事にした。
「料理長、無理なお願いだけど。いいかしら」
「かしこまりました」
この店では料理長が挨拶に来るスタイルだった。
下町のレストランでは珍しいが、丁寧な接客に、オーナーシェフの人柄にほれ込んで通う客も少なくない。
「ランドルフ!そこは良い。お得意様のテーブルに給仕しろ」
「解りました」
ふてぶてしい態度で愛想笑いもできない。
やる気を感じられずカナリアは深いため息をつく。
「どうするんだ」
「一応変装していますから様子を見ましょう」
同じテーブル席で、お得意様だと告げてあると伝えランドルフの仕事ぶりを見る事にした。
(まぁ、最悪な結果にならない事を願うわ)
先程の仕事ぶりを見て、ここでも真面目に仕事をしているとは思えない。
本人は真面目に仕事をしているつもりらしいが他人は必死さがなく真面目に働く気があるのかと思っているだろうが。
「ご注文はお決まりですか」
「ええ…ではこらの海の幸のコースにパスタのソースは何を使っているのかしら?」
「メニューに書いているある通りですが」
「は?」
ミリアの言葉に耳を疑う。
「メニューにはクリーム風と書かれているでしょう」
「クリーム風と言ってもひとくくりに…」
「はぁー」
今度はため息をつきはじめる。
「注文はこちらでよろしいでしょうか?」
「パスタは薬草無しにしてくれ。苦みのあるものは苦手でね」
「かしこまりました。デザートは」
「オレンジタルトにしてくれ」
「かしこまりました」
淡々と注文を受け、そのまま去って行くランドルフに頭が痛くなる。
「接客がなっていないな」
「ええ、いくら何でもないわね」
受け答え以前にちゃんとしたレストランではまず初めに客の好みを見極め、アレルギーや嫌いな物の確認をしていない。
「失礼します。ワインをお持ちしました」
「ありがとう」
「本日は牡蠣をメインに選ばれておりますので。こちらを」
「まぁ、白ワインじゃないのね」
セットに含まれているワインとは別のこの地のワインを進められる。
「フルーティーなワインは地元のお客様は慣れておられますが、地元ではない方には癖がありますので」
「ありがとう。そちらを下さる?」
「かしこまりました」
ソムリエは一流だった事に安堵するカナリアだが、給仕の仕事をまるで理解していないランドルフはこの後も失態を続けた。
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