110 / 115
第三章
50最期の仕上げ
しおりを挟む完全に憔悴したランドルフだったが、この程度住むほどカナリアは優しくなかった。
「離しなさい!」
「ちょっと止めてよ」
黄色い声が響く。
「この声は」
「ご名答ですわ。最後に素敵なプレゼントをお持ちしましたわ」
「子爵夫人!」
そこに現れたのはアリエルだった。
「今はウィスター伯爵夫人ですわ」
「は?」
「まぁ、貴方には関係ありませんが。それよりも貴方の大好きな母君と奥方を連れて来て差し上げましたわ・囚人ですが」
「は?」
扇で一方を指し示すとそこにはお粗末な服装をしたライアンとエミリーが抑え込まれていた。
「どうして…」
「あら?どうしてなんて解っているでしょう?最後に家族と話をさせてあげようと思ったのに」
「この性悪女…痛い!」
ランドルフ同様に身の程を弁えずに騎士に抑え込まれているにも関わらず暴言を吐いた事で更に押さえつけられる。
「本当に親子そろって見苦しいわね」
「カナリア…」
「控えろ!誰に物を言っている!」
「きゃああ!」
頭を叩きつけられ押さえつけられるライアンは懲りなかった。
「エスター!何をしているの…助けなさい」
「そうです。お義兄様…」
ライアンとエミリーはエスターに助けを求める。
「ミリア、何をしているの…助けなさい」
「そうです。何をボーっと見て…」
二人は散々ミリアを侮辱し傷つけて来た事を忘れ自分達を助けろと言うが。
「馴れ馴れしく呼び捨てにしないでくださる?どなたか存じませんわ」
「何処までも厚かましい。私達は他人です」
「なっ…なんですって!」
「どうして!」
普通に考えてありえない。
ミリアを冷遇し悪女に仕立て上げ子供を奪いセリアを苦しめて起きながら助けろだなんて非常識すぎるのだ。
「私はもうオイシス家とは無関係ですわ」
「ええ、無様な姿をこれ以上見るに堪えない。血は繋がっていようとも他人です。汚らわしい」
これが実の母の姿だと思うと不愉快だった。
「ですが良かったではありませんか」
「何を…」
冷たい目で笑うエスターは皮肉に告げた。
「愛する息子と死ぬまで一緒で、死ぬまで罪を償いランドルフと共に支え合って生きればいいでしょう」
「そんな…」
「二度と会う事はありません」
僅かな情までも消えてなくなっていたエスターは最後の別れの言葉を言い放ったのだった。
38
あなたにおすすめの小説
〖完結〗旦那様には出て行っていただきます。どうか平民の愛人とお幸せに·····
藍川みいな
恋愛
「セリアさん、単刀直入に言いますね。ルーカス様と別れてください。」
……これは一体、どういう事でしょう?
いきなり現れたルーカスの愛人に、別れて欲しいと言われたセリア。
ルーカスはセリアと結婚し、スペクター侯爵家に婿入りしたが、セリアとの結婚前から愛人がいて、その愛人と侯爵家を乗っ取るつもりだと愛人は話した……
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全6話で完結になります。
あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です。
秋月一花
恋愛
「すまないね、レディ。僕には愛しい婚約者がいるんだ。そんなに見つめられても、君とデートすることすら出来ないんだ」
「え? 私、あなたのことを見つめていませんけれど……?」
「なにを言っているんだい、さっきから熱い視線をむけていたじゃないかっ」
「あ、すみません。私が見ていたのはあなたではなく、別の方です」
あなたの護衛を見つめていました。だって好きなのだもの。見つめるくらいは許して欲しい。恋人になりたいなんて身分違いのことを考えないから、それだけはどうか。
「……やっぱり今日も格好いいわ、ライナルト様」
うっとりと呟く私に、ライナルト様はぎょっとしたような表情を浮かべて――それから、
「――俺のことが怖くないのか?」
と話し掛けられちゃった! これはライナルト様とお話しするチャンスなのでは?
よーし、せめてお友達になれるようにがんばろう!
【完結】婿入り予定の婚約者は恋人と結婚したいらしい 〜そのひと爵位継げなくなるけどそんなに欲しいなら譲ります〜
早奈恵
恋愛
【完結】ざまぁ展開あります⚫︎幼なじみで婚約者のデニスが恋人を作り、破談となってしまう。困ったステファニーは急遽婿探しをする事になる。⚫︎新しい相手と婚約発表直前『やっぱりステファニーと結婚する』とデニスが言い出した。⚫︎辺境伯になるにはステファニーと結婚が必要と気が付いたデニスと辺境伯夫人になりたかった恋人ブリトニーを前に、ステファニーは新しい婚約者ブラッドリーと共に対抗する。⚫︎デニスの恋人ブリトニーが不公平だと言い、デニスにもチャンスをくれと縋り出す。⚫︎そしてデニスとブラッドが言い合いになり、決闘することに……。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
あなたが見放されたのは私のせいではありませんよ?
しゃーりん
恋愛
アヴリルは2年前、王太子殿下から婚約破棄を命じられた。
そして今日、第一王子殿下から離婚を命じられた。
第一王子殿下は、2年前に婚約破棄を命じた男でもある。そしてアヴリルの夫ではない。
周りは呆れて失笑。理由を聞いて爆笑。巻き込まれたアヴリルはため息といったお話です。
〖完結〗残念ですが、お義姉様はこの侯爵家を継ぐことは出来ません。
藍川みいな
恋愛
五年間婚約していたジョゼフ様に、学園の中庭に呼び出され婚約破棄を告げられた。その隣でなぜか私に怯える義姉のバーバラの姿があった。
バーバラは私にいじめられたと嘘をつき、婚約者を奪った。
五年も婚約していたのに、私ではなく、バーバラの嘘を信じた婚約者。学園の生徒達も彼女の嘘を信じ、親友だと思っていた人にまで裏切られた。
バーバラの目的は、ワイヤット侯爵家を継ぐことのようだ。
だが、彼女には絶対に継ぐことは出来ない。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
感想の返信が出来ず、申し訳ありません。
二人の妻に愛されていたはずだった
ぽんちゃん
恋愛
傾いていた伯爵家を復興すべく尽力するジェフリーには、第一夫人のアナスタシアと第二夫人のクララ。そして、クララとの愛の結晶であるジェイクと共に幸せな日々を過ごしていた。
二人の妻に愛され、クララに似た可愛い跡継ぎに囲まれて、幸せの絶頂にいたジェフリー。
アナスタシアとの結婚記念日に会いにいくのだが、離縁が成立した書類が残されていた。
アナスタシアのことは愛しているし、もちろん彼女も自分を愛していたはずだ。
何かの間違いだと調べるうちに、真実に辿り着く。
全二十八話。
十六話あたりまで苦しい内容ですが、堪えて頂けたら幸いです(><)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる