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第三章
54風の噂
しおりを挟む騒動があって五年。
エミリーが修道院を出た後に、修道院で出会ったとある青年と出会い結婚したと報告を受けた。
「まぁ…」
「相手は教師だそうだ」
意外な組み合わせだった。
相手は平民であるが、元は貴族の家の家庭教師で優秀故に推薦を受けて地方の貴族院の教員だとか。
偶然を繰り返しながら二人は交流を重ねたと。
エミリーの過去を全て知りながらも受け入れ、エミリーも過去に囚われるのは止めたとか。
修道院を出た後は修道院の院長の紹介で働き始めた服飾店でお針子として働きその一年後、二人は結婚式を挙げた後に子供を身ごもったそうだ。
「幸せになったのね」
「ああ…しかし」
「何かしら?」
エンディミオンは苦い表情をするのを見てカナリアは笑みを浮かべる。
「あの馬鹿男は子供が出来ない体だったのではなくて?」
「カナリア、口に出すな。正直同情はできないが哀れだ」
「そうねぇ?でも、事実だわ」
自分で言うのも何だが、結婚して五年。
カナリアは既に三人目を身ごもっているし、ミリアも二人目を出産していた。
「嫌でもエミリーの噂は流れるでしょうね?」
「ちなみに彼は?」
「知りませんし知りたくもありませんわ。どうせ二度と会う事もありませんもの」
口ではそう言っていたが実際は知っていた。
牢獄でも反省の色が見えない所為でますます立場が悪くなる一方だった。
仕事は真面目にしているが、態度の悪さで地元の住人と仲良くできなかった。
ライアンに対しては論外だった。
島であるので方言が酷く聞き取れず馬鹿にしている事から島の女性陣にも睨まれていると。
真面目に仕事をして、反省の色さえ見せれば環境は変わるのにとアリエルが言っていたのだが…
(人はそう簡単に変わらないわ)
エミリーは更生したがあの二人は一生お互いの足を引っ張り合うのは明白だと思ったカナリアはこのまま自滅しようが知った事ではない。
全ては自分の行いによるものだ。
「でも、膿を消せたことに関しては感謝ですわ」
「まぁな…」
「ですが、まだまだ邪魔者は多いのですから」
「君ならばすべてを潰しそうだよ」
味方ならば心強いと思ったが、ブレーキをかけておかなければ危険と思ったが。
「次の貿易を行いますわ!敵国を脅迫しなくては」
「はは…」
まだまだ苦労は多い。
そしてこうも思うのだった。
今後動かしていくのはカナリアのような女性だろう。
新しい時代が来ると予想したが。
「とりあえず強力な胃薬を用意しておくか」
エンディミオンの苦労が増すのに並行して、薬屋が増やされたのだった。
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