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第二章魔導士の条件
3苦労人の皇子
しおりを挟む「つまりませんわ」
昼休み、リーシアが不足そうに文句を零した。
「仕方ないだろ。メアリは仕事だ」
「放課後でもよろしいのに。折角シェフにコッペパンを作らせたのに」
「おい、宮廷料理人に作らせたのか」
「ええ」
通常宮廷料理人は王族のみ料理を作る。
しかも今持っているパンには紋章がつけられている。
そんな料理人にコッペパンなど論外だったが。
「メアリ様の大好物ですのよ」
「貴族だよな?辺境貴族令嬢はそんなに貧乏なのか」
「移民や負傷した元騎士を受け入れもされてるそうで、質素で慎ましやかに生活されているらしいですわ」
「あっ…」
ユリウスは失言をしたことに気づく。
戦で傷ついた者や宮廷師団に所属していたが負傷して行き場を無くした者達を受け入れているのだから貧しくなるのは仕方なかった。
「それだけではありませんがね」
「ええ…」
王族に使える名ばかりの貴族達が欲望の為に本体は辺境地に回るお金を横領し、尚且つバルセルク家の財を圧迫させるべく動いていた。
しかしバルセルク辺境伯爵は優秀な男だった。
領民が飢えで苦しまないように奔走し、受け入れた移民は百姓が多く不便なた土地で食べていけるように工夫をしてくれたのだ。
例え暮らしが貧しくとも、手を差し伸べてくれたバルセルク家に恩を抱き、忠誠を尽くしてくれた。
利益だけで繋がるよりもずっと強い絆があったのだ。
「バルセルクの民は結束力が強いそうです」
「それだけ慕われているのでしょう…ですが、素晴らしい領主様のお嬢様を悲しませたとなればどうなるのでしょうね?」
「公開処刑だろ?」
リーシアの言葉にギーゼラが不敵に微笑み、遠回しに例の二人の事を語りミカエルも満面の笑みで答えた。
「黒い笑みを止めろ」
ユリウスはかなりの腹黒さと容赦の無さを持っているのを嫌という程自覚していた。
公の場では理想的な王子と王女にダークエルフの姫であるが、敵は徹底的に叩き潰す恐ろしい集団だと言う事を知らない。
(学園の生徒も哀れだな)
外見に騙されている生徒が不憫でならないが、外見だけに騙される方も悪いと思い静観していた。
ただ一人、本当に心から不憫に思ったのはメアリだった。
彼等の裏の顔には絶対に気づいていないのがか哀れに思いながらも、中々戻ってこないメアリが心配になったので席を立つ。
「どうしましたの」
「ちょっと用事が」
「トイレですの?」
「用事だ!」
普段は完璧な王女であるが気心を知れた相手には容赦の無いリーシアに苛立ちながら教室を後にした。
「ん?」
メアリを探しながら校舎に向かうと、慌てる女子生徒とすれ違いになった。
「あれは…」
すれ違いに見た後ろ姿には覚えがあり、その女子生徒を目で追うと。
焼却炉に何かを捨てていた。
それは――。
(あれは!)
メアリの革靴だった。
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