白のグリモワールの後継者～婚約者と親友が恋仲になりましたので身を引きます。今さら復縁を望まれても困ります！

番外編

お転婆王女と苦労人皇子⑥

それからとリーシアはグリモワールを常に持ち歩き、外で話しかける。


「グリモワール、今日は悪人はいないかしら」


「いや、それは違うぞ」


ミカエルは突っ込んだ。
リーシアは大きな勘違いをしていた。


しかしその勘違いを正そうにもリーシアは思い込みは強い。
言ったしても簡単に信じないだろう。


「私、ちゃんと治癒魔法の勉強も頑張ったら白のグリモワールに会えるかしら」


「だから、本が喋るわけねぇだろ」


「あ、開いたわ」


何も反応がなかった青のグリモワールは返事をしていた。


「随分と自己主張の強いグリモワールだな」

「おい、そんな事を言うと」


ミカエルは嫌な予感がした。
ユリウスの軽口でさっきも散々な目に合っているのに。


「ぶっ！」


「だから言っただろ」


「おい、お前達は俺になんの恨みがあるんだ」


青のグリモワールが反応し、またしても攻撃を仕掛ける。


「その内、意思が強くなって、教皇猊下に無礼を働く者に対して罰を与えるんじゃないか？グリモワールは聖書よりも硬くて頑丈で分厚いし」


「こんなのに公の場で殴られたら恥だぞ」


「まぁ、いくら何でも女性を殴るなんて真似はしないだろう」



ユリウスも失言によるものだ。
そもそも慈悲の心が強い初代教皇が作り出したグリモワールが女性に乱暴をするなんてないだろうと思った。


しかし例外が起きるのだった。



「きゃああ！何よこれ！」


「ユフィ！何だこの本は！」


数日後、王都内で同何代の貴族子息、令嬢の集まるパーティーにて問題が生じた。



「おい何とかしろ」


「リーシャ！」


青のグリモワールが勝手に動き出し、特定の人物に暴行を加えていた。


「痛い！痛いわ…何よ！」


「クソっ、呪いの魔導書か！」


一人の少女が青のグリモワールに一方的に攻撃され逃げ、傍にいる少年が剣を取り出すも。


「俺の剣を受けるがいい！」


「アーク！」


まるでお姫様を守る騎士のようだった。



だが…



「俺の剣がぁぁあ！」

「アーク！」


恰好良く決めたつもりがまだちゃんとした訓練も受けていない子供が剣を振り回しても意味がない。



「馬鹿だろ」

「恰好をつけておいて、なんて馬鹿なんだ。恥知らずだな」


ミカエルとユリウスはその光景を見て相当な見栄っ張りだと思った。
助け気はなくただ見ているだけだった。



「そもそも問題なのはダークエルフの姫君を侮辱したのが原因だろ」

「呪われた種族なんて、エルフ族を敵に回す気かよ」


種族を差別したのがそもそも問題だったが、青のグリモワールの前で新たなグリモワールの持ち主を侮辱した事が原因だった。