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24、ヒロイン
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翌日。
「お久しぶりです、エル様!」
「いつも殿下の横にいらっしゃるから、やっぱり側近に選ばれたのかと思ってました」
「え、細……、あれ?こんなに?エル様、もしかしてまた無理してるんじゃないですか?」
「3人とも元気そうで何よりだ。
側近には選ばれてないよ!もう勉強会の時点で正式に誰がなるか発表されたでしょ?
だから時間には余裕があるはずなんだけど…、自分の勉強と妹の面倒を見てたりしてたら時間が全然足りなくて。前に手紙で計画していた魔道具の設計が半分も進めてないんだ。ごめん」
「やっぱり無理してるじゃないですか~!休んでください!」
「いや、自分の要領が悪いせいなんだから、ちょっとは頑張らないと。君らだって忙しいのにすっごい研究進めてるし!」
「違いますって!なんかエル様って自分の評価間違えてる気がします」
「うんうん。絶対に俺たちの3倍は忙しくしてるよな」
「そうですよ。第一、魔道具研究は趣味なんだから頑張りすぎたりする必要ないんです。気分転換に進めるくらいでいいんですから」
全然進んでない研究成果を謝ったら、なぜか逆にドクターストップが入った。
なんでだ???
納得はできてないけど3人の結託したやりとりについ「無理はしません」と約束してしまった。
「あ、そういえば殿下と話がまとまって、昼食の時はこっちに来られるようになったんだ。それじゃあ、ここで魔道具の意見交換を進めようよ」
「「「……」」」
唖然とした顔をする3人組に首をかしげる。
これなら無理にはならないだろ?昼食をとるついでに話をするくらいなんだし。
「殿下より俺たちをとるって……」
「エル様って相変わらず変わり者というか」
「人たらしというか」
「ん?何か言った?」
「いいえ。そうですね。それじゃ、先に昼食を取りに行きましょう。この食堂じゃ早く並ばないと人気のある方のランチセットは売り切れちゃうんですよ」
トレーに昼食を載せて席について、3人とわいわいしゃべりながら食べる昼食はすごく美味しかった。
あ~、これこれ。やっぱり、こういう生活が俺にはしっくりくるんだよなぁ。
魔道具の話もワクワクした。今俺たちがハマっているのは認識阻害の機能のある魔道具作りだ。
勉強しろって煩く言われてももっと研究をしたい。そんな時にこっそり逃げ出すよう使いたいっていうのが研究動機だって。
でも俺もこれができたら、いつの間にか背後を取ってくる殿下除けに使えないかって思ってるんだよね。
下手すると犯罪にも使えそうなアイテムだけど、俺たちが使う限りしょぼいことにしか使わそうなのが笑える。
話している内に行き詰ってた魔法陣の構築のヒントが思いついて満足の息をつく。
日々のストレスが抜けてくな~。
ニコニコして周りを何気なく見まわしていたら、すごく見覚えのある人物が視界に入って思わず二度見した。
「ん?あれって……セシル嬢?」
にぎわう食堂の中、ポツンと一人で食べている女生徒がいたんだ。
えっ、なんで一人で食べてるの?
「エル様、あの子のことご存じなんですか?」
「う、うん、同じクラスの子だよ。セシル・シーリエ嬢だ」
「そうなんですね。ということ高位貴族の方?うーん、名前は知らないなぁ」
「平民の子だよ。でもすごく魔力も多いし優秀なんだ。知らないかな、聖魔法が使える方が入学するって話」
「ああ!噂に聞いたことがあります。そういう事だったんですね。身なりからすると僕たちのクラスにいてもおかしくないのに、クラスでは見かけないし不思議だったんです」
この学園では平民から王族まで共に学ぶ。
そうはいっても学力、魔力量、警護、対人関係など様々な面を考慮した結果、クラスは大きく身分順に分かれる感じになっているんだ。
だから同学年に平民の子は何人もいるけど、俺達のクラスに入ったのはヒロインのセシル一人になっている。
殿下と同じく、ヒロインに近づくとどんな影響が出るか分からない。
極力関わらずに避けていたからこうしてまじまじと見るのは初めてかも。
ピンクの髪がふわふわしてて、遠目で見てもすごく美少女だってわかる。
「今日も一人で食べてますね」
「ん?今日もって、いつもチェックしてるの?もしかしてあの子との事が好きだとかー」
「まさかまさかッ!すごく可愛いとは思いますけど。単純に目立つからいつも気になってたんですよ」
「えっ。それじゃあ、いつもあんな風に一人で?」
学園に入学して半年。攻略対象者と絆を深めていく時期だ。
先日の会話から殿下との昼食はまだ先になりそうとは思っていたけど、他の攻略対象者とも一緒に過ごしてないの?
言われてみればワイワイ賑わう食堂の中で、一人でポツンといる姿はものすごく目立った。
ヒロインが美少女なせいかと思ったけど、それだけじゃない。特に女子は絶対にグループで動いてるから一人でいるのはあの子しか見ないんだ。
き、気になる……。
でも俺は悪役令嬢の兄な訳で、出来るだけヒロインちゃんには関わりたくない。
ストーリーがどんな風にねじれて俺がいじめっ子扱いにされるかもしれないし。
でもぽつんと一人寂しそうにいるのはすごくこう、罪悪感が刺激される。
その日から俺はさりげなくセシルの様子を見守ることにした。
教室は?……グループ学習以外ひとり。
昼食は?……ひとり。食堂にいない時はベンチでパンを食べてる。
放課後は?……ひとりでさっさと帰ってしまう。
休憩時間は!?……ひとりで図書館で勉強か、寮にひとりで帰っていく。
ずっとぼっちじゃん!!!
こ、これは気になり過ぎる。
実習はまだあまりないし、授業中におしゃべりしたりしないんで気づかなかった。
気のせいかヒロインのキラキラ度も若干下がってる気までしてきた。
元々陰キャ気質の俺。ぼっちの辛さは実感できるのだ。ピンクの瞳が何だか陰っていて胸がぎゅっと締め付けられた。
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