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3:カミュと会った!
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「今回はどうすっかなぁ。先に敵を倒しておいても、別の敵が現れてくるし。別ルートで行っても、絶対に敵が現れるし……あーー、もう。万策尽きたぁぁ」
そして、なんやかんやありつつ、俺はこの世界で九十九回目となる〝カミュ救済の旅〟を送っている。つまり俺は、この世界で既に九十八回カミュの死を見届けているというワケだ!
「いや、まだ尽きてないし。何か方法はある筈だ。それに、このまま無策で〝あの日〟を迎えたら、カミュはまた……」
拳を握りしめ、嫌な記憶を振り払うように勢いよく頭を横に振った。
小三の頃見た荒い画質の死より、十九歳の時見た最高画質の死より、リアルでカミュが俺を庇って死ぬ様は最早比較しようもないくらいトラウマ感が強い。
「っダメだ、ダメだ!考えろー、考えるんだ!俺!」
これまでの九十八回の中、俺だって色々試してみた。
探索ルートを変えたり、色々言い含めてカミュを現場に連れて行かないようにしてみたり。しかし、何をどうしても〝その日〟になるとカミュは死ぬ。しかも、必ず俺を庇って。そんなワケで、今の俺ときたら九十八層のトラウマミルフィーユ状態だ。
かくなる上は、カミュを仲間に入れなきゃいいんじゃないか!と四十回目にしてやっと思いついた俺は、カミュの村をモンスターから救った後、仲間にしてくれと言うカミュの申し出を断ろうとした。するとどうだ。
『俺の名前はカミュという!お前、強いな!良いじゃないか!そうだ、村を救ってくれた礼と言ってはなんだが、俺もお前の旅に同行しよう!』
『え、いいの?ありがと……あ』
断れないっっ!
そう、何度繰り返しても俺はカミュからの申し出を絶対に受けてしまうのだ。これぞシステムの強制力か……!と、一瞬システムのせいにしかけたが、別にそういうワケではない。ただ単に、俺が断れないだけだ。
『ループ、これからよろしく頼むな!』
『……うんっ!』
大好きなカミュからの言葉を、俺が断れっこないじゃーん。ゲームをしてた時も、一度だって戦闘メンバーから外した事もないのに。
『うーー、それならっ!』
仕方ない!断れないなら、そもそもカミュに出会わなければいい。そう思い、村をモンスターから救った後カミュに会わないよう、爆速で村を出たりもした。しかし、カミュは何があっても俺を追ってくる。そして言うのだ。
『俺の名前はカミュという!俺はお前の強さに惚れた!これからの旅に俺も同行させてくれないか!』
『え、いいの!?やったー……あ』
そんなやりとりを十回程繰り返して、俺は諦めた。カミュを救う事を、ではない。
俺は何がどうあってもカミュと旅がしたいのだ。何の因果かこうしてゲームの中で大好きなキャラと出会えたのだから、カミュを仲間外れにして世界を救う旅に出るなんて、そんなのムリだ、ムリ!
「……でも、今度こそ絶対にカミュを救ってやる」
そんな九十九回目の物語も、今は中盤の終わり頃に来てしまった。カミュが俺を庇って死ぬ〝あの日〟まで、あまり時間はない。
「うぁぁぁ、でも、どうしたらいいんだーー」
「どうした、ループ!何か悩みごとか?」
「っあ、あ。カミュ!」
仲間達の寝静まった夜。一人でカミュ救済一人脳内会議をしていると、いつの間にかカミュがすぐ傍に立っていた。
「あ、いや。なんでもないっ。っていうか、まだ寝てなかったのか?」
「あぁ、なんだか眠れなくてな!そしたら、お前がうんうん唸ってるじゃないか」
夜にもかかわらず、周囲が明るくなるような赤毛と笑顔を振りまきながら、カミュが俺の肩に手をのせる。
「まぁ、悩み事なら俺と一緒に一戦やらないか?体を動かすと大抵の悩みは消えるからな!」
「っっうん!」
その瞬間、俺の頭の中にモヤついていた思考が一気に晴れた。やっぱり、カミュは良いヤツだ。うん、絶対に死なせたくない!
「そうと決まったらあっちに行こう。開けた場所があったからな!お前との一戦にぴったりだ!」
「あ、でも見張りはどうする?サボってるのがバレたらセゾニアに怒られるんじゃ」
「安心しろ。そう遠くはないから、セゾニアが起きる前には戻れる。それに、万が一バレたら……怒られる時は一緒だ、ループ!」
「っか、カミュ~~!」
俺の肩を抱いて歩くカミュは、夜闇をも明るくするような快活な笑みを浮かべてみせた。
「おう、だからお前は俺との一戦だけに集中するといい!いいな?」
「うん!」
カミュはともかく格好良い。それは強いからという事もあるが、普通に見た目が格好良いのだ。
そのせいか、どの街に立ち寄っても女の子に声を掛けられる。一応、俺が主人公で勇者という設定なのだが、どの村でも初見で勇者はカミュだと勘違いされてしまう。まぁ、ループ(俺)って見た目はド平凡だから仕方ないのかもしれない。なんだっけ、そういうのもカリギュラの「不条理」設定の一つだって、ネットに書いてあった。
「ループ!俺はどんな強敵を前にするより、やっぱりお前とこうして対峙する時が一番興奮するんだ!」
「そうなの?」
「そうだともっ!お前を前にすると、常に胸が震える……あぁ、張り裂けそうだ!」
みんな、このカミュの無防備な笑顔と力強い眼差しに思わず心を奪われるのだ。分かる。俺もそうだったから!
「俺がこれまで出会った者の中で、お前ほど強いヤツは居ないからな!まったくお前は最高だよ!」
「へへ、そっか!」
しかし、戦士の村で育ったせいかカミュはともかく強くなる事にしか興味が無い。
女の子に言い寄られても、トンチンカンな事を言っては相手を怒らせる。だから、セゾニアを筆頭とするパーティの女子達からは「この脳筋!デリカシーなさ過ぎ!」と、よく怒られている。
でも、俺はカミュのそういう所が好きだった。カミュが喋ると、どんな深刻な事態に陥っても空気が和らぐ。小三の俺はカミュと出会った事で「ムードメーカー」という言葉を知った。カミュは紛れもなく、初代カリギュラの物語を明るくしてくれる最高のムードメーカーだった!
「さぁ、ここだ。どうだ、良い場所だろう!」
「おお、凄いなー!」
カミュの言う通り、森を少し歩いた先には開けた花畑があった。そこで、カミュは肩に添えていた手を離すと、俺から距離をとる。
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