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ざわざわと観客達が騒ぎ出した。
「俺達は何を見させられているんだ?」
「何これ。何の演出?」
ジャックとキャンディの大根役者ぶりに、記念公演でも始まったのかと勘違いした招待客達が愚痴を漏らす。
ジャックは仕切り直しとばかりに、これより断罪を始める!と声を荒げた。
「ひとつは脅迫状だ!毎日キャンディの机に「しね」だの「消えろ」だのというメモを入れているらしいな!」
ズバッ! と右手で、カッコ良くざわめきを薙ぎ払ったつもりのジャック。
ざわざわざわ
「殿下は隣の令嬢を呼び捨てにしているのか?」
「あんなにくっついて羨ま……見苦しい。」
「今日のは「絶対許さない」って書いてありました!」
追従するキャンディ。
ひそひそひそ
「むしろメモだけとはお優しい。」
「私の婚約者が誘惑されたら往復ビンタして罵ってやるわ。」
「この一年分の証拠がある。言い訳があるなら聞こう。」
前髪を指先で払う。お気に入りの仕草で勝利を確信するジャック。
がやがやがや
「浮気してる癖にカッコつけるな。」
「ダッサ。つか、こんなに悪口言ってるのに聞こえてないのかしら殿下。」
「あー、自分に都合の悪い事は都合の良いように解釈するタイプなんだろう。いるよな、ああいう奴。」
「……。」
何を思う後ろ姿のソフィア。
「はっ。図星に言葉も出ないのだろうが、後ろ姿だけは美しいな。」
白く清廉なソフィアの背中に、自分勝手な思い込みを押し付けるジャック。
「では次だ。私がキャンディに贈った指輪やネックレスを盗んだそうではないか。見せて欲しいと言われて渡したら、返してもらえないとキャンディが涙を流した事、心苦しくならないのか。」
(ソフィアには一度とて贈った事のないプレゼントの数々に嫉妬し横取りしたと、素直に謝れば可愛いものを、これだからプライドの高い女は!)
「ジャックが愛の証にキャンディにくれたんです!返してください!」
(勝った!皆見て!婚約者のあの女より皇子様に愛されている私を!)
互いを思い合うセリフを吐きながら、自分の事しか考えていない態度のジャックとキャンディ。
「キャンディ。これからは堂々とキャンディに宝石をプレゼントするよ。だから泣かないで……ね。本当にキャンディは泣いてばっかりだな……ふ。」
(僕なしじゃ生きられない女性が多くて困る……この僕が慰めてあげるから、泣き止んでごらん?……ふ。)
キャンディの頬を伝う涙を指で拭うジャック。
「ジャック……キャンディ悔しい。」
ジャックの胸にしなだれ、見上げるキャンディ。
(キャンディ可愛い?誰より一番可愛いでしょう?)
「……。」
「ソフィア。ガッカリだよ。悪女の背中を見つめ続けなければならない私の心の痛みがわからないか?」
ソフィアの肩甲骨から腰へのくびれを凝視しながら、やはり何かがおかしいと思うものの、キャンディにせっつかれて次のセリフへと移る。
「君って人は……まだ私の口から言わせたいのか?キャンディの友達を買収、脅迫しキャンディを孤立させ、買収した元友達を使って私を誘惑しキャンディを泣かせた。更にキャンディの……口にするのも躊躇われるが……淫乱、二股女などという悪評を流した。」
(貪欲なソフィアとその取り巻き達でハーレムを作れば、二つ国の男どもがさぞ羨ましがるだろう……いや、これは不可抗力だ。僕の愛はキャンディだけのものだけど、キャンディを守る為には仕方がない。ふしだらなソフィア達には、たっぷり僕の慈悲を与えてやらなければならないだろう、これは人の上に立つ者の定めだ。)
「残念でした!ジャックはそんな噂信じないわ。キャンディはジャックの事、信じてるもん!ジャックがキャンディの事信じてくれるって、わかってるから!ソフィア様はジャックを信じられないの?だからこんな嫌がらせするんでしょう?ジャックに愛されてるって信じていれば何も怖くないはずよ!」
(……おかしいわね……ここまで馬鹿にされているのに何の反応もないじゃない。捨てられた女だって自覚がないのかしら?もっとハッキリ言ってやらないと分からないのね……)
「……かわいそうなひと。こんな事をして、自分からジャックに嫌われるなんて。」
(さあ本性を見せなさいよ。悔しいでしょう?悲しいでしょう?逃げ道の無い下剋上を喰らった気分を教えてよ!)
「……。」
壇上でオロオロするのは長官ばかり。
ソフィアはスッと美しく背筋を伸ばし、凛として揺るぎない気品を漂わせている。
(気に入らないな……愛する僕を失って錯乱するソフィアを……慈悲でハーレムに囲ってあげるという計画が台無しだ。)
ぶるぶると握った拳を震わせるジャック。
「ソフィーリア・バルドー公爵令嬢!私、ジャック・ギデオンは第一皇太子の名において、君との婚約破棄をここに明言する!……私を見ろ!」
(さあ素直になれ!捨てないでと縋りついてみせるんだ!僕の……ハーレムの始まりだ!)
「俺達は何を見させられているんだ?」
「何これ。何の演出?」
ジャックとキャンディの大根役者ぶりに、記念公演でも始まったのかと勘違いした招待客達が愚痴を漏らす。
ジャックは仕切り直しとばかりに、これより断罪を始める!と声を荒げた。
「ひとつは脅迫状だ!毎日キャンディの机に「しね」だの「消えろ」だのというメモを入れているらしいな!」
ズバッ! と右手で、カッコ良くざわめきを薙ぎ払ったつもりのジャック。
ざわざわざわ
「殿下は隣の令嬢を呼び捨てにしているのか?」
「あんなにくっついて羨ま……見苦しい。」
「今日のは「絶対許さない」って書いてありました!」
追従するキャンディ。
ひそひそひそ
「むしろメモだけとはお優しい。」
「私の婚約者が誘惑されたら往復ビンタして罵ってやるわ。」
「この一年分の証拠がある。言い訳があるなら聞こう。」
前髪を指先で払う。お気に入りの仕草で勝利を確信するジャック。
がやがやがや
「浮気してる癖にカッコつけるな。」
「ダッサ。つか、こんなに悪口言ってるのに聞こえてないのかしら殿下。」
「あー、自分に都合の悪い事は都合の良いように解釈するタイプなんだろう。いるよな、ああいう奴。」
「……。」
何を思う後ろ姿のソフィア。
「はっ。図星に言葉も出ないのだろうが、後ろ姿だけは美しいな。」
白く清廉なソフィアの背中に、自分勝手な思い込みを押し付けるジャック。
「では次だ。私がキャンディに贈った指輪やネックレスを盗んだそうではないか。見せて欲しいと言われて渡したら、返してもらえないとキャンディが涙を流した事、心苦しくならないのか。」
(ソフィアには一度とて贈った事のないプレゼントの数々に嫉妬し横取りしたと、素直に謝れば可愛いものを、これだからプライドの高い女は!)
「ジャックが愛の証にキャンディにくれたんです!返してください!」
(勝った!皆見て!婚約者のあの女より皇子様に愛されている私を!)
互いを思い合うセリフを吐きながら、自分の事しか考えていない態度のジャックとキャンディ。
「キャンディ。これからは堂々とキャンディに宝石をプレゼントするよ。だから泣かないで……ね。本当にキャンディは泣いてばっかりだな……ふ。」
(僕なしじゃ生きられない女性が多くて困る……この僕が慰めてあげるから、泣き止んでごらん?……ふ。)
キャンディの頬を伝う涙を指で拭うジャック。
「ジャック……キャンディ悔しい。」
ジャックの胸にしなだれ、見上げるキャンディ。
(キャンディ可愛い?誰より一番可愛いでしょう?)
「……。」
「ソフィア。ガッカリだよ。悪女の背中を見つめ続けなければならない私の心の痛みがわからないか?」
ソフィアの肩甲骨から腰へのくびれを凝視しながら、やはり何かがおかしいと思うものの、キャンディにせっつかれて次のセリフへと移る。
「君って人は……まだ私の口から言わせたいのか?キャンディの友達を買収、脅迫しキャンディを孤立させ、買収した元友達を使って私を誘惑しキャンディを泣かせた。更にキャンディの……口にするのも躊躇われるが……淫乱、二股女などという悪評を流した。」
(貪欲なソフィアとその取り巻き達でハーレムを作れば、二つ国の男どもがさぞ羨ましがるだろう……いや、これは不可抗力だ。僕の愛はキャンディだけのものだけど、キャンディを守る為には仕方がない。ふしだらなソフィア達には、たっぷり僕の慈悲を与えてやらなければならないだろう、これは人の上に立つ者の定めだ。)
「残念でした!ジャックはそんな噂信じないわ。キャンディはジャックの事、信じてるもん!ジャックがキャンディの事信じてくれるって、わかってるから!ソフィア様はジャックを信じられないの?だからこんな嫌がらせするんでしょう?ジャックに愛されてるって信じていれば何も怖くないはずよ!」
(……おかしいわね……ここまで馬鹿にされているのに何の反応もないじゃない。捨てられた女だって自覚がないのかしら?もっとハッキリ言ってやらないと分からないのね……)
「……かわいそうなひと。こんな事をして、自分からジャックに嫌われるなんて。」
(さあ本性を見せなさいよ。悔しいでしょう?悲しいでしょう?逃げ道の無い下剋上を喰らった気分を教えてよ!)
「……。」
壇上でオロオロするのは長官ばかり。
ソフィアはスッと美しく背筋を伸ばし、凛として揺るぎない気品を漂わせている。
(気に入らないな……愛する僕を失って錯乱するソフィアを……慈悲でハーレムに囲ってあげるという計画が台無しだ。)
ぶるぶると握った拳を震わせるジャック。
「ソフィーリア・バルドー公爵令嬢!私、ジャック・ギデオンは第一皇太子の名において、君との婚約破棄をここに明言する!……私を見ろ!」
(さあ素直になれ!捨てないでと縋りついてみせるんだ!僕の……ハーレムの始まりだ!)
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