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「こ……怖いわジャック……」
キャンディスは本能で何かを感じ取ったのか、ジャックに弱々しく縋りつく。
当のジャックは、ルフィーリアの笑顔に魅せられて目が離せないでいる。
ジャックの目の前にいる、清明で美しく、高潔無比な貴婦人の母の姿とルフィーリアが重なって見えた。
「ようございましてよ。」
パンっと両手を打ち鳴らしたルフィーリア。
「そちらがお望みのようですし、観客もいらっしゃいますものね。この茶番、乗って差し上げますわ。さあ皆さん、覚悟は宜しくて?」
(ショーの始まりよ。清く美しい断罪の序章には♭を3つ。)
ルフィーリアが指揮者のように、壇上から生徒達に視線を向けると、
「「はい。」」
とその中から数名立ち上がって顔を上げた。
ジャックとキャンディスは、主役の座を掻っ攫われて呆然と成り行きを見守る。
「事の発端は一年前、キャンディス・ノラックが学院に入学してからでした。」
壇上からはルフィーリアの毅然とした声が会場中を席巻する。
「ソフィーリア様の私物が無くなり始めたのです。不審に思われたソフィーリア様がご学友に相談なされたところ、一年生の制服姿の女子生徒がソフィーリア様の机を物色されている現場を見た、という証言が集まりました。」
ルフィーリアは淡々と述べていく。
「そんなの嘘よ!私じゃないわ!」
(冗談でしょう?!終わったことを今更蒸し返さないでよ、迷惑なんだけど?!)
「……キャンディス・ノラック。発言を許可しておりませんよ。」
(早い。一年生のとしか言っていないのに、自滅してもう白状したようなものじゃない。)
「先程からの貴方の言動、行動は看過の範疇を逸脱しています。口を閉じていなさい。」
(短絡的な貴方の演出じゃ物足りないの。舞台はもっと華やかでなくちゃ、そうでしょう?皆様。)
ルフィーリアがほんの少し、眉を歪める。
ザッ、と会場にいる生徒達が一斉に視線を動かしキャンディスを睨みつけた。
「ひっ」
キャンディスは堪らずジャックの腕にしがみつく。
「では続行します。証言者の発言を許可します。」
(ん。いい子ね。)
ルフィーリアはにっこり。
「はい!私はプローライト伯爵家次女ジョエリーです。私はソフィーリア様と同じクラスで、あの日は移動教室の授業でした。ご高齢のロイド先生に頼まれて、教室に忘れたロイド先生の魔法の杖を取りに戻った時に、一年生の制服のピンク頭の女子が、ソフィーリア様の机を覗き込んでいたので声をかけると、脱兎の如く逃げ去りました。」
「デタラメよ!私じゃない!証拠だってないはずよ!」
キャンディスはジャックを盾にして、怯えながらも言わずにはいられない。
(裏切り者が何を言ったって平気よ。嘘をついた証拠なんてあるわけがない。嘘はね、嘘だと認めなければ嘘にならないんだから!)
「……犬に論語。……暫くそうしていなさい。」
(キャンキャンうるさいわね。)
ルフィーリアは右手を上げて人差し指で何かを摘む仕草をとると、「ん!!んー!んー!」キャンディスの唇が開かなくなった。
「では続行します。他に証言は。」
「はい!私はフィッシャー子爵家一女ジョアンナです。キャンディス・ノラックと同じクラスです。キャンディス・ノラックは授業中にお手洗いだと言って抜け出す常習犯です。」
「はい!私はベイル男爵家長女マリーです。キャンディス・ノラックは私の幼馴染みで、キャンディス・ノラックがお茶会で話すのはいつもバルドー公爵家令嬢ソフィーリア様とジャック・ギデオン皇太子殿下のことです。バルドー公爵令嬢のドレスやアクセサリーを、私の方が似合う、もったいないずるいっていつも言っていました。」
在学院生による国歌斉唱の為に来ていた、一年生席から証言したジョアンナとマリーが、ふふん、とキャンディスを見て笑う。
「んー!んー!」
(アンタたち、絶対許さないんだから!)
キャンディスは本能で何かを感じ取ったのか、ジャックに弱々しく縋りつく。
当のジャックは、ルフィーリアの笑顔に魅せられて目が離せないでいる。
ジャックの目の前にいる、清明で美しく、高潔無比な貴婦人の母の姿とルフィーリアが重なって見えた。
「ようございましてよ。」
パンっと両手を打ち鳴らしたルフィーリア。
「そちらがお望みのようですし、観客もいらっしゃいますものね。この茶番、乗って差し上げますわ。さあ皆さん、覚悟は宜しくて?」
(ショーの始まりよ。清く美しい断罪の序章には♭を3つ。)
ルフィーリアが指揮者のように、壇上から生徒達に視線を向けると、
「「はい。」」
とその中から数名立ち上がって顔を上げた。
ジャックとキャンディスは、主役の座を掻っ攫われて呆然と成り行きを見守る。
「事の発端は一年前、キャンディス・ノラックが学院に入学してからでした。」
壇上からはルフィーリアの毅然とした声が会場中を席巻する。
「ソフィーリア様の私物が無くなり始めたのです。不審に思われたソフィーリア様がご学友に相談なされたところ、一年生の制服姿の女子生徒がソフィーリア様の机を物色されている現場を見た、という証言が集まりました。」
ルフィーリアは淡々と述べていく。
「そんなの嘘よ!私じゃないわ!」
(冗談でしょう?!終わったことを今更蒸し返さないでよ、迷惑なんだけど?!)
「……キャンディス・ノラック。発言を許可しておりませんよ。」
(早い。一年生のとしか言っていないのに、自滅してもう白状したようなものじゃない。)
「先程からの貴方の言動、行動は看過の範疇を逸脱しています。口を閉じていなさい。」
(短絡的な貴方の演出じゃ物足りないの。舞台はもっと華やかでなくちゃ、そうでしょう?皆様。)
ルフィーリアがほんの少し、眉を歪める。
ザッ、と会場にいる生徒達が一斉に視線を動かしキャンディスを睨みつけた。
「ひっ」
キャンディスは堪らずジャックの腕にしがみつく。
「では続行します。証言者の発言を許可します。」
(ん。いい子ね。)
ルフィーリアはにっこり。
「はい!私はプローライト伯爵家次女ジョエリーです。私はソフィーリア様と同じクラスで、あの日は移動教室の授業でした。ご高齢のロイド先生に頼まれて、教室に忘れたロイド先生の魔法の杖を取りに戻った時に、一年生の制服のピンク頭の女子が、ソフィーリア様の机を覗き込んでいたので声をかけると、脱兎の如く逃げ去りました。」
「デタラメよ!私じゃない!証拠だってないはずよ!」
キャンディスはジャックを盾にして、怯えながらも言わずにはいられない。
(裏切り者が何を言ったって平気よ。嘘をついた証拠なんてあるわけがない。嘘はね、嘘だと認めなければ嘘にならないんだから!)
「……犬に論語。……暫くそうしていなさい。」
(キャンキャンうるさいわね。)
ルフィーリアは右手を上げて人差し指で何かを摘む仕草をとると、「ん!!んー!んー!」キャンディスの唇が開かなくなった。
「では続行します。他に証言は。」
「はい!私はフィッシャー子爵家一女ジョアンナです。キャンディス・ノラックと同じクラスです。キャンディス・ノラックは授業中にお手洗いだと言って抜け出す常習犯です。」
「はい!私はベイル男爵家長女マリーです。キャンディス・ノラックは私の幼馴染みで、キャンディス・ノラックがお茶会で話すのはいつもバルドー公爵家令嬢ソフィーリア様とジャック・ギデオン皇太子殿下のことです。バルドー公爵令嬢のドレスやアクセサリーを、私の方が似合う、もったいないずるいっていつも言っていました。」
在学院生による国歌斉唱の為に来ていた、一年生席から証言したジョアンナとマリーが、ふふん、とキャンディスを見て笑う。
「んー!んー!」
(アンタたち、絶対許さないんだから!)
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