セレンディピティ

蘭爾由

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セレンディピティ

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はあ。またこの手の依頼を受けたんですか。

不機嫌にあからさまなため息を吐いた彼は、私の大学時代からの友人、福住ふくずみ。縁あって私の助手のようなことをしてくれている。

前にも言いましたよね、ほらあれ、あのあれ。

まだ30代であるはずなのに物忘れが多い。まあ、すぐ思い出すことも多いけれど。

死刑囚に罪悪感をとかっていうあれ。結局あれはあれですよね。

指示語も多い。

連続殺人鬼となり、被害者の目に写る殺人鬼の自分を見ていたつもりが、被害者との思い出を記憶の中で辿るうちに、自分に最初の被害者(祖母と母)を殺すほどの殺意があったのかと疑問をいだかせることから始まり、連続殺人鬼となった自分が見ていたものは子供の頃の被害者の自分の中の記憶を辿っていただけで、実際の自分の顔はあれから20年も経過したおじさんで、あの日見た殺人鬼の父の顔とそっくりになっていた。そこで歪められていた記憶を思い出し、本当の殺人鬼が誰なのか、本当の殺人鬼になってしまった自分、殺人鬼の子は殺人鬼なのか、殺人鬼を生んだ祖母さえいなければ、自分を守って死んでしまった母、助けて、もう一度僕を助けて、母を求めて連続殺人鬼となった殺人鬼、祖母の老人特有の白く柔らかな

はいそこまで。
福住君はたまに他人の、潜在意識のノイズにチャンネルを合わせてしまう能力があり、自分の意思なく発動して周りを困らせてしまうので、比較的暇を持て余している私が面倒を見ているわけだけど。こうして僕が彼の視界を手で覆ってあげると能力が停止されるんだ。

すいません、僕また。

あ。もうバレちゃいましたかね。そうですね。僕が前回の仕事を引き受けたわけ。彼の能力、僕は彼の能力をセレンディピティと呼んでいる。元ネタは、セレンディップ(今のスリランカ)の3人の王子達、という児童書。王の命令で旅に出た3人の王子は途中で降りかかる多くの困難を知恵と機転思わぬ発見をする能力で次々解決していくアドベンチャー。彼の、他人の潜在意識のノイズを引き寄せる力で、僕はこれまで何度も報酬げふんごほん、困難を乗り越えてきたわけだ。

ちょっとメンタルブレてるので横になります。

彼は睡眠をとることで、一旦自分の中に引き寄せてしまったノイズを消すことが出来る。これも僕が彼に教えてあげたんだけどね。何しろ僕と彼の出会いは天文学的確率だからね。偶然ってそういうものだろう?。彼は僕と出会えた幸運を手離す気はないらしい。僕と彼の関係は五分五分フィフティフィフティなんだよね。

すやすやー

私?
私は、普通の探偵です。
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