イケメン捕手様の愛が大きすぎました

神咲潤吉

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七投目 滉大side

眩しい太陽

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 大智は、とにかく声の大きいやつだった。円陣の時も、守備に声をかける時も、急に『よっしゃいくぞーーーー!』なんてバカでかい声を出すんだ。
 おまけにアイツは自信たっぷりな顔でマウンドに立つ。さんざめく太陽を前に、気圧されないバッターはいなかった。

 俺は試合中、大智に驚かされてばかりだった。
 もちろん、そのあとにも。

『千早くん? だっけ。さっきはめちゃくちゃかっこよかったなあ~!』

 選手たちが対面する形で並ぶ中、大智はどんな顔したと思う? 普通、負けた相手には見せられない屈託のない笑顔だ。

 ……変なやつ。
 
 そんな変なやつと俺は、高校でクラスメイトになった。


『なあなあ滉大~』

 いきなり呼び捨て?
 と思ったが、そのまま『なに?』と返す。
 桜が満開の入学式、一連の流れを終え教室の席に着いてからのことだった。

 大智はニヤリと子どもみたいに笑ったかと思えば、ペンを片手にノートを胸の前に構えた。

『血液型は何型? 誕生日は? ペットは飼ってる? 好きな食べ物はなに? 逆に苦手な食べ物ある?』

 この時、初めて注文が早すぎて聞き取れない店員の気持ちがわかった気がする。

 俺はなんとか記憶を手繰り寄せながら、
『AB型、3月21日、いない、カレー、ミニトマト』と答えた。
 答えたあとも、質問は止まらなかった。ノート全ページ埋まるんじゃないかって思うくらい、止まらなかった。

『あ、ちなみに俺はO型の獅子座ね』

 ついでに大智は、メモを取りながら訊いてないことまで教えてくれた。

 次の日。

『滉大!』
『ん?』

 教室に入るなり正面から声をかけられた。
 言わずもがな、声の主は大智だ。
 席に鞄を置くや否や、その目がキラキラと輝きを増す。

『なあ知ってる? 妹から聞いたんだけどさ。獅子座と牡羊座って結構相性いいらしいぜ』

 何を言い出すのかと思えば、占いの話?
 世紀の大発見でもしたような言い方だな、なんて呆れていると、先程までは丸く輝いていた目がニカッと細くなった。

『俺ら、最強のバッテリーになれるかもな!』

 俺は元々友達と騒いだりするタイプじゃない。
 他人に心を見せるのが、得意じゃないから。
 クールだとか、王子みたいだとよく形容されることがあるけれど、それもただ人を傷つけるのが怖いだけ。

 だから大智こいつは俺の苦手ど真ん中な人間のはず、なのに。

 ──フッ。
 自然と口角は上がっていた。
 理由はわからない。ただ、眩しいはずの光が、俺にはちょうど心地よかった。


 野球部に入った俺たちは、いつしかバッテリーを組んでいた。
 初めてアイツの球を受けた時の衝撃を、俺は今でも忘れられない。
 うまく言葉にできないけれど、〝しっくりくる〟ってこういうことなのだと、その時思った。

 そうやって練習の日々を重ねていくうちに、大智が俺と同じ夢を持っていることを知った。
 一緒に甲子園に行きたいと、伝えてくれた。

『甲子園に行くまでは、野球のことだけ考えようぜ』

 それは邪念なんて全て取っ払って、ただひたすらに甲子園を目指すという誓い。
 二人で、なにがなんでも叶えてやるんだ──。
 俺たちは青空に宣言するように、拳を突き合わせた。
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