イケメン捕手様の愛が大きすぎました

神咲潤吉

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三投目

いつか大事な人ができたら、

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「ん、できたぜ」
「おー、サンキュー大智」

 我ながら完璧に結べたと思う。
 なんつーか、どうしようもなくニヤけが止まらない。
 あの人気者の滉大にこんなことができるのは俺だけ、なんて考えたらさ。

「どういた──」

 とその時、ふと紡いでいたはずの言葉が止まった。

 ──本当に、〝俺だけ〟か……?

 途端に心臓が早鐘を打つ。
 この前までは意識したことすらなかったけど……滉大だって、普通に恋愛くらいするんだ。

 こうやって下手くそなハチマキに気づいて直してやんのも、今はこいつに彼女がいないから俺がやってるってだけで。
 いつか大事な人ができたら、きっとその子がこういうこと、やってあげんだよな……。

「大智?」
「ん、あっ、どういたしまして!」

 えっ……いやいやいや、何今の? 何当たり前のことに気づいてしょげてんだよ!?

 トリップから目を覚ました俺は「あはは」と渾身の笑顔を作る。
 奇妙な物を見る目線が突き刺さるが気にしない。
 笑みを貼り付けたまま、「ていうかさ」と無理やり話題を逸らそうとした時だった。

「あれ、滉大のハチマキ綺麗になってんじゃん」

 不意に、背後から聞こえた誰かの声。
 振り向けばそこには、さっきまで何故か不在だった黒縁メガネの男が立っていて、少し驚いたように目を丸くしていた。

「龍馬! お前どこ行ってたんだよ」

 ナイス登場と言わんばかりに声を飛ばす。すると龍馬は、俺に見せつけるように自分の身体を抱きしめた。

「もぉ~、大智くんたらデリカシーないんだからぁ~」
「なんだ、トイレかよ」
「こら! せめてお手洗いと言いなさい!」

 ペシペシと腕を叩かれ、わざとらしく「いてー」と叫ぶ。
 そうやってじゃれ合う俺たちの間に、不機嫌そうな顔がぬっと現れた。

「っていうか長谷、〝綺麗になってんじゃん〟て何? 気づいてたんなら言ってくれよ」
「え、なんか可愛いかなって」

 ……可愛い?
 ああ、たしかにちょっと惜しいことしたかも。
 ミニトマトの時もそうだけど、普段完璧な人間のちょっと抜けてる姿って、気のせいか人一倍可愛く見えるんだよな。

「わり、それ直したの俺」

 潔く自首すると、「ええー、犯人大智かよー」と龍馬が抗議の声を上げた。

「ついうっかりと。でも今は深く反省してます!」
「……うむ。ならお主には執行猶予を与えよう」
「ああ神様、いや長谷様……!」
「待て待て、なんだよその妙な小芝居は」
「……」

 瞬間、突如として生まれた奇妙な沈黙。
 暫しそれが続いた後、ぷっと誰かが爆発したみたいに吹き出して。そうなったらもう、みんな止まらなかった。
 さっき変な寂しさを覚えたことなんて完全に忘れて、転げ回る勢いで大笑いする。

 喉は痛いし、腹は苦しい。
 でも。

 あー……やっぱこいつらといると、おもしれーや。
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