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三投目
決起集会
しおりを挟む「っしゃあ、そろそろだな」
応援係に徹すること、数時間。ついに先刻前、満を持して後半戦がスタートした。
俺たちが出場するスウェーデンリレーは、後半戦で4番目。
最初の競技がもうすぐ終わりそうになっているから、召集がかかるのももうじきだ。
……その前に、決起集会をっと。
「中田、龍馬、滉大。みんな、絶対ぇ頑張ろうな」
「おう(うん)!」
クラステントの後ろで集まった俺たちリレーメンバーは、肩を組み円陣を作る。
そうやって円陣を終えた頃、どこからか女子の声援が飛んできた。
「千早くんたち、頑張ってねっ!」
それは一つ二つと数を増やしていき、いつの間にか大勢の目が俺たちを──訂正。滉大をキラキラと見つめていた。
「ありがとう。応援よろしく頼むな」
「きゃーーーっ! 任せてぇ~~!」
軽く笑みを浮かべた滉大に、黄色い悲鳴がいくつも湧き起こる。
……はは、ったく。相変わらずやってくれるぜこの男。
モテたくてやってるんなら非難轟々なんだろうが、本人には全くその気がなくこの王子対応やってんだから、ほんと恐れ入るよ。
「……にしても、すげえ人気」
群がる女子の数に思わず圧倒されていると、不意に「あのっ」という高い声が耳に届いた。
「ゆ、唯川くん」
「ん?」
俺──?
呼ばれた声に促されるよう、くるりと振り返る。
「私、応援してるね」
「横田! サンキュ」
視界に飛び込んできたのは、ポニーテールの彼女だった。俺は驚きつつも、グッと握った拳を向ける。
「あ、そういやさっき凄かったな」
「……へ?」
ふと思い出した俺は、浮かんだ記憶をそのままに続けた。
「リレー、ぶっちぎりだったじゃん」
「え、うそ……唯川くん、見ててくれたの!?」
「おう、もちろん!」
その場にいない時以外は、全力でクラスの応援してたしな。そんなことを頭で呟いていた最中、新たなアナウンスが空に響き渡った。
《──男子・スウェーデンリレーに出場する選手は、入場門まで──》
「あー横田。俺、行かなきゃだわ」
「うん、そだね」
控えめに眉を垂らした彼女に「ごめんな」と手を挙げる。
「おーい大智、そろそろ行くぞー」
「おー、今行く」
龍馬の声に振り向けば、俺以外の3人は既に一箇所に集まっていて、急かすような滉大の視線がこっちを向いていた。
なんだよ。そんな睨まなくたって、すぐ行くっての。
でもその前に。
「さっきはホントありがとな。応援、嬉しかったぜ」
何故か声をかけてくれた優しい横田に改めてお礼してから、急いで仲間の元へ駆けていった。
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