イケメン捕手様の愛が大きすぎました

神咲潤吉

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七投目 滉大side

大智の幸せ

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 風呂から上がると、俺は早々に部屋着に着替えを済ませ、リビングに戻った。
 少し長湯しすぎた。いつもより火照った顔を扇風機で鎮めながら、濡れた髪をタオルで拭いていく。

「髪の毛乾かしたらご飯よ」
「了解」

 姉貴に促されるまま、洗面所でドライヤーをかける。そのうちに親父が仕事から帰ってきた。

 家族3人で囲う食卓。今日の夕飯は、匂いから予想した通り、好物のカレーだった。





 次の日、俺はいつものように朝練に向かった。
 正直昨日のこともあり少し気まずい気持ちもあったが……大智は昨日の不調が嘘みたいに、調子を取り戻していた。

「大智、ナイス!」
「おうっ」

 ほっとした。やはりあの時の選択は、間違ってなかったんだ──。


 朝練終了直後の部室は、男たちの熱気で溢れかえる。
 6月も後半になり、ただでさえ外にいるだけで汗ばむくらいだというのに、ここは灼熱地獄のような空間だ。

「あーきもちーーーっ」

 隣で長谷が自販機で買ったジュースを頬に当て、帽子を団扇替わりにして扇いでいる。
 そんな光景をつい微笑ましく思っていると、ふとある一箇所に目を奪われた。

 ……アイツ、あんな所につけてたんだ。
 隣の長谷の更に一つ隣で着替えをする大智の、エナメルバッグ。その取っ手部分に取り付けられていたのが、この間女子からもらった御守りだと気づいた。

『この前もっさんが彼女から貰ってたの見ただろ? あれ、ちょっと羨ましかったんだよな~』

 そう言って、嬉しそうな顔をする大智に少しだけ痛んだ胸。けれど仕方ないと受け入れた、それ。

 思えば体育祭あたりから予感はあったが、御守りを受け取ったあの日、確信したんだ。
 あの子は……横田さんは、俺と同じ気持ちなんだと。

 当の大智は、そんな想いには微塵も気づいてないんだろうけど。気づくな、なんてずるいことを思う自分がいて嫌になる。

 ……もう諦めたつもりなのに、未練タラタラかよ。
 早くも鳴きだした蝉の声が、はりぼてな心を嘲笑うように鼓膜を揺らした。

 アイツは普通に女の子と恋愛して、普通の家庭を持って、そうやって過ごすのが幸せなのかもしれない。
 俺は大智が幸せなら、それでいいんだ。

 このまま、二人で夢の甲子園を目指せるなら──。

 よし、と気を引き締めて重たい鞄を肩にかける。そのまま一人部室から一歩踏み出した、時だった。

「滉大!」

 俺は先にそこにいた誰かに、腕を掴まれた。
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