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第39話「ぬいぐるみの中」
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こんばんは。黒天です。
今日は、視聴者の方から届いた、ある「ぬいぐるみ」にまつわる体験談をご紹介します。
投稿者は仮名で「美月(みづき)」さん。
彼女が子供の頃から大切にしていた、ひとつのテディベア。
そのぬいぐるみに、まさかそんな秘密があったなんて――
私には、小学校に上がる前からずっと一緒にいるぬいぐるみがありました。
焦げ茶色のテディベアで、名前は「リリィ」。
柔らかくて、大きくて、腕の中にすっぽりおさまるくらいのサイズ。
私が泣くと、必ず母がそれを抱かせてくれて、気づけば私はいつもリリィにすがるように眠っていたのを覚えています。
片耳がちょっとだけ曲がっていて、それがまた可愛かったんです。
けれど、ある日を境に、そのぬいぐるみを抱くのが、少しずつ怖くなっていきました。
それは、私が小学校三年生の冬でした。
夜、布団に入って目を閉じると、耳元で誰かがささやくような音が聞こえてきたんです。
「……だいすき」
最初は夢かと思いました。けれど、次の日も、その次の日も、繰り返し、同じ声が聞こえるんです。
あまりに毎晩続くので、ついに私は母に相談しました。
でも、笑って流されてしまいました。
ある夜、私は怖くなって、リリィを押入れの奥にしまいました。
「リリィ、ごめんね」そう言って、扉を閉めた時、確かに聞こえたんです。
「いやだよ。……いかないで」
びっくりして振り返ったけれど、そこには何もありませんでした。
でも、それ以来、私は夜になると、押入れの中から視線を感じるようになりました。
しかもそれは、どんどん強くなっていった。
まるで、ドアの隙間から、誰かがじっと、こちらを見ているかのように――。
ある晩、私はとうとう、押入れを開けてしまいました。
そこには、いつものようにリリィが置いてある。……でも、なにかがおかしい。
ぬいぐるみの口元が、わずかに吊り上がって、笑っているように見えたんです。
怖くなって後ずさった私の耳に、また、あの声が届きました。
「ずっと、いっしょにいたのに……もう、いらないの?」
その声に、私は悲鳴を上げました。
翌朝、母に頼んでリリィを処分してもらいました。
私は今でも、あの子の声を覚えてる。
あの目。あの口元。
たまに夢にも出てきて、「寒いよ」「さみしいよ」って、泣くような声で呼びかけてくるんです。
……私はもう大人になって、一人暮らしをしています。
けれど、先週の夜――
私の玄関の前に、焦げ茶色の何かが、ぽつんと座っていたんです。
曲がった片耳の、あのテディベアが。
――これは、投稿者の方が本当に体験したという出来事です。
ぬいぐるみには、持ち主の想いが宿ると言われていますが、逆もまた、あるのかもしれませんね。
あなたが捨てたものは、本当に“ただのモノ”だったのでしょうか……?
今日は、視聴者の方から届いた、ある「ぬいぐるみ」にまつわる体験談をご紹介します。
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しかもそれは、どんどん強くなっていった。
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