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第73話「食べてはいけない時間」
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こんばんは、怪録の黒天です。
今宵お届けするのは、少し奇妙で、けれど妙に身近に感じる“ズレ”のお話。
日常の隙間に潜む、小さな決まり事。それを破った者に訪れる代償のお話です。
今回の投稿者は、都内で一人暮らしをしている男性。
彼が耳にしたのは、ネットで噂されるとある都市伝説。
『夜中の2時44分に食事をすると、二度と満腹にならない体になる』
馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばす者もいれば、本気で信じて避ける者もいる。
彼も最初は「くだらない」と思ったそうですが、その日たまたま残業帰りに腹が減り、家に帰り着いたとき、時計は2:41を指していたそうです。
「ちょうどいい。くだらない噂なんて迷信だって証明してやろう」
そう呟いて、冷蔵庫を漁り、カップ麺を作ったそうです。
時計は2:43。湯を注ぎ、カップ麺の蓋を閉じる。
やがて2:44。彼はためらうことなく箸を取り、麺をすすった――。
それからの異変は、ごく些細な違和感から始まりました。
まず、妙に味がしない。
塩気も旨味も薄く、ただ熱い麺を啜っているだけのような感覚。
賞味期限を見ても問題はなく、お湯の温度も適切。
「なんだこれ」と思いつつ、全部平らげました。
それでも、満腹感はまるで訪れない。
胃が温まったような感覚さえなく、むしろ空腹がひどくなっていく。
仕方なく、冷蔵庫にあったおにぎり、菓子パン、インスタントスープを次々に口へ運んだが、それでも満たされない。
喉を通った感触はあるのに、胃の中が空洞のままのような、そんな奇妙な違和感。
「おかしい」
彼はコンビニへ向かい、総菜と弁当を買い漁り、それも食べ尽くした。
しかし、満腹にはならない。
気がつけば朝の4時。
胃は異常に空腹を訴え、全身に冷や汗が浮かぶ。
しかし、そのとき部屋の隅から**カラカラ…**と、何かが回るような乾いた音が聞こえたそうです。
振り向くと、テーブルの上のコンビニ袋が、ひとりでに揺れている。
そこには、何も入っていないはずの空の袋。
なのに、その袋の中から、ずるりと何かが這い出るような音。
「なんだよ…!」
慌てて立ち上がった彼の足元から、黒く濁った水滴が、ぽたぽたと畳を濡らしていたそうです。
部屋に水など撒いた覚えはない。
恐怖を感じた彼は、すぐに家を飛び出し、友人宅に逃げ込んだそうです。
しかし、問題はそこで終わらなかった。
その日以来、何を食べても満たされることはなくなった。
ラーメン、ステーキ、寿司、高級料理。
どんなに食べても、胃は虚ろなまま。
病院に行っても異常なし。原因不明のまま。
そして、時折耳元で囁くように、
「もっと…もっと…まだ足りない」
という声が聞こえるようになったという。
彼は今も、あの2:44のことを後悔していると語っていました。
どんなに腹が減っても、あの時間だけは決して何も口にしてはならない。
そう固く誓ったと。
世の中には、“知らなければ存在しないまま”のものが数多くあります。
この話も、そのひとつ。あなたがもし、今までこの噂を知らずに2:44に食事をしていたのなら、何も起こらなかったでしょう。けれども――もう知ってしまった。
恐怖というものは、知った瞬間に初めて輪郭を持つもの。
それは噂かもしれませんし、偶然かもしれない。けれど、“知ってしまった”あなたの夜は、今までと少しだけ違うものになるかもしれません。
何も起きないことを、心から願っていますよ。
今宵お届けするのは、少し奇妙で、けれど妙に身近に感じる“ズレ”のお話。
日常の隙間に潜む、小さな決まり事。それを破った者に訪れる代償のお話です。
今回の投稿者は、都内で一人暮らしをしている男性。
彼が耳にしたのは、ネットで噂されるとある都市伝説。
『夜中の2時44分に食事をすると、二度と満腹にならない体になる』
馬鹿馬鹿しいと笑い飛ばす者もいれば、本気で信じて避ける者もいる。
彼も最初は「くだらない」と思ったそうですが、その日たまたま残業帰りに腹が減り、家に帰り着いたとき、時計は2:41を指していたそうです。
「ちょうどいい。くだらない噂なんて迷信だって証明してやろう」
そう呟いて、冷蔵庫を漁り、カップ麺を作ったそうです。
時計は2:43。湯を注ぎ、カップ麺の蓋を閉じる。
やがて2:44。彼はためらうことなく箸を取り、麺をすすった――。
それからの異変は、ごく些細な違和感から始まりました。
まず、妙に味がしない。
塩気も旨味も薄く、ただ熱い麺を啜っているだけのような感覚。
賞味期限を見ても問題はなく、お湯の温度も適切。
「なんだこれ」と思いつつ、全部平らげました。
それでも、満腹感はまるで訪れない。
胃が温まったような感覚さえなく、むしろ空腹がひどくなっていく。
仕方なく、冷蔵庫にあったおにぎり、菓子パン、インスタントスープを次々に口へ運んだが、それでも満たされない。
喉を通った感触はあるのに、胃の中が空洞のままのような、そんな奇妙な違和感。
「おかしい」
彼はコンビニへ向かい、総菜と弁当を買い漁り、それも食べ尽くした。
しかし、満腹にはならない。
気がつけば朝の4時。
胃は異常に空腹を訴え、全身に冷や汗が浮かぶ。
しかし、そのとき部屋の隅から**カラカラ…**と、何かが回るような乾いた音が聞こえたそうです。
振り向くと、テーブルの上のコンビニ袋が、ひとりでに揺れている。
そこには、何も入っていないはずの空の袋。
なのに、その袋の中から、ずるりと何かが這い出るような音。
「なんだよ…!」
慌てて立ち上がった彼の足元から、黒く濁った水滴が、ぽたぽたと畳を濡らしていたそうです。
部屋に水など撒いた覚えはない。
恐怖を感じた彼は、すぐに家を飛び出し、友人宅に逃げ込んだそうです。
しかし、問題はそこで終わらなかった。
その日以来、何を食べても満たされることはなくなった。
ラーメン、ステーキ、寿司、高級料理。
どんなに食べても、胃は虚ろなまま。
病院に行っても異常なし。原因不明のまま。
そして、時折耳元で囁くように、
「もっと…もっと…まだ足りない」
という声が聞こえるようになったという。
彼は今も、あの2:44のことを後悔していると語っていました。
どんなに腹が減っても、あの時間だけは決して何も口にしてはならない。
そう固く誓ったと。
世の中には、“知らなければ存在しないまま”のものが数多くあります。
この話も、そのひとつ。あなたがもし、今までこの噂を知らずに2:44に食事をしていたのなら、何も起こらなかったでしょう。けれども――もう知ってしまった。
恐怖というものは、知った瞬間に初めて輪郭を持つもの。
それは噂かもしれませんし、偶然かもしれない。けれど、“知ってしまった”あなたの夜は、今までと少しだけ違うものになるかもしれません。
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