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許婚
しおりを挟む「ロゼッタ様、あなたを愛しています。生まれと時から、婚姻を約束された仲、もう私たちの愛は誰にも疑いようがないのです。ああ、早くあなたと結婚して、一緒に時を過ごしたい、、」
「アルビン様、あなたの妻になることを夢に見て、日々過ごしてまいりました」
二人は、熱く抱き合った。
リンガル帝国。第一王妃である、ロゼッタが生まれ育った国。
いいなずけであるアルビンは隣国の王子。リンガル帝国を頻繁に訪れては、ロゼッタと時を過ごしていた。
「ロゼッタ様、王妃のご体調は、その後いかがなのでしょう?」
「実はあれから、咳も止まらず病状も不安定で、、私は心配で、夜も眠りに落ちるのが辛く、、」
「心配なことでしょう、我が国の名医を連れてきましょう、遠い外国で医学を修養した者です」
「本当ですか、アルビン様、うれしい」
アルビンは立ち止まると、ロゼッタの目を見つめた。
「ロゼッタ様、大切なあなたのため、できることなら何でもして差し上げたい。将来のために、お互いの愛をもっと深めたいのです」
アルビンは、ロゼッタの肩に手を回すと優しく微笑んだ。
「アルビン様、なんとお優しい方、、」
アルビン王子は、ロゼッタを愛していた。
幼い頃から婚姻が決まっているアルビンとロゼッタ。物心ついた頃から、お互いを結婚相手として意識していた。
「お父様、アルビン様がお母様のために、優秀なお医者様を連れてきてくださるとおっしゃいました」
「有り難い。アルビン王子の国は、我が国とは比べ物にならんぐらい、医学も発展しておるからのお」
「ロゼッタよ、そなたの結婚を王子と決めて本当に良かった、私も安心して年が取れる」
国王と王妃である父母は、ロゼッタをいつも暖かく見守ってくれていた。
長年、重い病に倒れている王妃は、寝台に横たわったまま、ロゼッタに微笑んだ。
「ロゼッタ、あなたには本当に幸せになって欲しい。私の愛しい娘、こっちに来てちょうだい、顔をもっと見たいわ」
ロゼッタは、王妃の寝ている寝台に近寄った。王妃の手を優しく握った。
リンガル帝国の国王、その長女であるロゼッタは成長するに連れ、容姿端麗な女性となっていた。
ロゼッタには5才年下のいとこ、マシュがいた。幼い頃から、遊戯をしたり、本を一緒に読んだりして大きくなった仲だ。
幼かったマシュも成長し、立派な男性となっていた。
ロゼッタは、庭で馬を引き連れていたマシュを見つけると声をかけた。
「マシュ、乗馬の訓練はちゃんとなさっているの?さぼっては駄目よ」
ロゼッタはマシュの前に立ち、姉のように叱った。マシュはいつの間にか、背も高くなり見上げるようになった。
「乗馬の訓練は、毎日欠かさず行っております。雨の日でも嵐の日でも。馬の扱いもなれてきました。ロゼッタ様、今度一緒に乗りませんか?遠出をすると、本当に気持ちがいいですよ」
「あなたと一緒に乗馬なんて、不安で仕方がないわ。少し前まで馬が暴れ出すと、怯えて泣いていたというのに」
「昔のことです、ロゼッタ様、お忘れください」
マシュは、頬を赤く染めた。
「ロゼッタ様、大切なお伝えしたいことがあるのです。ぜひ二人きりでお話したい」
「二人きりで話さなければならないことなんて、いったい、何かしら、、?小さなころからずっと、あなたを見てきたのだから、私が知らないことなんて、ないはずよ」
ロゼッタは、首をかしげた。
「襟が乱れておりますよ、きちんとしないと、ほら、あなたはピンと張っていたほうが似合いますよ」
ロゼッタはマシュの襟元に手を伸ばすと、乱れた白い襟を整えた。
マシュの顔は、恥ずかしさに真っ赤になった。
「大丈夫です、ロゼッタ様、もちろん気づいておりましたが、、直す暇が無かったのです」
マシュは咳払いし、顔を背けた。
いつまでも弟のように自分を扱うロゼッタに、マシュは嬉しくも戸惑っていた。
(ロゼッタ様、、大変綺麗な女性におなりになった。手をつなぎ一緒に時を過ごしたい。できることなら、抱きしめたい、自分のもののにしたい)
ロゼッタの後ろ姿を見ながら、マシュは深く考え込んでいた。
(幼い頃から一緒に遊戯をしては遊んだ仲、、今はあの方を、女性として見ることしか出来ない。どうしたら、ロゼッタ様に、この思いを気づいてもらえるのだろうか、、しかし、ロゼッタ様には婚姻のお約束の相手がいらっしゃる、、)
マシュは、思い悩んでいた。
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