弟のように可愛がっていた、いとこにすべてを奪われそうです

野宮つくし

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衝撃

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リンガル帝国の大広間。月に一度開かれる晩餐会には、一族が揃って参加していた。

豪華な食事に、優雅な音楽。紳士淑女たちは、お互い和やかに、片手にグラスを持ち談笑していた。

「ロゼッタ様のご婚礼の儀式、お日にちがお決まりになったそうですね、国王様」

「さよう、ちょうど1か月後に執り行うこととなった」

隣国の王子であるアルビンも、晩餐会に招待されていた。

「おめでとうございます。アルビン様、ロゼッタ様!なんという喜ばしいこと!!」

「リンガル帝国建国以来の、祝うべきことですわ」

「おめでとうございます。お祝い申し上げます」

「ロゼッタ様、大変麗しくご成長されて、本当に素晴らしい!まさにお幸せになることを確約されている方です!」

アルビンとロゼッタ二人の周りは、人々が取り囲み、称賛と祝福の渦に包まれていた。



その様子を、マシュは遠くから一人眺めていた。

マシュは食事に手もつけず、口数も少なめに、辺りの様子を伺っていた。



「ロゼッタ様、こちらへお越しください、さあ、早く、、!」

マシュは、ロゼッタが一人になったのを見つけて右腕を掴んだ。

「痛い、何をなさるの?マシュ、お止めになって!」

ロゼッタは抵抗した。

マシュは、大広間を出ると回廊に続く細く続く暗い通路に、ロゼッタを引っ張っていった。

一番奥の小部屋のドアを強引に開けると、その中にロゼッタを押し込んだ。

「静かにしてください、誰かに気づかれては困ります。お伝えしたいことがあります、、ロゼッタ様、長い間あなたをずっと思っていました、心にこの思いを秘めておりました。あなたと一緒にいたいのです、、」

マシュの声が震えた。

「息が苦しい、、恐いことなさらないでちょうだい、マシュいったいどうしたというの、こんなことしてはいけないわ、、」

「駄目だ、あなたを離したくない、他の男性に渡したくない。愛しているのです、あなたを、、幼い頃から、ずっと見ていました」

「そんな、、信じられない、、」

ロゼッタはマシュの目を見た。

「私こそ、あなたの結婚相手だと、ずっと思っていました」

「何をおっしゃるの、マシュ。私たちはいとこ同士、結婚はできないのです」

「出来ないのならば、あなたのために死んでもいい!いますぐ、ここで!」

マシュは真剣なまなざしで、ロゼッタを見つめ返した。

「では、私は、、ずっと知らずに、生きていたというの?あなたの側にいたの?そんなに私のことを愛してくれていたなんて、知らなかった、、」

ロゼッタの瞳から、涙がつたった。

「苦しくて我慢が出来ません。他の男と一緒になるなんて。もう会えなくなるなんて。二人で城を出ましょう、私と一緒に暮らしましょう」

「無理に決まっているわ!私たちは王族ですから、国で定められていることに背くことはできないの、、」

ロゼッタは、首を左右に激しく振った。

「強引にでもあなたを連れて出ます!そしてあなたと一緒になります。あなたのすべてが欲しい、私のものにしたい!!」

マシュは、ロゼッタを強く引き寄せ抱きしめた。あごを引き寄せ、口づけをした。

「マシュ、、、!何するの、、!」


突然のマシュの愛の告白。ロゼッタは、ただ驚き、涙を流しうろたえた。




「ロゼッタ様!どちらですか、、?何処にいらっしゃいますか?王妃様のお顔を拝見したいのです。案内して頂きたいのです。一緒に伺いましょう。ロゼッタ様!どちらですか、、?」

アルビンが、大広間を探している。


「おかしい、先ほどまで、そばにいらっしゃったのに、誰も居場所がわからないと言う。どこへ消えたというのか、、ロゼッタ様!ロゼッタ様!!」

大広間に続く回廊に、アルビンの声が響いた。

「婚礼の儀式をうまく進めるために、リンガル帝国のできるだけ多くの者に、挨拶しておかなければならない、、まあ、所詮、小さな国だから、たいして人数も多くはないが、、ロゼッタ様はどこへいったのか?」

回廊には、ロゼッタを待つアルビンの姿があった。


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