弟のように可愛がっていた、いとこにすべてを奪われそうです

野宮つくし

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疑惑

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「王妃様よ、、なんたる悲しいこと。長い間病に伏せておられた、苦しかったであろう。安らかにお眠りください、、」

王妃の訃報を聞き、急遽リンガル帝国に駆けつけたアルビン。王妃のもとに駆け寄り、悲しみにうなだれては言葉をつぶやいた。

国王の悲しげな表情を見て、憂い嘆き悲しんだ。

「国中の深い悲しみの中、ロゼッタ様は、何処へ消えてしまったのか?いったい何処へ行ったのか?」

アルビンは、城の中を探し回った。

「きっと悲しみのあまり動けないのだ。まだお部屋にいらっしゃるに違いない」

アルビンは、ロゼッタの部屋に向かった。ドアを開くと、信じられない光景が目に入った。

「何だ、これは、、髪の毛が落ちている、これはロゼッタ様の、、まさか」

アルビンは床にひざまずくと、落ちている髪を拾い握りしめた。側に落ちていた短剣を、拾い上げた。

「ロゼッタの様の姿がない、、この短剣は誰のものだ?」

アルビンは、辺りを見渡した。

部屋の隅に、男性のローブが落ちていた。アルビンは手に取った。リンガル帝国の紋章が入っていた。


「もしや、マシュ、あいつが連れ去ったのか!!許せん!!家来を呼べ、今すぐ武装し総動員するのだ!!」

アルビンの怒りに震えた声が、部屋に響いた。



数十人の軍隊が、砂ぼこりをあげて城を出ていった。先頭に、立派な馬にまたがったアルビンの姿があった。

軍隊は、城の周りの森に向かって走っていった。

その先の、森の向こうに、ひた走る馬の姿があった。馬には男女二人が乗っていた。


「ロゼッタ様とマシュを見つけ出し、引き留めるのだ!一番早く見つけ出したものに褒美をつかわす!皆急げ!!」

アルビンは、殺気立っていた。

軍隊が森の奥に進んでいくと、ほどなくして、一人の隊員が叫んだ。

「アルビン様、お二方と思わしき男女を発見いたしました!」

川のほとりで、マシュとロゼッタが二人で馬を休ませていた。

アルビンは隊員の報告を受け、ロゼッタの姿を見つけると、大声で叫んだ。


「ロゼッタ様、今すぐ城にお戻りください!」

アルビンの声がすると、ロゼッタは振り向いた。


「ロゼッタ様、私たちは結婚すると決められた運命なのです。一緒になると生まれたときから、そう定められておりました。なぜ私から離れようとするのですか!今すぐ私のもとへお戻りください!」

「アルビン様、、、私には大切な人がいるのです。あなたのもとへ戻るつもりはございません」

「今すぐ私のもとにお戻りください、さあ、こちらへ!」

数十人の家来が、いっせいにロゼッタに近づいた。ロゼッタを取り囲むと、強引に手を引っ張った。

「痛い!離して!」

「やめろ!失礼なことを!触るな!無礼だぞ!命令に従え!」

マシュは、大きな声で叫んだ。

抵抗も虚しく、ロゼッタはアルビンの軍隊に引っ張られていった。

「さあ、早く私のもとへ!」

アルビンは、ロゼッタを自らの馬に乗せた。

「会いたかった、ロゼッタ様、逃亡などそんなくだらないことは、もうなされないで欲しい、ああなんたる可哀想なお姿、御髪を切られるなんて、、」

アルビンは、ロゼッタを抱き寄せると耳元で囁いた。両手で顔を包み込むと、優しく口づけをした。

「アルビン様、お離しください」

「ロゼッタ様、愛しい人、ここがあなたのいるべき場所です」

ロゼッタの抵抗も虚しく、アルビンの抱擁は長く続いた。



二人の様子を見ていたマシュの体は、怒りに震えていた。

「許せない、、!ロゼッタ様を一番深く愛しているのは、この私です。私こそ、人生を共にする相手なのです!」

「隣国の国王どうしが、決めた約束である。私たち二人は、生まれてすぐ、婚姻することを約束された!国同士の約束を覆そうと言うのか?戯言を!今すぐこの場所去れ!」

アルビンは、ロゼッタを抱きかかえながら鼻で笑った。

「ロゼッタ様を取り返したいというなら、この私と正々堂々と戦え!」

「受けて立とうではないか!必ず勝つ!本当の愛を見せつけてやる!」

マシュは、腰から剣を引き抜いた。

アルビンも馬から降り、長い剣を持つと高く掲げた。

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