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本当の幸せ
しおりを挟む翌朝、リンガル帝国の城下町。行き交う雑踏の中に、女性の姿があった。身分が分からないよう、顔をショールで隠している。リンガル帝国の王女、ロゼッタだった。
「マシュよ、どこにいるの、今すぐに会いたい、どうしたら会えるの?生きているのかしら、無事でいるのかしら?」
ロゼッタは、城下町をあてもなくさまよい歩いた。慣れない町の様子に、はじめは驚き、戸惑った。
探せど探せど、マシュは見つからなかった。
結局マシュに会えないまま、一週間も過ぎた。食べ物はろくに取れず、姿もやつれ果てていた。
ついにロゼッタは、疲れ果て路上で倒れ込んだ。
しばらくすると、通りすがりの親子が、ロゼッタを見つけた。可愛そうだからと、自分たちの粗末な家に連れて帰った。
親切な家族に、水や食べ物を与えられ、ロゼッタは回復した。
数日後、御用聞きの男性が訪ねてきた。
「困っていることはありませんか、、探し物、食べ物の調達、用心棒、配達、、、なんでも伺います、、」
男性は、この町のあらゆる家を回っては、細かい雑事をこなし、報酬を得ていた。
ロゼッタは聞き覚えのある声に、ふと玄関へと歩み寄った。男性の顔を見ると、しばらく動けなくなった。
「まさか、この人は、、、見覚えのある顔、、」
相手の男性は、ロゼッタと目が会い、動きが止まった。
「失礼ですが、あなたのお名前は?伺ってよろしいかしら?」
ロゼッタが話しかけると、男性の手が震えだした。
「あなたは、まさか、、ロゼッタ様、、ロゼッタ様ではないですか?なぜこんな荒れ果てた場所にいるのです、、今すぐ城にお帰りください!」
御用聞きの男性は、マシュだった。
マシュは、ロゼッタを見て大きく目を見開いた。
「城を出て、うろつくなんて、なんて危ないことを、、そんなことをしたら国王様が心配されます」
「マシュ、あなたをずっと探していたの、、会えて嬉しい、無事だったのね、生きていたのね!」
ロゼッタは、涙を流しマシュに抱きついた。
「ロゼッタ様、城にお戻りください。私たちは一緒になれない運命、私を探し回るなんて、、私を愛してくれているのですね、、この私と生涯を共にしてくださるのですか?城のような恵まれた生活はもう出来ないかもしれないのです。それでも本当に良いのですか?」
「あなたと一緒にいられるのなら、どんなことにも耐えます。どんな苦難も受け入れます。もう城の生活など、興味がありません」
ロゼッタは、真剣なまなざしで言った。
「ああ、ロゼッタ様、あなたを本当愛している。あなたの他には何もいりません」
二人は固く抱き合った。
十年後、、、
リンガル帝国の城下町から離れた場所に、質素ではあるが、整えられた小さな家があった。
家からは笑い声が聞こえ、庭では元気に遊んでいる子供の姿があった。
マシュとロゼッタは、家庭を築き、仲睦まじく暮らしていた。
穏やかに幸福に暮らす、二人の姿があった。
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