『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

マイマイン

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3章 第2の神器

3-6 賢者のたいまつ

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 両開きの木の扉を開き、頂上の灯火室に向かうと、そこにフレイヤが立っていました。

「やっぱり来たわね、勇者エルニス・・・!そして、我が妹キャンベル!」それを聞いたキャンベルはおどろきを隠せませんでした。

「わたしが・・・あなたの妹・・・?どういうことですか!?」これにフレイヤはうなずきます。

「そうね、当時、あなたは赤ん坊だったものね・・・!いいわ、話してあげる。

 この国ヘリオポリスは、魔力と商才しょうさいに長けていた『ブルジョワ一族』が支配していた。彼らは人々につくし、この町の発展はってん貢献こうけんしていたわ。

 ところが、魔法族を恐れる人間どもによってブルジョワ一族は国を追われ、大規模だいきぼな『魔女狩り』が勃発ぼっぱつした!私たちキャロル一族も、魔女狩りの流れに巻き込まれ、私と父と母は自ら犠牲ぎせいとなり、祖母とあなたを逃がした。

 私たちは別々に投獄とうごくされ、いつ殺されるかわからない状況の中、私はナイトロードの魔王アガレス様に救われた!その後、父と母はどうなったかわからない・・・!」

 フレイヤは拳を握り、目からはしずくがこぼれます。

「きっと、殺されたか売られたかのどっちかでしょうね!他の魔法使いたちはそうだったから・・・!」それを聞いたキャンベルは体をふるえさせました。
「そんな・・・!?」

「まぎれもなく事実じじつよ!その後、私は魔法の才能を見込まれ、ナイトロード公国こうこく導士どうしとして徹底的てっていてききたえ上げられた・・・!

 この町であなたを見た時、私はハッとしたわ!姿こそ変わってはいるけど、そのオーラは間違まちがいなく、私の妹キャンベルのもの!さぁ、私と手を組みなさい!あなたなら歓迎かんげいするわ!

 どうせ、人間どもの味方をしたところで、すぐに不平不満を言ってあなたを迫害はくがいするに決まっているから・・・!」これに、キャンベルは首を横に振りました。

「あなたの言ったことが全て真実だったとしても、わたしはあなたのすることには賛成さんせいできません。そんなことをしたら、人々はますますわたしたち魔法族をうとむようになりますよ!」これにフレイヤはうなずきました。

「そう、わかったわ!だったら、一対一で私と戦いなさい!私が勝ったら、あなたを連れて行く!もし、あなたが勝てたら、その時は好きになさい!」エルニスが下がると、姉妹の対決は始まりました。

 フレイヤが右手から炎の魔法を放つと、キャンベルも炎の魔法を放って応戦しますが、魔力は相手の方が勝っており、キャンベルは吹っ飛ばされてしまいました。

「町で親子をおそった時が本気だと思った?あなたごときの魔力など、問題にならないからね!」

「ならば!」キャンベルが左手から光の弾を放つと、それを足元で破裂はれつされ、フレイヤの目をくらませたスキに、キャンベルは後ろに回って炎の魔法を放ちました。しかし、フレイヤはすぐに反応し、キャンベルの炎をかき消してしまいます。

「思ったより頭がまわるみたいだけど、力及ばずね・・・!」
「・・・どうすれば!?」すると、キャンベルの持つ賢者のたいまつが輝きました。

「これは・・・力がみなぎっていくようです!」キャンベルが両手に持つたいまつに魔力を集中させます。

「それは・・・『賢者のたいまつ』!?それは真の知恵の持ち主でないと扱えない!あなたなんかに!」
フレイヤが自身の身長ほどもある火球を両手から発します。

「真の知恵とは、世界を正しき方へ導くものです!」

 たいまつの光が一段と強くなり、キャンベルの極大化きょくだいかした光球が発射され、光球と火球がぶつかり合って大爆発だいばくはつし、フレイヤは大きく吹っ飛ばされてかべにたたきつけられ、エルニスは目を伏せて踏ん張ります。

 光が収まると、フレイヤは左肩ひだりかたをおさえながらよろよろと立ち上がりました。

「神器をそこまで使いこなすなんて・・・!キャンベルこそ、伝説に聞く『南の賢者』だと言うの!?この勝負、私の負けね、でも、私たちの計画はまだついえてない・・・せいぜいあがきなさい!」

 フレイヤはテレポートしてその場を去ると、キャンベルは灯火台にたいまつをかざして、ヘリオスの聖なる炎を再び灯したのです。清らかな光が国中に降り注ぎ、人々は歓喜かんきの声を上げました。

 魔王軍からヘリオポリスを取り戻し、メアリ大統領は官邸かんてい前の広場にて、国民の前で演説えんぜつをしました。

「皆さん、人と魔法族が力を合わせ、この国を魔の勢力せいりょくから取り戻す事が出来ました。今回の襲撃は、かつての魔女狩りが根底にありました。我々にちがいを受け入れる心があったのなら、魔女狩りも、今回の事件も起こらなかったかもしれません!今、ヘリオポリスは新たな一歩を進んだのです!」会場から歓声が上がります。

 メアリ大統領が壇上だんじょうから降りると、そばで控えていたエルニスとキャンベルに話しかけました。

「エルニスさん、キャンベルさん、ありがとうございました。後で官邸にある私の執務室しつむしつに来てください、大事なお話があります」
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