『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

5章 うごめく闇と抗う光

5-5 勇気の勝利

　グレイが目を覚ますと、そこはキーパーたちの船の寝室で、そばにカナンがいました。

「気が付いたか？一体、どこにいたんだ？」
「オレは・・・遺跡のオーブの力を手にするためにあの宝玉に触れて・・・その後は・・・覚えていない・・・！」カナンは首を横に振って言いました。

「お前は、あのオーブに触れて、化け物になって暴れまわていたそうだぞ！」
「オレが・・・化け物に・・・！？」グレイは身震みぶるいします。
「だが、キャンベルや魔族たちの治療のかいもあって、何とか助かるようだぞ」それに、グレイは何も言えませんでした。

　エルニスとキャンベルは、リリスと話しています。
「リリス、さっきは助かったよ、ありがとう」

「礼などよい、さっき助けてもらった借りを返したまでよ、でも・・・オーブは砕けてしまった・・・あれがあれば、皆を見返すことも、両親から託された使命も果たせたのに・・・！」リリスはうなだれると、キャンベルが言いました。

「リリスさん、何も魔法が全てじゃありません、見返す方法はいくらでもありますよ」

「それに、あのグレゴリーと互角に打撃戦をしたり、あのグレイだって魔法なしで倒せたじゃん、無理して魔法を覚えなくても、腕っぷしを、自分の得意なところを鍛きたえればいいんじゃない？」
それを聞いたリリスの顔が明るくなりました。

「そうか・・・妾は前から体力には自信があったしの・・・！やって見せよう！世話になったの！」


　リリスと別れて、北島に戻ったエルニスたちはガルダインの元に戻ってきました。

「おお！あの『闇の力』に打ち勝ったのか！？」
「いいや、ぼくたちじゃなく、魔族のリリスって子がやったんです・・・！」

「だが、エルニスの勇気がリリスを救い、そして、お前自身を救ったのじゃ！よし、約束通り、地図の破片を渡そう」地図の破片は、世界の西にある大陸のピラミッドを指しています。

「ありがとうございます、地図によると、三つ目の神器は砂漠の国アラビンスにあるようですね」

「アラビンス行きの船なら、明日の正午に出るそうじゃ、今日は宿屋に泊まり、明日出発すればよかろう」

　エルニスたちは北島にある町の宿屋で一夜を明かし、正午に船着き場に停泊ていはくしている帆船はんせんに乗り込むと、船は帆を張って西の国々へと出航しゅっこうしました。