『完結』セプトクルール 勇者エルニスのワンダーランド

7章 救世主冬将軍

7-2 ゴーシャ貴族街

　エルニスとキャンベルとロレンスは王都を出て、北の方を目指します。

「キャンベルちゃん、これから行くゴーシャってどんな国？」
「ゴーシャはこの幻想界ファンタジアで最も豊かな国と呼ばれている国です。スピネルとはまるで雰囲気ふんいきの違うと思いますよ」
「聞いたことがあるぜ、金持ちの貴族がたくさん住んでいる、世界一安全な国だそうだ」小一時間歩き続けると、目の前に青い屋根に白い壁の家々が見えてきました。

「見えてきました。あそこがゴーシャの貴族街ですよ」貴族街に入ると、そこには装飾そうしょくがほどこされた石の壁とつやのいい青い瓦かわらの家々が立ち並ぶ清潔感せいけつかんのある町で、建物たてものが全部ぜんぶお城のように見えます。

「わぁ、豪華ごうかな街だなぁ」
「スピネルの王都とは違うでしょう？」
「なんか、オレたちが場違(ばちが)いみたいだな・・・」

　スピネルより都会な雰囲気の町中を見回しながら石畳いしだたみの道を行くと、シルクの服を着た貴族たちがエルニスたちを避さけています。

「オレたちの事を田舎者いなかものみたいに見ているな・・・」ロレンスが少し恥はずかしそうにしていると、北のひときわ大きな建物、王城の前に掲示板けいじばんがありました。そこにはこう書かれたポスターがあります。

『お尋たずね者『冬将軍』をとらえた者に、一千万Ｇゴールドを授さずける』手配てはいポスターをさらに見ると、聖騎士せいきしが着るような前垂まえだれが目立つ服をまとい、右目に眼帯がんたいを付けた切れ長の緑の瞳ひとみの男が描かかれていました。
「こいつが・・・冬将軍・・・！」

「あっ、こいつ知っているぜ！金持ちから金品きんぴんを奪うばっては貧しい者に施ほどこし、権力者けんりょくしゃや魔王軍にいじめられている者たちを助けてくれると言う、恵まれない者たちの英雄的えいゆうてき存在そんざいだ」ロレンスがそう言うと、東の商店エリアで叫び声がします。
「え～ん！たすけて～！」エルニスたちはそこにかけよります。

　なんと、ぼろの服を着た黒髪くろかみの少女を、金髪きんぱつの貴族の少年がいじめているのを見つけたのです。
「やい！ここはお前みたいな汚いヤツが来るところじゃねぇんだぞ！」ぼろの服の少女は、貴族の少年に叩たたかれているのをじっと耐たえていました。それを見たロレンスは貴族の少年の手を止めます。

「おい！なにをやっているんだ！？」貴族の少年はふてぶてしい返事をしながら振り向きました。
「あぁ～ん？だれだよテメェ！」貴族の少年は手を振りほどきます。
「いくら金持ちだからって、偉(えら)そうだな？おい！」
「うるせ～田舎者！」

貴族の少年が殴りかかるのを、ロレンスはサッとかわし、足払いをかけると、貴族の少年は思いっきり顔面からコケて、大泣きしながら逃げていきました。

「だいじょうぶか？」ロレンスは少女の元にかけより、立たせます。
「ありがとう、おにいちゃん」
「名前は？家まで送って行ってやるよ」
「あたしレナって言うの、家はこっち」

ロレンスたちは、レナの案内で貴族街の東の方へと向かいます。